事例紹介:三菱商事株式会社様

海を渡った三菱商事のMC Group Gateway Program(中南米編)〜海外経典で異文化研修を実施する意味とは

皆さんは海外拠点スタッフとのコミュニケーションにお困りではないでしょうか?あるいは海外拠点の現地人材育成にどのように取り組んでおられるでしょうか?三菱商事株式会社では2010 年度より、三菱商事の理念・価値観の共有や、MCグループへの理解を深めることを目的として、国内外の拠点・グループ企業の社員を対象にした導入研修「MC Group Gateway Program(以下ゲートウェイ)」を開催しています。年間8回、東京で、日本語・英語で実施しており、約500 名(累計ベースでは約2,600 名)が参加しています。

今回、海外拠点・グループ企業の現地人材を対象として導入されている「異文化コミュニケーション研修」のみを特別に抜き出して、ブラジルで実施された石橋実様にお話を伺いました。

―石橋さんは、サンパウロにある中南米のRegional CEO Officeにおいて域内の現地法人、支店、駐在事務所や、事業投資先に対する人事面での支援を担当されていると伺っています。PFCではグローバルな組織開発やコミュニケーションの難しさをCSP(Cultural、Structural、Physical)の複雑性から考えることが多いのですが、中南米ならではの難しさなどをまずお聞かせいただきたいと思います。Cのカルチャー、すなわち文化的要因による複雑性、難しさと言った点はいかがでしょう?

こちらに赴任したのは3年前ですが、もともと持っていた「オープンで自由」という印象通りの人々でした。中南米全体で言っても、国や人によって若干の違いはありますが、少なくとも日本に比べればおしなべてその傾向があります。細かいことはあまり気にせず、とりあえずやってみる。トラブルやミスは起きて当たり前、起きる全体で考える。飛行機に乗るゲートは直前に変わるし、インターネットの設置のアポイントメントも「朝8時から夜18時の間に行きます」のような返答で、さらには来ないこともあります(笑)。それでも誰もびっくりしないし、怒らない。
ビジネスについても、多くの日本人は前提や背景、関係者への影響などをよく考えて、注意深く進めることが一般的だと思うのですが、それをあまり表に見せないので、彼らからすると、「日本人は何を考えてるかわからない」もしくは「日本人は考えてない」と思われてしまうことがあります。私自身についても、最初の頃は現地スタッフから「石橋は何を考えているかわからない、ちょっと冷たい人間じゃないか」などと言われていたこともあったようです。
しかし、だんだんと状況がわかってきたので、最初から丁寧に考えていることを説明する、考えの背景や途中経過も共有するということを心がけるようにしました。また、時間軸も大きな違いだと感じます。日本人は中長期的な観点で考えるのに対し、彼らはこちらの想像以上に短期的な視野で物事を考える癖がついています。ディスカッションをするうえでも前提の時間軸を丁寧に説明して共有していくことが重要ですね。

―ふたつ目のStructural、すなわち構造的要因についてはどうでしょうか?

まず、中南米全体の政治的な状況としては、戦争やテロ等のリスクは少ないが、金品目当ての強盗や短時間誘拐などの一般犯罪のリスクが高いと言ったことや、アルゼンチンやブラジルの政権交代に見られるように、バラマキ経済と決別し、経済重視の方向に大きく舵を切っていることが特徴的です。
人事関係のことについて言えば、全体的に労働者保護の色彩が強く労働訴訟などは非常に多い一方で、解雇規制などは比較的緩いというのが特徴です。また、意欲のある人材は積極的に転職を繰り返してステップアップしていく傾向が高いことも日本との違いです。リテンションのためには、採用・アサインメント・評価などの場面でのコミュニケーションをしっかりと行い、優秀な人材を惹きつけることが非常に重要になります。
評価を例に挙げると、一括採用・終身雇用の大手企業に勤める日本人は、評価を長期的に捉えており、単年度の評価にはそこまで一喜一憂しない傾向があるようにも思えます。会社や上司との中長期的な関係を考慮し強くクレームしたりせずに受け入れる人が多いのではないでしょうか。しかし、中南米では、基本的に多くの社員は中途入社で構成されており、会社側からの解雇が一般的に行われている一方で、社員にいつ転職されるかわからないという緊張関係があります。なので、1回1回の評価についても、きちんとしたフィードバックや説明を心がけています。説明が不十分だと、モチベーション維持や向上だけでなくリテンションの観点でも重大な影響を及ぼしかねない。また、常に労働訴訟のリスクを考えておかなければいけないことも特徴的です。解雇後に、過去の評価結果が不当であったという理由で訴えられることは珍しくありません。

―そう言った状況の中で、今回中南米でプログラムを実施された理由と、実施されてみての感想をお聞かせいただけますか?

ご存知の通り、三菱商事のビジネスは、トレーディングビジネスから事業投資、更に事業経営へと発展し、総合的なバリュー創造へと変化を続けており、現在では海外の事業投資先はビジネスの中心的な現場となりつつあります。
各事業投資先における価値向上に重きが置かれる中、自然体では遠心力が働きやすい状況と考えますが、例えば「三綱領」*をはじめとした経営理念や価値観を伝え、共有することは、中長期的な観点で三菱商事グループ全体としての価値向上や社外に対する「信頼」を醸成する上でも重要であるとの考えから域内の現地法人・支店・駐在事務所や事業投資先のNew Comer向けに中南米版のゲートウェイを開発・実施して来ました。その中で、現地の会社に頼んで異文化理解に関する研修も行なっていたのですが、日本の文化を誇張し過ぎている部分や、中南米の習慣を過度に肯定するような部分に違和感を持っておりました。日本の文化を押し付けたいわけではもちろんありませんが、文化の違いを理解した上でどのように業務に活かすか、すなわち、どのようにブリッジの役割を果たしていくかということにフォーカスすることを考えました。
そんなことを考えていた時に、日本の本社からPFCのプログラムを紹介され、バランスのとれたプログラムだと感じ実施を決定しました。

*「三綱領」は、旧三菱商事初代会長 岩崎小彌太の訓諭をもとに、1934年に旧三菱商事の行動指針として制定されたもの。三菱商事の経営理念となっているとともに、三菱グループでも共有されている。

ゲートウェイの異文化コミュニケーション研修では、通常の異文化理解に加え、

  • 日本固有の慣習(ネマワシ、ウチとソトなど)を日本人が海外現地人材に説明する
  • 各国のコミュニケーション(メールの書き方やフィードバックのルールなど)をお互いに共有しあう


などを取り入れた実践的な内容になっています。

受講者評価は、5点満点中4.8と過去最高レベルとなっております。日本のことがわかった、「ネマワシ」「ホンネ・タテマエ」と言った独特のコミュニケーションが参考になったといった声もありましたし、以前の業者のように「ブラジル・中南米びいき」の内容でもなく、かと言って「日本びいき」にもなりすぎず、よくバランスが取れていたと思います。また、講師のカルロスさんの進め方もよく、グループワーク等を活用したインタラクティブな構成であったこともあり、自己主張を好む中南米の参加者達を飽きさせることなく、「文化の違いをどう乗り越えるか」という課題に向き合わせることができたと考えております。個人的には、文化の違いというのは最終的には個の違いであり、異文化コミュニケーションというものも個と個の価値観の違いを乗り越えるためのツールであると考えているので、今後、そう言ったことも伝えていければと思っています。

―海外ビジネスに関わる方々、これから赴任する方々へのメッセージはありますか?

現地に住んでみないとわからないこと、実際に住んで肌で感じてわかることがたくさんあります。言語や文化の違いから戸惑うことも多いですが、自分で何でもしようとするのではなく現地の人をどれだけ信用できるか、任せていくことができるかが重要だと思っています。その為には、先ずは自分が信用されるよう粘り強くコミュニケーションを取る姿勢が重要だと思っています。

PFCでは、上記のように海外拠点におけるプログラム、海外拠点から現地人材を集めて日本で行なうプログラム等を実施しています。また、日本人を対象とした海外赴任前研修もご提供しています。プログラム内容や、受講人数、時間などはカスタマイズ可能ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。