クライアント事例

プーマジャパン株式会社様

全世界共通のリーダーシップ研修が日本上陸
ドイツに本社を置き、世界中のアスリートやファッション・リーダー達に愛されているPUMAがグローバルなリーダーシップ・プログラムを展開しています。プーマジャパン株式会社でも、2012年からこのILP(International Leadership Program)の導入を開始しました。

今回は、導入を担当された人事総務部部長の高田泰史様に、お話を伺いました。

ドイツで作られた全世界共通プログラム

PFC

まず、取り組みに至った経緯を教えて頂けますか?

高田氏

プーマは1993年に新たな事業戦略を始動して以来長期にわたって飛躍的にビジネスを成長させてきましたが、世界の市場環境は変化し厳しさを増してきています。こうした状況にあって更に成長を遂げるためには社員のリーダーシップを強化しなければならないということで、ドイツの本社でILP(International Leadership Program)が開発されました。これは、プーマで初めてグローバルに導入されたリーダーシップ・プログラムです。これまでもスタッフの行動指針となる「コアバリュー」や「ビジョン」といったものは提示されて来ましたが、ILPの中で初めてプーマのリーダーシップが明確に定義され、それを実現するために必要なスキルも提示されました。これまで、リーダーシップ育成については問題意識は持ちつつ、日本だけでは方向性もマネジメントのコミットメントも得づらく、この話は大変有り難かったです。現在、ベテランの管理職者から管理職候補者まで、21名の受講者がほぼ1年かけてこのプログラムを受講しています。

PFC

4回の集合研修の前後に360度フィードバックや、ピアコーチング、心理分析ツール、PFCによるワン・オン・ワン・コーチングなどを入れこみ、内省や気づきを促しつつスキルも習得するという実践的なプログラムでしたね。

高田氏

はい。リーダーとして必須な内省を促すため、まず360°フィードバックや心理傾向を測定するアセスメントを実施し、外部の視点、自らの心理的傾向の視点の両面からの内省を行いました。そして参加者同士の対話を通じて他者との違いを明らかにしつつ、内省をより深める。さらに、他者との違いをコミュニケーションにどのように活かすか、実践的な演習まで落とし込み、内省から実践まで体験できるプログラムとなっています。
実践の面では、職場に戻ってすぐに使えるモジュールばかりで、コーチング、フィードバック、マインド・マッピング、コンフリクト・マネジメント、ドライバー・スタイル、ストレス・マネジメントなどと言ったすぐに役立つスキルの学習が、具体的で平易に実践できるような形で織り込まれており、受講者にとって得るものが多いと感じさせる内容です。たとえば、最初のモジュールでピアコーチングの手法を学んだ後、参加者同士でチームを組んでもらい、スケジュール等のアクションプランを参加者がその場で決めて、職場に戻ってからピアコーチングを実施・継続してもらいます。ピアコーチングの中では業務上の課題をコーチングし合い、次のセッションで講師とも振り返る、といったようなきわめて実践的なアクションも組み込まれており、好評です。こういったことを1年を通したプログラムの間中ずっとやるので、教わったことを忘れない。研修の場だけで終わらないで、継続して使い、実践して行くきっかけとなるんです。

PFC

参加者の方からどのような感想が?

高田氏

自分で考え話し合い行動する参加型であることが、「大変理解しやすい」「コーチングなど、実践的なスキルを学べて、業務に役立てられる」と言った評価を受けています。「自分はついつい指示や話が長くなりがちだったが、 まずは部下の話を聞こう、という意識で接するようになった」 などの声も聞かれるようになりました。

本プログラムで採用している個々のツールにつきましては、360°フィードバックからは、「自分を客観的に見る視点を得、周囲の関係者が自分に何を期待し、どう感じているかを知ることができた」、心理分析ツールにつきましては、「自分の内面をより深く理解することで、職場で意見を戦わせたり対立するような場面でも、自分の状態や状況を客観的に見られるようになり、建設的な行動をとられるようになった。」「ピアコーチングの手法を、職場のミーティングでも取り入れ、建設的で効果的に話しあえるようになった」などの反響がありました。

PUMAオリジナルのグローバルプログラムを日本で再現するには

PFC

言語については悩まれたそうですね。

高田氏

グローバルで共通プログラムを実施することは、各国のスタッフが共通言語や共通のスキルを身につけ、共通の経験をするために非常に重要な意味を持ちます。しかし、そのためには、国境を越えても同じ内容で提供されなければなりません。全ての参加者は同じ経験をしなければならない。最初に議論したことは言語をどうするかです。私自身は以前同様のプログラムを他社で導入した時に、「テキストのみ日本語化し、英国人のインストラクターが英語で実施、同時通訳する」という方式で行った経験があり、それはそれで成果を上げられるという確信はあったのですが、 今回は「言語はやはり重要だ。参加者の理解や参加度を重視しよう」と、日本語での実施に決まりました。

ところが、本社が手配した和訳のテキストが、使用できるレベルのものではなかった。ヨーロッパ語間の翻訳であれば、単語を直接置き換えていってもある程度そのままの文意で翻訳されるのですが、日本語にするためには一度文脈も含めて正しく理解した後日本語で表現する作業になる、という点を本社側では認識してなかったようです。結局、多くの部分を自分たちでも見直したし、PFCさんにも手伝ってもらいながら手直しして行きました。膨大な作業量でしたが、やはりプログラムの内容を理解している我々スタッフや、実際にプログラムに関わる方が内容を精査するというのは、欠かせないプロセスですね。

PFC

テキストができたら次はトレーナーですね?

高田氏

グローバルなプログラムとして「共通言語」を維持すること、文化的なコンテクストで違う意味合いになってしまわないようにすることを重視していたので、トレーナー選びにはドイツ人の本社スタッフも関わりました。

ILPは単なるスキルに留まらず、内省や気づきを重視する、受講生主体のプログラムなので、講師のファシリテーションのクオリティが成功の鍵を握ります。本社スタッフがPFCさんをはじめとした日本でのデリバリー候補に面接を行った際も、「本社が伝えたいことが理解されているか」「似たような内省重視のプログラムをデリバリーした経験があるか」などを細かくチェックされました。PFCさんにお願いすることが決まった後は、来日した本社のトレーナーとPFCトレーナー陣との打ち合わせも綿密に行われ、結果として、テキストだけではなく、デリバリーにあたっても、本社で実施されているものと同じものが実施され伝えられていると自負しています。外資系企業でのローカライゼーションのノウハウをたくさん持つPFCさんだからできたことなのではないでしょうか。

ベテランも若手も次々と想いを口にするワークショップ

高田氏

PFCさんのファシリテーションも、参加者の特徴をよくつかんでいたと思います。プーマはスポーツカンパニーですし、率直な発言をする一方、議論するより行動といった気質があります。そういった気質を生かしながら、受講者ひとりひとりの考えをあまねく言葉にして引き出すことを上手にやって頂けました。進め方も非常にインタラクティブで、想像していたよりもはるかにたくさんの色々な声が聞けています。

たとえばリーダーシップ・スタイルに関するモジュールの中で、「指示的なリーダーシップ・スタイルの必要性」について話し合う場面がありました。「そりゃあ指示は必要でしょう」「いや、自主性を重んじるべきだ」など様々な意見が出て、ディスカッションが自然にはじまったのですが、講師がその流れを止めないで、全員が議論に参加して行くような状態を保ちつつ、議論の方向性だけを与えるという方法を取ってくれたことが印象的です。

今回の研修は、大変経験も長く高い職位のリーダーからこれからリーダーの役割を担うスタッフまで、幅広い階層の参加者が一緒に受講しており、どれだけオープンなコミュニケーションが生まれるか不安がありましたが、そうした環境でも自分の思ったことが自然に口にできる雰囲気を上手く作って頂いたと思います。聞くのも上手、話させるのも上手という印象です。ILPはもともと良くできたプログラムだと思いますが、生かすも殺すも講師次第。ILPの本質である「スキルを学びながら、リーダーシップのあり方と、自分のインサイトを考える」という点を実現できたのは、まさにPFCさんのお陰です。

PFC

PUMAさんならではの楽しいコンテンツもありましたね。
そうですね。puma2.emf ILPでは、参加者がディスカッションの際にフットサルボールを手渡されて、次の発言者にパスするルールになっていたり、PUMA社員の行動原理はJOYと定義されていますので、参加者が昼休み後のエナジャイザーを工夫して、腕相撲大会をしたりなど、自分たちで楽しめるものにしていました。

役員会議を課長クラスがファシリテート

高田氏

そうですね。puma2.emf ILPでは、参加者がディスカッションの際にフットサルボールを手渡されて、次の発言者にパスするルールになっていたり、PUMA社員の行動原理はJOYと定義されていますので、参加者が昼休み後のエナジャイザーを工夫して、腕相撲大会をしたりなど、自分たちで楽しめるものにしていました。

グローバルな共通言語を手に入れた

PFC

海外と仕事をされている参加者の方も多いそうですね。海外のスタッフとのチーム作りやコミュニケーションにも役立ちそうでしょうか?

高田氏

「海外で誰がこのプログラムを受けているか教えてほしい」と聞いてきた受講者がいました。共通の概念やスキル、言語をもつことで、コミュニケーションや協業がよりやりやすくなると思います。このプログラム自体、他国で実施する場合は複数の国のスタッフが参加して交流し、グローバルな視点で話し合う場になっているんです。残念なことに日本では言語の問題から、海外のスタッフに混ざっての受講というのは実現していませんが、今後受講者が増えて行くに従って、ILPで学んだ内容がグローバルな共通言語になっています。

PFC

海外本社のプログラムを実施する場合のアドバイスをまとめると?

高田氏

プログラムの内容、グローバルな戦略上の位置づけを日本のマネジメント層に理解してもらうことが必須ですよね。今回の場合は、導入に先立ち、PFCの桑山さんに日本の役員へのプレゼンをお願いしました。戦略の実現にあたって、人材の強化が最も重要であり、ILPがグローバル基準の素晴らしいトレーニング内容であることなどを伝え、また効果を高めるためには参加者の上司(=経営層)の支持と支援が必要であることも訴えました。

また、受講者の動機づけにも工夫すると良いと思います。たとえば、ILPではプログラムの冒頭で、CEOが直接参加者に語りかけるビデオメッセージを流し、参加者にこのプログラムを実施する目的やPUMAのリーダーとして求めるものを伝えます。これにより、参加者はCEOの視点に立ち、PUMAのリーダーとしてのミッションを理解し、目的意識を持って主体的に参加することが期待できます。

世界から日本のスタッフに対するグローバルなチームの一員としての期待が高まる中、日本のリーダーたちがそうした役割を担うためのスキルや共通言語を身につけるべく、ILPを展開させて行きたいと思います。