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組織開発

エグゼクティブ・コーチングとは?マネジメント層が成長するための支援手法を徹底解説

そもそもエグゼクティブ・コーチングって何?

エグゼクティブ・コーチングとは、企業の経営層や幹部クラスを対象にした、個別に行われる専門的なコーチング手法です。このコーチングは、クライアントが自己認識を深め、行動を変容させ、リーダーシップを発揮するための支援を行います。

対象となるのはCEO、CFOなどのC-suite役員から、部長・課長クラスの次世代リーダーまで幅広く、特に組織に大きな影響力を持つ人たちです。

エグゼクティブ・コーチングは、組織内での意思決定や人材マネジメントにおいて、高い自覚と成長が求められるタイミングで導入されることが多いのが特徴です。

どんなときにコーチングを導入すべきか?

エグゼクティブ・コーチングが必要とされるのは、主に変化や挑戦を伴う場面です。たとえば、経営者交代、組織再編、M&A、グローバル展開、後継者育成などが挙げられます。

また、個人のリーダーが壁にぶつかり、成長のための次のステージに向かう必要があるときにも有効です。変化が激しい現代において、リーダーが自らの価値観や意思決定のあり方を振り返り、次なるアクションを考える機会は貴重です。

どんな人が対象?部長?経営層?それとも若手?

エグゼクティブ・コーチングの対象となるのは、主に経営層や幹部クラスのリーダーたちです。ただし、次世代リーダーや海外展開を担う若手のミドル層にも導入される場合もあります。

対象を限定するのではなく、「影響力を持つ立場にあり、変化と向き合うことが求められている人」に広く応用できるのが特徴です。

エグゼクティブコーチってどんな人?

エグゼクティブコーチは、一般的なライフコーチやキャリアコーチとは異なり、経営視点と人間理解の両面に長けたプロフェッショナルです。

多くの場合、企業でのマネジメント経験や専門機関での認定(たとえば国際コーチ連盟=ICFの認定など)を持っています。さらに、心理学や組織行動論、異文化理解などの専門知識も有しており、単なる相談役ではなく、経営者に並走する信頼できる伴走者として機能します。

普通のコーチングとどう違う?

ジュニアコーチや初学者のコーチングと、エグゼクティブ向けのコーチングとの間には、大きな違いがあります。前者は構造化された手法や型に基づく支援が多い一方で、エグゼクティブ・コーチングでは、より自由度が高く、文脈依存の複雑なテーマを扱います。

また、対象者が高い責任と広範な影響力を持つため、コーチには、単なるテクニックではなく、高度な思考力と感情知性(EQ)が求められます。

そのため、エグゼクティブコーチには、コーチング経験に加え、成熟した人間力と状況対応力が期待されます。

AIコーチと何が違うの?

近年はAIを用いたコーチングツールも登場していますが、エグゼクティブ・コーチングとは大きく異なる性質を持ちます。AIコーチは、主に定型的な対話やセルフリフレクションの支援に長けていますが、クライアントの文脈や感情の機微に対応することはまだ難しい段階です。

一方、エグゼクティブコーチは、非言語的な反応や組織の力学、文化的な背景を含めた高度な「関係性の読み解き」を行うことができます。

そのため、変化を必要とするリーダーにとっては、やはり「人との深い対話」が不可欠であり、現時点ではAIはその補助的な役割にとどまることが多いのです。

ゴール設定はどうやる?何を目指す?

エグゼクティブ・コーチングでは、開始時のゴール設定が成功の鍵を握ります。目標は多層的に設定されるのが一般的で、短期的な成果目標(例:会議での発言頻度向上)から、中期的な行動の変容(例:チーム・パフォーマンスの向上)、さらには長期的な価値観やリーダーシップスタイルの変化(例:“支配”型から“共創”型への転換)などさまざまです。

また、上司や人事との三者面談で期待値のすり合わせを行い、目標に関する合意形成を図ることで、組織側との整合性も保ちます。

セッションの進め方と全体設計のヒント

多くのエグゼクティブ・コーチングは、明確な目標設定から始まり、定期的なセッションを通じて進行していきます。まずはクライアント自身と所属組織の期待を整理し、何を目的にコーチングを行うのかを言語化します。

次に、コーチとの相性確認を兼ねた導入セッションが行われ、信頼関係を築いた上で本格的なプログラムが始まります。プログラムは通常、半年から一年をかけて8〜12回のセッションで構成され、各セッションは60〜90分程度といったケースがよく見られます。

途中で中間レビューを行い、進捗の確認と必要に応じた軌道修正を行うこともあります。

セッションではどんな話をするの?

エグゼクティブ・コーチングのセッションでは、クライアントが直面している現実的な課題に基づいて、深い内省と行動変容を促す対話が行われます。

典型的なテーマには、意思決定のプロセスの見直し、組織文化との関係性、部下育成に関する悩み、役員会とのコミュニケーションのあり方などが含まれます。

また、個人の価値観やビジョンを再定義し、日々の行動にどう落とし込むかといった問いもよく扱われます。コーチは問いかけを通じてクライアントの視点を広げ、気づきを促し、自発的な行動につなげていきます。

360度フィードバックは効果があるか?

360度フィードバックは、コーチング初期または中盤に実施されることが多く、本人が自覚しづらい行動傾向や組織内での評価を可視化するために非常に有効です。

部下、上司、同僚などからの評価を匿名で集めることで、リーダー自身が持つ自己認識と他者からの見え方のギャップを明らかにします。

例えば、「意志が強い」と自認していたリーダーが、周囲からは「押しが強すぎて話を聞かない」と受け取られていたというケースもあります。

このようなフィードバックをもとに、本人が行動変容に取り組み、半年後には「聞く姿勢が増えた」と周囲の声が変わったという成果も報告されています。

リーダーシップ開発の中での役割とは?

エグゼクティブ・コーチングは、リーダーシップ開発の一環として導入されることが多く、特に他の施策(研修・アセスメント・OJTなど)との連動が鍵を握ります。

たとえば、アセスメントで明らかになった課題に対して、コーチングで個別支援を行う、研修後に定着を図るための伴走支援を行う、というように補完的に活用されることもあります。

このようにコーチングをリーダー育成の中核に位置づけることで、個々の成長が組織全体の変革とリンクするようになります。

人事部はどう関わるべき?設計の工夫いろいろ

人事部門は、エグゼクティブ・コーチングの導入を成功させるために多くの工夫を行います。まずは対象者の選定と動機づけが重要で、強制ではなく「自ら受けたい」と感じてもらう設計が不可欠です。

そのためには、制度としての位置づけや上司からのメッセージの出し方、初期面談の設計に細かな配慮が必要です。また、目標設定の共有や進捗確認、中間レビューを通じて、適切にフォローアップすることで、導入効果の最大化と継続的な改善を図ることができます。

まとめ:今、エグゼクティブ・コーチングを考える意味

エグゼクティブ・コーチングは、リーダーの成長を通じて組織に変化と成果をもたらす強力な手段です。ただし、その導入と運用には慎重な設計が求められます。

目的を明確にし、適切な進行方法を選び、信頼できる関係性を築きながら進めることで、コーチングの真価は最大限に引き出されます。

変化の時代においてこそ、リーダーが立ち止まり、自分を見つめ直す時間と空間の重要性が増しています。エグゼクティブ・コーチングは、そうした内省と行動変容のプロセスを丁寧に支援する、未来志向のリーダー開発手法なのです。