コラム

2025.05.05(月) コラム

B Corp新基準発表:「良いビジネスとは何か」をさらに明確に示すモデルに

サステナビリティ事業推進室長の千葉達也です。

2025年4月、B Corpの新基準が発表になりました。 そこで今回は、B Corpについて改めて紹介すると共に、認証基準変更の背景とその内容を紹介していきます。

B Corpの再認証制度について

Bコープ(B Corporation)は、企業が社会や環境に与える影響を測定し、持続可能なビジネスモデルを推進するための国際的な認証制度です。この認証は、非営利団体B Labによって運営されており、企業の公益性や透明性、説明責任を評価します。認証を受けるためには、ガバナンス・従業員・環境・コミュニティ・顧客の5つの分野で合計80点以上を取得する必要があります。

B Corp認証を受けた企業は、社会的責任を果たしながら利益を追求する「良い企業」として認められます。しかし、認証を維持するためには、3年ごとに再認証を受けなければなりません。この再認証の目的は、企業が継続的に社会的・環境的なパフォーマンスを改善し、変化する課題に対応し続けることを確保することです。例えば、環境規制の変更や新たな社会的ニーズが生まれた場合も、企業の取り組みを見直す必要があります。

これはB認証が、取得することがゴールとなるような単なるステータスではなく、持続可能な未来を目指すための継続的な取り組みであることを象徴しています。

なぜ新基準に変更されたのか?

今回の変更は急に決まったことではなく、2020年に検討プロジェクトが組成され、4年以上の長い年月を経て発表されました。

検討が始まった背景には、B Corpに興味を持つ企業の国・地域の拡大やビジネスに対する社会の期待や法制度の変化など、取り巻く世界そのものの大きな変化があります。その変化に伴い、グローバルなB Corpムーブメントも、現在直面している深刻な社会的・環境的課題の解決に貢献するため、更なる進化を続けているのです。

検討のプロセスでは、さまざまな規模の企業や産業・多くの国・様々なステークホルダーの意見を反映させるために、幅広くアンケートを依頼し、内容を見直していく作業が重ねられました。

検討には長い時間がかかり、多大な労力が要されたことも想像に難くありませんが、その結果、新基準はあらゆるステークホルダーにとって「良いビジネスとは何か」を明確に示すモデルとなり、すべての企業のインパクトを拡大するための強力な枠組みになりました。

以下は、新基準に関する、Bコープの公式動画です。

今回発表になった新基準とは何か?

B Lab(Bcorp認証機関)の18年間の歴史の中で最大の変化と言われるこの新基準について、まずは特に大きな変更点3つを紹介していきたいと思います。

  • 1)重点項目が5つから7つに変更

これまで認証を受けるための、重点項目が5つでしたが、今回の新基準では基礎要件と7つの重点項目(政策渉外とコレクティブアクション、ジャスティス・エクイティ・ダイバーシティ・インクルージョン、公平な働き方、環境管理と循環性、人権、パーパスとステークホルダーガバナンス、気候アクション)に構成が変更されました。また、それぞれの要件は企業の規模や業種、地域に応じて調整されます。

出所:B Corpポータル|BMBJ公式 日本語ガイド
  • 2)新しくなった全ての重点項目で基準点のクリアが必要に

これまでの基準では項目によってばらつきがあっても5項目の合計80点以上の点数を獲得していれば、認証を得ることが出来ました。しかし、新基準では点数表示はなくなり、7項目の全てにおいて最低基準はクリアすることが求められるようになりました。

これまでは業界・国による環境の違いなどを考慮した設問の設定が出来なかったことから合計で判断する基準になっていました。今回の変更では、状況に応じた設問の変更が可能になり、求める基準を明確に提示できるようになったため、項目ごとに採点方式が採用されました。

  • 3)再認証を行う際の継続的な改善は任意ではなく必須に

これまでの基準においては再認証を受ける際、継続的な改善は求められるものの明確な基準はありませんでした。しかし、新基準では全ての重点項目について段階的にどのようなこと取り組めば良いかが明確化され、再認証の際に改善が必須で求められるようになりました。そのため、自分が得意な部分だけに注力するのではなく、広範囲に及ぶ活動が求められることになります。

他にも他の認証機関と連携しやすいよう考慮されているなど変更点は色々とありますが、以上の3つをまずは知っていただきたいと思います。

B Corp新基準に関する所感

今回の新基準について、まだ今後も詳細がこれから公開されていく段階にはあるものの、個人的には変更を前向きに受け止めています。特に、枠組みが明確になることで、目指すべき方向を定め、社会に良い結果をもたらすビジネスの推進にむけて集中できることが良い点だと考えています。多くの認証機関で、守るべきことは色々と定義されているものの、それを通じてどのように社会に貢献すべきかは語られていないので、それがB Corpのユニークな点と認識しています。これから新基準について学びつつ、この枠組みを土台にしながら、PFCのみならず多くの企業が「善いビジネス」について考え、行動し、企業価値向上に取り組むことを支援していきたいと思います。

千葉 達也(ちば たつや)
株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング 
サステナビリティ事業推進室長