クライアント事例

日本電気株式会社様

「戦略策定プログラム」がNECの戦略作りを変えた
日本を代表する情報通信企業である日本電気株式会社(以下NEC)は、会社全体を大きく7つのビジネスユニット(BU)に分けて、自律したBUが連携することによって、全社としてお客さまに貢献することを目指しています。

その7つのBU内、社会インフラソリューションBU(以下、社会インフラBU)は、放送・制御・交通・消防・航空宇宙・防衛等の社会インフラソリューション事業を行うビジネスユニットです。この社会インフラBUでは、従来型の公共事業に依存したビジネスの成長が厳しくなっている中、新たな成長事業を策定する「成長戦略の策定プログラム」に着手しました。このプロジェクトについて、実行担当者であった社会インフラソリューション企画本部の取屋憲治氏、受講された航空宇宙・防衛事業本部の喜渡卓氏、経営企画部の山本啓一朗氏のお話をご紹介します。

今までの戦略作りの反省を踏まえ、プログラムを設計

社会インフラBUでは「従来から継続している事業の枠組みを超えた成長戦略を、効果的に策定できないものか」という悩みを抱えていました。また、BUの下にある「事業部」という単位で戦略等を考えがちで「BU全体で既存組織を越えてチームとして動く意識・機会が少ない」という問題意識もお持ちでした。取屋氏は、「成長戦略のプログラム策定」にあたり、当初はケーススタディなどの講義を中心としたものを考えていらしたそうです。しかし、PFCに相談し内容についてディスカッションを重ねる中で、そのような講義を中心とするプログラムでは、実際のBUの戦略を作るまでに至らないこと、またチームの一体感を醸成することも難しく、そうなるとBU全体のシナジーの検討も薄くなることも明白になってきました。そして、最終的には下記のような5回のワークショップを導入することを決心されました。
今回のプログラムは、BU傘下の約20の事業部・関係会社から、その責任者である事業部長クラスが1名ずつ参加し、計20名が、約3ヶ月にわたり、1泊2日の合宿ワークショップを2回と、1日のワークショップを3回実施し、そこで検討した事業部の戦略とBU全体のシナジー戦略を、社会インフラBUの経営陣にプレゼンするという内容でした。

「つもり」が実際の「行動」に変化したワークショップ

実際にワークショップに参加された喜渡氏にお話を伺ってみました。 「ビジョンの共有をしたり、自分たちが何のために仕事をしているのか?とお互いの価値観について改めてチームメンバーと話したことがとにかく有益でした。照れくさいこともありましたが、気分がどんどん高揚し、より深い対話ができました。様々なことを話し合う中で出来上がったのが下の図です。
上から与えられたものではなく、自分たちが話し合う中で生まれてきたものなので納得感も思いいれもあります。いまもオフィスの目に付くところに貼ってあるんです。」「一般のマーケティングや戦略立案のプログラムは、なかなか具体的なところまで落ち込まないんです。特にわれわれの仕事は対象が官公庁など特殊なマーケットなこともあり、事例研究を行っても、あまり実践的ではない。その点、今回の研修では、“仮説を立てて、次回の研修までに検証し、うまく行かなければまた仮設を立て直す”というように、現場にあわせて短い時間でトライアンドエラーしていくというやり方が非常に役に立ちました。」

また、社会インフラBUの事業部だけではなく、様々な事業部を対象とした同ワークショップを企画してきた経営企画部の山本氏によれば、ワークショップ実施から2~3ヶ月で、海外から数十億円の受注に成功したことや、進捗が滞っていたある新事業プロジェクトについては、社外発表できるまで具体的な検討と実行スピードの向上が見受けられるなど、具体的な成果も生まれてきているとのことです。

「ワークショップを通じて、“つもり”から“実際の行動”への結びつけができました。中計達成を目指してやらなきゃいけないと感じているが、具体的に出来ていないことがたくさんあることに気付かされたのです。これまでは“つもり”で全てを進めていたと思います。知っているつもり。ステークホルダーを集めてコミュニケーションしたつもり。戦略を考えたつもり。計画を立てたつもり。と、当たり前のことが出来ていなかった。今回のワークショップでは、講師の方から“それで本当に行動出来るのですか?”と、しつこく言われることにより、チームメンバーととことん話し、考え、計画を具体的に作りきることができました。」

さらに山本氏からは「講師は、穏やかな口調ではあるが、ずばずば意見を言っていくところがよかった。またテクノロジーに明るく、NECとは関係ない第三者であることもあって、受講生が素直に話を聞き、頼ることができた。社内の人間ではなく、第三者であるがゆえに気付く受講生の変化や成功を、客観的に捉え、伝えて頂いたことが良かったと思う。」というお褒めの言葉もいただきました。 また、ある事業企画担当の方が、ワークショップを受けて「分かった、分かった」とおっしゃったという話も印象的でした。その方は、今まで事業企画の担当として一人で悩んでおられましたが、このワークショップに参加して、「一人で抱え込む」「答えを出すのが自分だ」ではなく、「答えをもらうことが自分だ」「答えは外(チームメンバーやお客様)にある」と気付かれたそうです。

今回のプロジェクトの成果とこれからの課題

ワークショップを企画した取屋氏は、今回の成果について、このように話して下さいました。 「今まで、“戦略は、現場主体の素人の手のみでは上手く作れないのでは?”と悩んでもいたのですが、戦略の作り方(ある種の作法)をよく理解した上で、キーパーソンが集まって検討すれば、質の高い戦略も一気にできることがよくわかりました。また、そうやって、自分達で作った戦略だからこそ、納得感も高いものに仕上がるのですね。また、今回は、外部のプロにファシリテーションしてもらったのですが、そのお陰で、今までの戦略策定上の問題点、例えばノウハウを知らないために議論が迷走したり、途中報告のためにいたずらに時間を掛けてしまっていたことや、現場のキーパーソンが不在のまま一部のスタッフだけで戦略を作っているというようなこともわかってきました。」

取屋氏によれば、今回の検討では、参加した事業部長クラスの方達がプログラムを通じてひとつのチームになったことも、大きな収穫だったそうです。例えば、あるクライアントから新たな問い合わせが来たとき、これまでは「自分の事業部に直接的なメリットがない」と言って断っていたような参加者が、今回のプログラムを通じて、他の事業部にもその仕事を融通したり、BU全体の視野で助け合ったりする、という行動の変化も実際にあったそうです。また、BUの経営幹部もワークショップの見学にいらしたのですが、そこで「いままで協力関係の薄かった別組織のメンバーが、ひとつのチームになった」のを目の当たりにし、大きな感銘を受けたそうです。同じようなコメントは喜渡氏からもあり、「関係会社も含めれば数千人という事業本部メンバーから選んだチームでの研修でしたが、様々なトピックで対話を重ねる中で、私を含めて参加メンバーの気持ちがぐんぐんと高まり、ひとつになっていくのを感じました。」というお話をうかがうことができました。

また、最終報告会の後の懇親会でも、BU経営陣の方から、「研修そのものは見ていないものの、“いい研修だったことがよく分かる”、なぜなら、この懇親会で、参加者一人ひとりが、とても元気に自信をもって発言しており、“今回作った戦略の実行を自分達でやりたい”と異口同音に言っていたからだ。」というコメントをいただきました。 取屋氏は、PFCを選んで良かった理由を以下のように語っています。

「今回、担当してくれたPFCの河瀬さんは、IT企業を初めとする多数の会社で、戦略作りを指導してきた経験があり、指導やコメントのひとつひとつに非常に説得力がありました。また、受講者の様子や目的意識を常に配慮し、参加者のモチベーションを高めるデリバリ-を行ってくれました。戦略作りのプロセスと同時に、PFCならではの、人と組織に配慮した進め方が、今回のプロジェクトの成功に繋がったものと思います。」

取屋氏は、今回のプロジェクトを通じ、これからは以下のことを更に進めていければと考えていらっしゃるそうです。
  • せっかく学んだ戦略作りの方法(ある種の作法)を、BU内部でプロトコル(共通化)し、再現可能にすること
  • モチベーション維持と適切なフォローアップにより、作成した戦略を完遂すること
  • 今回の戦略策定は、BUや事業部の一部のものであり、今後はBU全体のまた個別事業部の戦略作りに、この方法を広げていくこと