事例紹介:参天製薬株式会社様

マーケティング部のメンバーが一堂に介して、担当製品を超えてマーケティング戦略・プランについて互いに深く学び、実践に役立てていくワークショップを行う「ブランドデー」

参天製薬株式会社眼科疾患領域マーケティング部は、眼科領域に特化した参天製薬の、国内医療用製品のマーケティングを一手に担う部門です。マーケティングの究極の目的は、言わずもがな「顧客へのブランドの浸透」ですが、そのためにはまずもって自社のマーケティング担当者達が自社ブランドの戦略・プランを深く理解していることが鍵になります。そのため参天製薬では、マーケティング部のメンバーが一堂に介して、担当製品を超えてマーケティング戦略・プランについて互いに深く学び、実践に役立てていくワークショップを行っています。それが「ブランドデー」です。

このブランドデーは2017年より継続的に実施されており、メンバーは複数のチームに分かれ、実際の製品を題材にしてマーケティング戦略のテーマ毎に、参加者で深耕、ディスカッションを行います。戦略・プランの単なる一方通行の講演形式ではなく、メンバー自身が大いに学べる「アクション・ラーニング」の場になるように工夫されており、何よりもユニークなのが、この大きなイベントについて、プログラムの設計から場の運営までを、マーケティング戦略・プランをつくることと同等に重要と考え、当該グループの皆さんが自らの手で行っていることです。ブランドデーが、全員のマーケティング・スキルの開発にとどまらず、研修プログラムの設計やコンテンツ作りのプロセスを通してグループ内の風土改革・意識改革にもつながり、そしてファシリテーター型リーダーの育成の機能も果たしています。

今回は、この取り組みを始めた部長(現在は日本事業開発推進統括部日本メディカルアフェアーズグループに異動)堀清貴氏、後任として引き継がれる寺町氏(眼科事業部 マーケティング統括部長兼眼科疾患領域マーケティング部長)、今回のブランドデーのファシリテーターを務めた大橋英治氏(眼科疾患領域マーケティング部 網膜・手術・屈折チーム チームマネージャー)、初回よりプロジェクトのまとめ役をされている山方智子氏(眼科疾患領域マーケティング部 戦略調整担当マネージャー)、初回のファシリテーターを務めた井内太輔氏(眼科疾患領域マーケティング部 緑内障チーム 緑内障領域マネージャー)にお話を伺いました。

グループのマネージャーが作り上げた「ブランドデー」

ブランドデーが立ち上がるきっかけとなったのが堀氏だ。グループメンバー全員が集まり、疾患領域の中期計画の立案を行う機会はあったが、以下のような問題意識があがっていた。

  • グループ全員で行うなら、自分の専門外の領域を学ぶことで視野を広げ、グループメンバーのマーケッターとしてのスキルを上げられるのでは?
  • 一方通行ではなく、より活発な議論を行うことでメンバーのコミットメント力を高め、発想の横展開や領域横断での検討を進められるのでは?
  • 議論が円滑に行えるようになるためにメンバーのファシリテーションのスキルも強化していきたい

堀氏自身も「各領域がそれぞれ中期プランを作る時に、もっと視野を広げて、横のナレッジをうまく吸収しあい、他の領域をみて学ぶことができたらと思っていました。そのための方法を井内さんと話し合っているうちに生まれたのがブランドデーの形でした」と言う。

ブランドデーは、マーケッターとしての能力向上より高い目線で戦略・戦術を考える機会、生産的なコミュニケーション(ファシリテーション)を経験する機会として位置づけられている。

その成功要因のひとつが、自社のマーケティングプラン立案のプロセスを網羅的に学ぶ「マーケティング基礎研修」の開催だ。この研修の設計は、グループのマネージャーたちが、それぞれに担当パートを持ち、事例や演習を考えながら作りこんだ。基礎研修の能力を持ち合わせた上で、応用編のブランドデーを受講すると効果的だ。


さらに、マーケティング基礎研修やブランドデーを実施するにあたって、マネージャーたちがファシリテーション・スキル研修やトレーナー養成研修を受講し、研修のファシリテーションを担った。こうしてマネージャー全員がファシリテーション・スキルを身につけたことがこれら企画の成功要因となった。

4月に開催されたブランドデーは、マーケティング統括部長からのグループ全体方針、中でも人材開発の重要性についての説明を皮切りにスタートした。そして、テーマとなるある新製品について、WHY分析やSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の特定、KSFの設定等を行うという流れで、極めて実践的なマーケティングの演習が1日かけて行われた。このプログラムの設計の中心になったのが、今回のメインファシリテーターの大橋氏だ。先に触れた、グループ独自のマーケティング基礎研修の中身をアレンジし、独自の演習を盛り込んで作り上げたのである。

ブランドデーは今回で4回目なので、アジェンダの大まかな枠組みについては、回を重ねるごとにノウハウが蓄積されている。特に、フレームワークを復習するために、最初に医薬品でないケース(例題)に取り組むのがカギである。それによって、自社製品の議論に入ったときに、フレームワークなどの手法論につまずくことが回避できる。ただ、「実際の製品や状況に近からず遠からずのバランスでケースを作るのが難しい」と大橋氏は言う。「マーケティング研修の内容を抜粋・編集し、適切な事例を作りこみながら、いろいろなケースを想定してアジェンダや内容を作りこんでいく必要があり、9割の時間が準備に費やされました」(大橋氏)。

こうした準備段階から、アドバイザーとして参画しているPFCの中村大介は、大橋氏の企画力や当日の議論の捌きについて、「真に効果的なファシリテーションだった」と評す。ブランドデー当日も、参加者はどのチームも積極的にプランの策定に挑み、他チームのプレゼンテーションにも真剣に耳を傾けていた。質疑応答が実戦さながらに行われていたのも印象的だった。

部内の共通言語ができた

ブランドデーがグループに与えた影響は計り知れない。
今回のブランドデーのメインファシリテーターの大橋氏も、「従来はグループ内の5つの部門がそれぞれのやり方でマーケティング戦略の策定を行いがちだったが、ブランドデーを通じて、共通のテンプレート、共通言語で戦略をつくるようになりました。定期的な報告会の際も、部内で同じテンプレートが共有されるようになったのです」と語る。
また、「ブランドデーで実際の事例をテンプレートに当てはめていったので、そのアウトプットをそのまま業務に活用しています。(井内氏)」という声もあった。

ファシリテーションの部分についても、普段の会議などに変化が表れているという。
「会議はこうありたいと思っていたことが確実に根付いてきました。アジェンダを作り、各会議の目標が明確になり、時間を意識するようになり、ホワイドボードに書きながら議論するようになり、ToDoも明確になりました。これが日常の会議でも実現しています」(堀氏)。

事務局としてプロジェクトのまとめ役を務め、自らもメインファシリテーターを行った経験のある山方氏は、「ブランドデーが、マーケティング基礎研修やファシリテーション研修で学んだスキルや知識を思い出して定期的に実践できる機会となっているのが、日常業務に根付くことに繋がっていると思います」と語った。

ブランドデーの今後

ブランドデーは意識改革、組織風土改革にも寄与している。上述したように会議の形が変わったのはもちろんだが、その他にも「自分たちで考え、作り上げる」「自走する」といった意識がどんどん強まっている。
また、ブランドデーに向けて中心となって動いたマネージャーのスキルアップにもつながっているそうだ。「我々の部下育成力も上がったし、育成するための風土も形成されたと思います。また、教える立場になったことで、自分自身の知識の棚卸し
もでき、マーケティングについての理解もさらに深まりました」(井内氏)。堀氏からも「実務の中で指導する人が大事。プロダクトマネージャーがメンバーをどのように育成するかをよく考えて、日ごろのOJTにつなげていってほしい」との声があった。

良いことづくしの「ブランドデー」の取り組みだが今後はどのように展開していくのか。
堀氏の後任となる寺町氏は「続けていくのが大前提だ」と前置きしたうえで、「あと2回のブランドデーを実施した後、しっかりとレビューし、変化と成果を見ながら、変えるべき部分は変え、組織の学びのプロセスとして永続的な取り組みにできるかを考えて行きたい。ブランドデーには他部署のメンバーも参加しているので、他部署への展開もあわせて検討してみたい」と語った。

最後にこのブランドデーをリードしていった堀氏の言葉をご紹介しよう。
「グループのマネージャー全員で創り上げてきた自社独自のマーケティングコンテンツやフレームワークを、グループ内で共有するという体制は9割実現したと思います。今後は、グループ内にしっかりと浸透し、業務で実際に生かされ、継続的に実施されて、組織風土として定着していくことが課題だと思います。マーケッターとしてスキルを発揮できるプロダクトマネージャーがどんどん増えていくことを願っています。」

PFCでは、このブランドデーの取り組みを第1回目から支援しています。堀氏からは「自分たちが中心になって創り上げたことで、『みんなで作った感』が強く持てるし、継続性にもつなげられる。PFCさんの適切な問いかけや課題の深堀によってより完成度を高めることができました」という声をいただきました。クライアントに伴走し続けるPFCの取り組みとして参考にしていただければ幸いです。