PFCは創業の頃からダイバーシティを強固で健全な組織に重要な要素として位置付け、クライアント企業を支援してきました。女性活躍推進に取り組まない企業はないといっても過言ではなくなった今、どのように施策をデザインし、ステークホルダーを巻き込むか問われるようになってきました。
B社では、店長など管理職の候補者の女性たちが自信をつけて成長する機会を設ける、女性リーダー育成を実施し、その数も着々と増加してきました。女性候補者のみならず、上司である店長およびその上の管理者層の意識改革を効果的に行うこの取り組みについて、ご紹介します。
**ダイバーシティ&インクルージョンとは、社員一人ひとりが持つ様々な違い(表層的・深層的ダイバーシティ)を受け入れ、それぞれを価値として活かすことで企業の競争力に繋げるという考え方および活動**
クライアント事例
B社(大手小売業)での事例
ダイバーシティ&インクルージョン:女性管理職候補育成と、管理職層の啓発・変革
女性リーダーの上司にも手厚いプログラムを提供
B社が行っているダイバーシティ&インクルージョンD&Iのプロジェクトは、あらゆる階層、各エリアで実施される女性活躍推進関連の活動を包括している。各エリアごとに実施されている女性社員の勉強会やワーキングループ等にも徹底してプロジェクトの考え方が浸透している。
PFCは、店長候補など3階層のリーダー向けの研修について、プログラム設計と講師・ファシリテーション派遣を行っている。それぞれ、約1年間の女性候補者向けのアクションラーニング(研修と職場での実践を組み合わせるリーダー育成の手法)であるが、集合研修は、PFCが提供するリーダーシップトレーニングと、B社内で実施されるトレーニングから構成される。
女性候補者の上司(店長)に対する手厚いプログラムも用意されている。店長は、①D&Iの理解(職場啓発のためにまずは自身の啓発)、②育成スキル強化、③職場風土改革に関して、年間3~4日間、研修やワークショップに参加し、2015年に取り組みを開始して以来、プログラムにが200名近くが参加し、ほぼ3分の1が昇進している。
PFCは、店長候補など3階層のリーダー向けの研修について、プログラム設計と講師・ファシリテーション派遣を行っている。それぞれ、約1年間の女性候補者向けのアクションラーニング(研修と職場での実践を組み合わせるリーダー育成の手法)であるが、集合研修は、PFCが提供するリーダーシップトレーニングと、B社内で実施されるトレーニングから構成される。
女性候補者の上司(店長)に対する手厚いプログラムも用意されている。店長は、①D&Iの理解(職場啓発のためにまずは自身の啓発)、②育成スキル強化、③職場風土改革に関して、年間3~4日間、研修やワークショップに参加し、2015年に取り組みを開始して以来、プログラムにが200名近くが参加し、ほぼ3分の1が昇進している。
女性に下駄を履かせることではない
先に述べたとおり、B社では、女性候補者のリーダーシップやスキル開発だけでなく、関係者の意識改革を重視している。スタート当初、研修に参加する女性たちの反応は、「なぜ私が選ばれたのか?」という当惑や、「選ばれたことはうれしいが、期待に応えられるか自信がない」というものだった。自分が管理職候補者として名乗りを上げることに対する抵抗感は、いわゆる「そのような前例を見たことがない、ロールモデルがいない」ことに起因するものだった。
翻って、店長やエリア統括の管理職は、開始当初、D&Iとは、下駄をはかせて女性を昇格させることだという誤解を持った人が少なからずおり、本音で議論してみると、「女性に店長は無理」という思い込みが依然存在した。女性が店長になるためには、相当な決意が必要だとして、「結婚かマネジメントかどちらかを選択せよ」と、部下である女性管理職候補者に喝を入れて送り込んできた店長もいた。当然ながら、こういった店長は決して悪意があるわけではなく、本気で取り組まなければ得るものはない、と部下に伝えたいだけなのだ。しかし、女性ロールモデルを身近で見ることのない女性候補者にとっては、この、ちょっとしたボタンの掛け違いが高い壁として立ちはだかることになる。
店長ワークショップでは、「積み上がった在庫を腕力で素早く片付ける男性管理職の方をつい重用し、評価してしまう」という本音が漏れたり、店舗でのクレームに際し、「なんだ女か。男の店長はいないのか」といったお客様の反応にどう応えたらよいのか、といった困惑の声が挙がった。しかし、ワークショップで本音の議論を重ねる中から、「重たい荷物をいかに早く運べるかを管理職の評価基準にしてはいけない。」「率先垂範以外の店長のリーダーシップモデルを定着させるべきだ」「固定観念を持つお客様には、男性副店長が対応するしかない。チームでの店舗経営があってもいい」といった気づきや対処法が生まれていった。
翻って、店長やエリア統括の管理職は、開始当初、D&Iとは、下駄をはかせて女性を昇格させることだという誤解を持った人が少なからずおり、本音で議論してみると、「女性に店長は無理」という思い込みが依然存在した。女性が店長になるためには、相当な決意が必要だとして、「結婚かマネジメントかどちらかを選択せよ」と、部下である女性管理職候補者に喝を入れて送り込んできた店長もいた。当然ながら、こういった店長は決して悪意があるわけではなく、本気で取り組まなければ得るものはない、と部下に伝えたいだけなのだ。しかし、女性ロールモデルを身近で見ることのない女性候補者にとっては、この、ちょっとしたボタンの掛け違いが高い壁として立ちはだかることになる。
店長ワークショップでは、「積み上がった在庫を腕力で素早く片付ける男性管理職の方をつい重用し、評価してしまう」という本音が漏れたり、店舗でのクレームに際し、「なんだ女か。男の店長はいないのか」といったお客様の反応にどう応えたらよいのか、といった困惑の声が挙がった。しかし、ワークショップで本音の議論を重ねる中から、「重たい荷物をいかに早く運べるかを管理職の評価基準にしてはいけない。」「率先垂範以外の店長のリーダーシップモデルを定着させるべきだ」「固定観念を持つお客様には、男性副店長が対応するしかない。チームでの店舗経営があってもいい」といった気づきや対処法が生まれていった。
「女性の育成の仕方がわかった」
スタートから2年が経ち、最近の参加者からは、明らかにD&Iが定着していることを示す発言や言動が増えている。象徴的な事例をいくつかご紹介しよう。
女性リーダー候補者たちのキックオフワークショップでは、初日に相当の時間を割いて、「なぜ自分が選ばれたのか」「自分には自信がない」「ロールモデルがいないから将来像が描けない」といった女性特有の不安やモヤモヤの解消時間を設けていた。女性たちの本音の発露、経営陣やエリア長たちからの期待を丁寧にキャッチボールし、女性たちのキャリア・アスピレーションに火をつけるための対話の場を持ってきた。ところが、今年のキックオフでは、その時間がほとんど不要だったのだ。かわりに、参加者全員の心に一瞬で火をつけた一人の発言がこれだ。
「今年表彰された○○店の女性店長が私の憧れで、自分もああなりたい。彼女のスピーチを聞いて、自分もがんばれば彼女みたいになれる!と本当に勇気づけられました。」
店長からは、「男女にかかわらず、自分の育成スキルに自信が持てるようになった」という声が多い。D&I推進において重要になるのがどのような人財がハイパフォーマーであるかという組織としての基準である。この基準を満たしていれば、性別も国籍も、年齢も出自も問わないのだ。本プログラムではアクションラーニングの目標設定や育成計画において、コンピテンシーの活用を盛り込み推奨することで、店長の育成スキルを上げていった。店長たちは「女性だけ特別扱いはしない。育成の機会は女性の方が手厚いものの、評価や昇格においては、男性と同じ基準を用いる」ことを実践し、コーチングスキルを強化し、育成スキルに自信をつけていった。
プログラムの最終回では、女性リーダー候補と上司である店長が共同で1年の成果と成長をプレゼンテーションする。ある店長と女性副店長候補は、マラソンランナーの恰好で最終プレゼンに現れた。女性副店長候補は、「副店長といわず、私は店長を目指して、自社らしい誇れるお店を創り上げたい」と高らかに宣言。店長はというと「私は来年定年。タスキを女性に渡すなんて実は考えてもみなかったが、今は心から喜んで、誇らしく、○○さんにタスキを渡したいと思います」と、自らに掛けられた「店長」のタスキを、経営陣たちが見守る中、女性リーダー候補に掛け替える感動的なパフォーマンスを行った。
一方、店舗においては、次世代の女性リーダー育成よりも、男性・女性双方の社員の意識改革、職場風土づくりが肝要となる。
といったことだ。目下のところ、店長たちの課題は「店舗の男性管理職たちを、傍観者から当事者にいかに変えるか」である。店長が他の管理職を感化し、変革推進リーダーを増やすことが次なる課題であることが明確に自覚されている。
女性リーダー候補者たちのキックオフワークショップでは、初日に相当の時間を割いて、「なぜ自分が選ばれたのか」「自分には自信がない」「ロールモデルがいないから将来像が描けない」といった女性特有の不安やモヤモヤの解消時間を設けていた。女性たちの本音の発露、経営陣やエリア長たちからの期待を丁寧にキャッチボールし、女性たちのキャリア・アスピレーションに火をつけるための対話の場を持ってきた。ところが、今年のキックオフでは、その時間がほとんど不要だったのだ。かわりに、参加者全員の心に一瞬で火をつけた一人の発言がこれだ。
「今年表彰された○○店の女性店長が私の憧れで、自分もああなりたい。彼女のスピーチを聞いて、自分もがんばれば彼女みたいになれる!と本当に勇気づけられました。」
店長からは、「男女にかかわらず、自分の育成スキルに自信が持てるようになった」という声が多い。D&I推進において重要になるのがどのような人財がハイパフォーマーであるかという組織としての基準である。この基準を満たしていれば、性別も国籍も、年齢も出自も問わないのだ。本プログラムではアクションラーニングの目標設定や育成計画において、コンピテンシーの活用を盛り込み推奨することで、店長の育成スキルを上げていった。店長たちは「女性だけ特別扱いはしない。育成の機会は女性の方が手厚いものの、評価や昇格においては、男性と同じ基準を用いる」ことを実践し、コーチングスキルを強化し、育成スキルに自信をつけていった。
一方、店舗においては、次世代の女性リーダー育成よりも、男性・女性双方の社員の意識改革、職場風土づくりが肝要となる。
- 「障害のあるお客様のアテンドは女性社員が適している」といった無意識のバイアスを取り除く
- 店長だけでなく、男性管理職も女性リーダー育成の当事者にする
- 女性社員には「自分も管理職を目指したい」という健全な競争心を持ってもらう
育成の仕組みとD&Iを連動させる
ダイバーシティ推進は、マイノリティのリーダー育成であり、組織風土の変革推進活動である。B社の取り組みが素晴らしい点は、
①戦略的優先度の高さ:ダイバーシティ推進の失敗パターンとしてよく見られるのが、研修やワークショップを実施したはいいが、社員が日常の中でその重要性を感じることが滅多にないというものだ。しかし、B社ではD&Iの戦略的重要性が年次総会など、あらゆる機会で社員に伝えられている。 ②現場のリーダーが推進役:ダイバーシティ推進が失敗するパターンの二つ目は、「人事部が旗振り役をするも現場になかなか火がつかない」というものだ。B社では、カギとなる店舗の管理職に最も影響力があるエリアマネージャーを D&Iプロジェクトの推進リーダーに任命し、ワークショップの設計や当日のファシリテーション(一部)、プログラムの改善、そして、女性リーダー候補を育成する店長の支援、店舗横断的な学習機会の創出(所属店にはない部署についての他店舗での学習や、規模の異なる店舗の店長のシャドウイングなど)にも携わってもらった。この推進リーダー役は毎年持ち回りなのだが、プログラムの振り返りや改善のための議論の中では皆一様に、「去年までは自分も傍観者だった」と自らを真摯に振り返りながら、いかに他のエリアマネージャーや店長に自分ごと化してもらうかに取り組まれていた。 ③育成の仕組みとの連動:ダイバーシティ推進の失敗パターンその3は、女性育成が他の社員の育成から切り離され、女性特有の分離アプローチとなってしまうことだ。B社では、育成領域のかねてよりの課題であったコンピテンシーや能力開発プランの活用強化をここで行い、一石二鳥を狙った。コンピテンシーはプログラム内で360度フィードバックの調査項目に落とし込み、店長、副店長に必要な能力要件であることを女性リーダー候補、上司である店長ともに、いま一度確認し理解するステップを設けた。
能力開発プランを活用した目標設定、女性リーダー候補へのフィードバック提供、そしてコンピテンシーのアクションプラン策定への活用等を行うことにより、「男性副店長にも能力開発プランを作成してもらって、女性リーダー候補と同じように面談を行った。」「そのおかげで、男性副店長が女性リーダー候補の育成に関与してくれるようになった。」「他の社員にも能力開発プランを活用できるようになった。」と言った声が聞かれるようになった。
- ①戦略的優先度の高さを社員が感じられる
- ②人事ではなく、現場のリーダーがD&Iプロジェクトを推進している
- ③育成の仕組みとD&Iプロジェクトが連動している
能力開発プランを活用した目標設定、女性リーダー候補へのフィードバック提供、そしてコンピテンシーのアクションプラン策定への活用等を行うことにより、「男性副店長にも能力開発プランを作成してもらって、女性リーダー候補と同じように面談を行った。」「そのおかげで、男性副店長が女性リーダー候補の育成に関与してくれるようになった。」「他の社員にも能力開発プランを活用できるようになった。」と言った声が聞かれるようになった。