花王グループでは2010年4月に「人材開発基本方針」を全世界に向けて発信し、同時に「花王クリエイティビティ・キャンプ(グローバル研修体系:コーポレートユニバーシティ)」を設立しました。「グローバル企業として成長していくためには、仕事や組織とともに、人材開発の制度や施策も世界標準にしていく必要がある」という考え方から作られたもので、現在はこの方針に基づき、各種のプログラムを全世界で実施する段階に入りつつあります。PFCでは花王におけるこのプロジェクトを5年間にわたって支援してきました。
このプロジェクトで現状分析からクリエイティビティ・キャンプ設立までの中心的な役割を担った人材開発部門 グローバル教育センターの新井久美子室長にお話を聞きながら、花王でのグローバル人材育成の具体的な取り組みについてお伝えします。
クライアント事例
花王グループ様
世界標準の人材育成プログラムでグローバル化を推進
全世界の研修体系を3年間かけて整理
新井氏
最初に行ったことは、戦略をどう研修プログラムに落とし込むかというコンセプト作りでした。そのために、全社戦略の分析・その戦略を実現するためのパフォーマンスの特定・そのパフォーマンスを実現するためのスキルの洗い出し、というようなニーズアセスメントを行いました。ここで洗い出されたスキルに加え、花王ウェイを現場で共有・実践できることもコンピテンシーととらえ、このふたつをグローバル研修体系に入れ込んで設計しました。
PFC
新井氏
PFC
新井氏
プログラムが実現するまで
PFC
新井氏
PFC
新井氏
世界共通のプログラム体系「クリエイティビティ・キャンプ」をリリース
さまざまなパイロットケースや、PFCのコンサルタントとのディスカッションを重ねながら、2010年に世界共通の人材育成体系「クリエイティビティ・キャンプ」がリリースされました。花王の社内報の中では、「花王はグローバル企業。そこにはさまざまな国の人がいて、価値観も違う。そういったダイバーシティ(多様性)を尊重し、活力としながらグループとして共通の目的に進んでいく。そのための組織と人づくりを各部門の方々と一緒に進めていく」と紹介されました。
リリースを受けての社内での反応はどうでしたか?
本社主導で、グローバルに人材を育成するための研修体系という観点はこれまでなかったので、国や地域を越えた研修や社員の交流の場も更に広がり、人材育成分野でのグローバル化の礎が固まったというコメントが多く聞かれました。また国内と違って、海外ではこれまで体系立った教育プログラムがなかった国もあり、特にアジア地域からは、喜びの声も多く聞かれました。
PFC
新井氏
プログラムの全世界展開の実際
実際のプログラムの運用段階に入ってからも、ファシリテーション研修の運営など、PFCの支援は続きました。
ファシリテーション研修をグローバル展開したのは何故ですか?
「グローバルチームをうまくマネジメントをしていくことができる人が必要」「いろいろな価値観をもつメンバーと問題を解決したり、課題を達成するためには、これまでのやり方では通用しない」「日本人にもダイバーシティという考え方をもっと理解してほしい」といったことが課題として上がっていたので、これらの課題を解決しグローバルチームをリードするために必須のスキルとして、以前よりファシリテーションに注目していました。これに加え、事前にグローバルレベルで実施したニーズアセスメントで、グローバルマネジメント力をあげるために必要なスキルとして、ダイバーシティマネジメント・コンフリクトマネジメント・パティシペーティブマネジメント等、花王が求める「新たな6つのマネジメントスタイル」があがっており、ファシリテーションはこれらをカバーする強力なスキルであると考えました。また、「会議が長い」という現場からの課題もあり、会議を効果的に使って、意思決定、チーム力をあげるスキルも学びたいというきわめて実践的な目的もありました。
上海とマレーシアで行ったパイロットプログラムは、受講生からも下記のように高い評価を得ました。
新井さんは、海外でのプログラムにも同行されたわけですが、ご覧になっていていかがでしたか?
最初は斜に構えていたような受講者も、プログラムが進むにつれ、ぐんぐんと引き込まれて前向きになっていきました。PFCの講師ジョン・マクナルティさんは、ご自身も様々な国、異文化の中での経験をされていることもあって、たくさんの事例を入れ込みながら研修を進め、ワールドクラスの高いスキルで受講者を巻き込んでいく様は見事でした。また、後半、グループごとに実際の会議をファシリテーションするロールプレイを行うのですが、受講生達が楽しみながら学んでいるのがよくわかりました。研修後、中国から「研修の翌日からファシリテーションのキットが会議室に置かれていた」という報告を受けたり、マレーシアでは、ほぼ初対面だったペナンとクアラルンプールのスタッフのチームビルディング効果もあって、終了後ビジネスに良い影響があったなど、うれしい報告もありました。
今後の展開は?
現在(9月)上海でマネジメント研修のTTTを実施しており、スペイン・中国・台湾・フィリピンの社内講師を育成し、昨年育成した香港・タイ・マレーシア・ベトナム・インドネシアの社内講師、今後育成する日本・欧米の社内講師と共にグローバル展開をしていきます。ファシリテーション研修についても、マレーシア・インドネシア・中国を皮切りに社内講師を育成し、日本・アジア各国・欧米へと展開する範囲を広げていきます。
今後の課題は、社内講師の質と数をいかにキープするかということと、環境の変化に合わせてプログラムの内容を柔軟に対応させていくことです。ファシリテーションスキルは、今後、どこの国の、どの階層の人でも同じように身につけている共通言語のように出来ればと思っています。ただ、約4万5千人のすべての社員に受講してもらうのは気の遠くなるような道のりです。まずはマネージャー層から展開していきますが、社員全員に組織単位で受講してもらうには、ステップが必要です。今考えているのは、各国・各社・各部門が戦略目標を達成するにあたって、それをサポートし加速するような位置づけでファシリテーション研修を導入して行くということです。それぞれの戦略にあわせて導入時期を検討しつつ、成功事例を作っていきたい。また、そのときの鍵のひとつは、社内講師の質を揃えることです。その点、社員講師を養成するPFCの講師がバイリンガルであり、日本語でも英語でも同じ質でプログラムを展開できる事は大変ありがたく思っています。
PFC
新井氏
上海とマレーシアで行ったパイロットプログラムは、受講生からも下記のように高い評価を得ました。
PFC
新井氏
PFC
新井氏
今後の課題は、社内講師の質と数をいかにキープするかということと、環境の変化に合わせてプログラムの内容を柔軟に対応させていくことです。ファシリテーションスキルは、今後、どこの国の、どの階層の人でも同じように身につけている共通言語のように出来ればと思っています。ただ、約4万5千人のすべての社員に受講してもらうのは気の遠くなるような道のりです。まずはマネージャー層から展開していきますが、社員全員に組織単位で受講してもらうには、ステップが必要です。今考えているのは、各国・各社・各部門が戦略目標を達成するにあたって、それをサポートし加速するような位置づけでファシリテーション研修を導入して行くということです。それぞれの戦略にあわせて導入時期を検討しつつ、成功事例を作っていきたい。また、そのときの鍵のひとつは、社内講師の質を揃えることです。その点、社員講師を養成するPFCの講師がバイリンガルであり、日本語でも英語でも同じ質でプログラムを展開できる事は大変ありがたく思っています。