企業の存在意義を問い直し、それを経営の中心に据える「パーパス経営」が注目されている。経営計画に「パーパス」を盛り込む企業も増えたが、具体的な行動が伴わないケースも多い。しかしそれでは、掲げるだけで実行しない「パーパス・ウォッシング」の批判を受け、経営にマイナスの影響を与えかねない。
パーパスを血肉化するには、社員たちがパーパスを我が事として捉えることが必要だ。それには、パーパスについて話し合い、各社員が自己の体験と照らし合わせて理解を深めることが重要になる。
PFCは、そうした双方向対話を重視したパーパスの浸透施策として、「ファシリテーション」の活用を進めている。特徴的なのは、社員が「社内講師」としてファシリテーターを務めるという点だ。その実施事例として、石原産業株式会社・サステナブル推進委員会参与の水谷朗氏、リーダーの山口浩市氏、マネージャーの樋口浩司氏にお話をうかがった。
(取材・構成:石澤 寧)
クライアント事例
石原産業株式会社様
対話ファシリテーションから始めよう!
石原産業のパーパス浸透施策
石原産業のパーパス浸透施策
パーパス浸透で採用した「3つのポイント」とは
水谷氏
具体的には、どのようなプロセスで取り組まれたのですか?
山口氏
はじめに、各部の部長クラス約20人を集めた「パイロット研修」で、実際のワークショップを体験してもらいました。受講者からは、とても納得感がある、これは推進するべき、という反応があったため、このときの振り返りや議論をもとに、PFCさんと一緒に本番のワークショップを計画していった形です。
計画のポイントはどんな点でしょうか?
山口氏
二つ目は「ファシリテーター」の活用です。ファシリテーターが汲み上げた感想や意見をその場で共有することで、受講者の主体性を引き出すことができます。「会社のパーパス」と「自分のパーパス」を照らし合わせ、受講者が「自分事」として捉えるきっかけにしたいと考えました。
そして三つ目が、ファシリテーターを社員が務める、という点です。パーパス研修を修了した課長~部長クラスの約40人が「社内講師」となり、全国7カ所で行なう一般社員向けのワークショップでファシリテーターを務めることにしました。この機会にファシリテーションの手法を社内に取り入れる狙いもありました。
尻込みしていた社員が次第に熱意を持ち始める
ファシリテーターを務めるとなると、担当する社員の方はなかなか大変だったのでは?
樋口氏
そこをどのようにして乗り越えたのでしょうか?
山口氏
水谷氏
樋口氏
山口氏
情報交換フォルダは、回を重ねるごとに経験談やアドバイスがどんどん集まってきて、社内講師メンバーの熱意の高まりを感じました。各講師が参考にすることで、ワークショップの中身や進め方がよりレベルアップしたと思います。
パーパスの浸透施策は「自分軸」の確認につながる
社内講師を務めた感想はいかがですか?
樋口氏
受講者の方からはどんな感想がありましたか?
樋口氏
また、全社的に重要なテーマですから、工場の操業員向けにも1時間に凝縮したプログラムを別途制作して、PFCさんにワークショップを行なってもらいました。ここでも、やはり9割近くの参加者が「パーパスについて理解が深まった」と回答しています。これらのデータからも、パーパスを自分事として捉えるきっかけをつくるという目標は達成できたのではないかと思います。
今後はどのようにパーパスの浸透について取り組んでいくご予定ですか?
山口氏
また、弊社では年に一度、部下が上司とキャリアプランを話し合う機会があるのですが、そこで「個人のパーパス」をぜひ話し合ってほしいとアナウンスしています。社内でのキャリアを考えることは、一人ひとりのパーパスと会社のパーパスをすり合わせていくことにつながりますから、こうした機会をパーパスの浸透にも活かせたらと考えています。