クライアント事例

弥生株式会社様

部下とのコミュニケーションを一変させたSLII®
弥生株式会社(以下「弥生」)は、会計等の業務ソフトの開発販売を行う日本を代表するソフトウエア会社です。従業員数は473名(2012年10月現在)。2012年9月期の決算で売上・利益ともに過去最高を達成し、大入袋が配布されたばかりの活気ある弥生の社内では、SLII®を基盤にしたリーダーシップ研修が体系的に導入され、大きな成果をあげています。今回はそんな弥生での取り組みと成果についてご紹介します。

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日常業務での上司への満足度が52位から10位に急上昇

最初に、弥生で定期的に行われている社内調査の結果をご紹介しましょう。 まず、2010年の調査で社員の満足度52位(不満足度で第2位の重要課題)であった「わたしの直属の上司は、わたしの日常の業務遂行について理解し、支援をしてくれる」という項目が、2011年には満足度10位にまで急上昇しました。具体的には、この項目について満足(=「非常にそう思う」+「そう思う」)という回答の割合が前年の38%から研修後には67%に大幅に増加し、一方、不満足(=「全くそう思わない」+「そう思わない」)という回答の割合が22%から13%に大幅に減少したのです 他にも「私は、直属の上司との話し合いなとを通じて会社との一体感を感じている」、「私の直属の上司は、信頼できる」などの項目の社員満足度が向上しています。この原因として有力視されているのがSLII®の研修プログラムなのです。

世界80カ国以上で実践されるグローバルメソッド

世界で1,300万部を超える大ベストセラー『1分間マネジャー』(The One Minute Manager)をご存知でしょうか?SLII®はこの著者でもある米国のケン・ブランチャード博士等によって開発されたプログラムで、世界80カ国以上で実践され、最も活用されている著名な、リーダーシップ育成のグローバルメソッドです。日本ではピープルフォーカス・コンサルティングが2009年に日本におけるライセンス契約社として、販売を開始しました。SLII®の歴史は古く、日本で『1分間マネジャー』が出版されたのもおよそ30年前であり「SLII®は古い概念だ」と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、現在、世界80カ国以上で実践されていることからわかるように、既にグローバルに普遍性と有用性が証明されたメソッドなのです。 SLII®は日常の業務・目標において上司が部下とのコミュニケーションを通じて部下を育成するためのプログラムです。弥生において冒頭の結果が出たのもSLII®が「日常の業務・目標において」成果を出すことにフォーカスしていることが挙げられます。受講者は「日常の業務において」部下を理解し、支援のための具体的な考え方や方法を習得したのです。「誰もが有能なリーダーになることが可能」と考えるこのプログラムは、リーダーとして部下の育成や管理に必要な、体系的かつ具体的なフレームとスキルを提供しています。では弥生ではいかにこのプログラムを導入し、成果に結びつけたのでしょうか?


上図:SLII®の考え方
  • まず部下の特定のタスク(業務・目標)における「開発レベル」を「診断」する。 (図の下の部分) タスクにおける部下の「開発レベル」は「技能」と「意欲」の状況に応じて異なる。 「開発レベル」は「技能」が低く「意欲」が高いD1に始まり、「技能」も「意欲」も高く安定したD4へと上がっていく。
  • 部下のD1からD4の「開発レベル」に対応する「リーダシップ スタイル」(S1からS4)が図の上の部分。マトリクスの横軸の「指示型行動」は「技能」を高め、縦軸の「支援的行動」は「意欲」を高めます。
例)D1の部下は「技能」が低く、「意欲」が高いため高指示、低支援の「指示型」であるS1のリー ダーシップスタイルが適切であり、D4の部下は技能も、意欲も高いため、指示も支援も多く必要としない「委任型」のリーダーシップが求められる。

2年間で集中的に研修を実施

2010年の年明け、弥生の人事総務部長辻元弘幸氏は、全社的に展開するリーダーシップ研修を探しておられました。数あるプログラムの中で「目で見える」、「スキル的な要素を持つ」研修であることを理由に選ばれたのがSLII®です。2010年3月にはSLII®研修が開始され、約70名の全管理職が受講。続けて翌2011年3月からは彼らの直属の部下(約70名)に対して「SSL研修(後述)」を実施し、部下と上司の間の共通言語化を図りました。 さらに、2011年2月~4月には過去にSLII®研修を受けた管理職が、復習とステップアップの機会としてSLII®とDiSC®のブリッジプログラム(※)を受講するなど、継続的・体系的にプログラムを実施しています。

※SLII®と DiSC®のブリッジプログラム:SLII®における部下の業務ごとのD1~4の4つの開発レベルに対して、S1~4のリーダーシップをDiSC®の4つの行動特性を踏まえて使い分けることを学ぶプログラム。

共通言語化による全社浸透

SLII®プログラム導入のメリットは、管理職のリーダーシップ育成に留まりません。たとえば、弥生では研修実施後、「S1」「D2」といったSLII®での用語が社内で日常的に使われるようになりました。年に一度の社員総会でも紹介され、冒頭の社員の満足度調査の向上結果などと合わせて、SLII®を社内全体の共通言語として用いて行くことが社員に共有されました。 また、年に一回の目標設定、評価面談においても、「SLII®研修で学んだ手法に基づいて面談すること」という通達が人事総務部より為され、SLII®のモデルが社内に深く浸透して行ったのです。 ここでひとつポイントになったのが、「部下もSLII®を学んだ」という点です。弥生でも導入されたSSL(セルフ・リーダーシップ)で、 アイデア創出や問題解決に主体的、積極的に取組む自立的な社員を育成するプログラムです。受講者が自分自身のモチベーションの源泉や、有するスキルや知識を振り返ることで、リーダーシップを確立して行きます。SSLはSLII®のフレームワークを部下の立場からひっくり返して見たものですので、部下自体もSLII®のモデルや考え方を理解することで、自身の育成に当たっての上司とのコミュニケーションがよりスムーズになるというメリットがあります。

上司とのコミュニケーションを改善させる一言

ではSLII®を学んだ上司と部下の間では具体的にどのようなコミュニケーションが行われているのでしょうか? 弥生では、部下が「僕は(この業務においては)D1ですと上司に申告することができます。「D1」は「やる気満々で意欲は高いが、技能が伴っていない状態」ですので、リーダーは「S1」のリーダーシップスタイルをとり、技能を高めるためにその業務のやり方を教え、具体的な指示、指導を行う必要があります。上司にとってもSLII®を活用することで、部下の指導や業務のパフォーマンス管理、向上が容易になるわけです。

また、部下がSSL研修を受講し、SLII®が社内の共通言語となっていることで、上司には常に「部下がSLII®を知っているというプレッシャー」があると言います。上司だけがSLII®研修を受けた状態だと、実際にSLII®を使って指導するかどうかは上司個人に委ねられてしまいがちです。しかし、部下が SSLを受講することで、SLII®を使用したコミュニケーションが日常的に行われるようになる訳です。部下にとっても「上司がSLII®を知っているという安心感」があり、新しい業務についても自分の知識や進め方に不安な点があれば「私はこの業務についてはD1です」のように上司に申告することで、適切なサポートを受けられます。辻元氏は「上司が自ら変わらないのなら、部下が(接し方を)変えるしかない」と言います。部下からも働きかけを行うことで、上司任せでないコミュニケーションすなわち部下のセルフリーダーシップが実現するのです。取締役副社長である五月女尚氏がSSL の導入について「掛ける2(×2)ではなく、相乗効果になる」と評価しているのもうなづけます。

経営陣の理解とコミットがバックアップ

弥生が SLII®を導入しようとしたきっかけは、五月女氏が約20年前に前職でSLII®研修を受け、それを高く評価していたことに端を発します。五月女氏は弥生での公式導入の前から、身近な部下にSLII®の公開講座の受講をすすめていました。辻元氏が2010年に全社的に展開する初めてのリーダーシップ研修の候補として SLII®を提案した際に五月女氏が即決したのにもこのような背景があったのです。 SLII®に対する経営陣の強いコミットメントは、導入成功の大きな鍵となりました。 「予算を気にして一部のリーダーだけに実施したりしたら、想定した効果はほとんど得られない」「共通言語にすることを最初から考えておく」など、研修への投資を中途半端に終わらせずしっかり行うことで「元をとる」という五月女氏の力強い言葉が、弥生での成功の鍵をよく表しています。

更なる進化へ向けて

弥生では、2011年1名、2012年1名の計2名が SLII®のケン・ブランチャード社認定トレーナー資格を取得しました。これによって、社内講師によるSLII®研修が可能になりました。またこの社内講師が研修後のフォローアップも行うことや、SSLプログラムの受講社員の拡大などを今後の施策として考えています。

SLII®では部下が自分自身で業務/目標を達成できるように育成することを目的としており、個人の目標、組織の目標達成というビジネスの成果に直接的に結びつくのが特徴です。図でご紹介しているようなシンプルでわかりやすいフレームワークや習得可能で実践的なスキルである点から、組織の共通言語として浸透しやすく、上司と部下のコミュニケーションを円滑にし、組織全体を成果と成長へ効果的に導きます。以下のような課題をお持ちの企業様は是非一度SLII®の導入をご検討なさってはいかがでしょうか?
  • 「人材育成」が言葉だけに終わらず、具体的に行われているか
  • MBOやパフォーマンスマネジメントが、形だけに終わることなく、組織や個人のビジネス上の成果や部下の成長につながっているか
  • コーチング研修を導入したものの、いまひとつ効果がない、あるいは逆効果が生じているということはないか
  • 海外展開をしている企業にあっては、管理職の役割と行動に関する、グローバルに一貫した指針と方法論があるか
  • メンタルヘルス問題の原因の一番は「上司との関係」にあるという事実に、対応できているか