コラム
2026.10.28(水) コラム
■【記事】認証がなくても、ムーブメントには参加できる ― B Corp 10周年イベントから
サステナビリティ事業推進室長の千葉達也です。
2026年10月5日(月)、東京・竹橋の一橋講堂で「B Corp 100 Collective Japan -100の「挑戦」が紡ぐ未来-」が開催されました。B Corpムーブメント日本10周年、そして日本に本拠地を置くB Corpが100社に到達したことを記念するイベントで、当日は国内外のB Corp 60社が集まりました。
会場のあちこちで聞こえてきたのは、「ここから、どう広げていくか」という問いです。100社は大きな節目ですが、ゴールではありません。今回は当日のセッションから見えてきた「ムーブメントの広げ方」について、組織開発を専門とするPFCの視点から考えてみたいと思います。
【当日の様子:イベントレポート】

変化は「改善」からではなく、「選びたくなる選択肢」から始まる
トークセッション「Real change takes a movement ─ 認証からシステムチェンジへ」には、株式会社バリューブックス代表取締役・B Market Builder Japan共同代表の鳥居 希氏、B Corp認証取得支援コンサルタントの岡 望美氏、ファブリック株式会社 Founder・CEOのJames Hollow氏、ロクシタンジャポン サステナビリティ推進室室長の伊豆井 豪氏が登壇しました。テーマは、個社の取り組みを超えた「面のムーブメント」をどうつくるかです。
議論の中で繰り返し語られたのは、システムチェンジを起こすには、既存の仕組みを改善するだけでは足りないということです。新しい選択肢を示し、多くの人に「こちらのほうが魅力的だ」と感じてもらう。変化は、そこから広がっていきます。
この話を聞いて、はっとしました。私自身、無意識のうちに「今ある仕組みをどう改善するか」から考えることが多かったからです。
そして、この構図は企業の中でサステナビリティを進める現場にも、そのまま当てはまります。担当者が既存の業務に対して「ここを変えるべきだ」と提案すると、内容が正しくても「今のやり方で回っている」「負担が増える」と押し返されることは少なくありません。
組織開発の現場で私たちが見てきたのは、人の行動を変えるのは正論よりも「やってみたら、こちらのほうがよかった」という実感だということです。小さく始めて成果を見せ、共感した人が加わり、加わった人がまた次の人を呼ぶ。社会のシステムチェンジも、会社の中の変革も、変化が広がる仕組みは同じです。
PFCでも、B Corpの考え方を認証取得だけで終わらせず、社内外に広げる取り組みを続けています。社内では、B Corpについて知識として学ぶだけでなく、対話を通じて理解を深め、自分の言葉で語り、さらにクライアントとの対話につなげていくプロセスを進めています。
さらに2026年には、私たちが出版した『これからの「善い企業」の条件』をきっかけに、B Corp企業同士による自主的な勉強会も生まれました。PFCがすべてを主催するのではなく、共感した企業が自ら次の対話を始める。こうした動きに、ムーブメントが「広がる」とはどういうことなのか、その一つの形が見えてきています。
認証を取らない大企業は、何から始めればよいか
「B Corpには関心があるが、自社で認証を取るのはハードルが高い」。事業規模が大きく、組織も複雑な大企業では、そう感じている方も多いのではないでしょうか。その一つの答えを示していたのが、B Corp認証企業ではない株式会社LIXIL(以下、LIXIL)の取り組みです。
当日は、LIXILのインパクト戦略室室長であり、B Market Builder Japanのメンバーとしても活動するDave Mateo氏が登壇しました。LIXILは「Make Better Homes a Reality for Everyone, Everywhere」を掲げ、「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」の3領域でインパクト戦略を進めています。
注目したいのは、そのインパクトを自社だけで生み出そうとしていない点です。株式会社ヘラルボニーをはじめ、10社を超えるB Corpとの協業を通じて、エコシステムをつくろうとしています。例えば株式会社ヘラルボニーとの協業では、障害のあるアーティストが作成したデザインを壁材に採用するコラボレーションを実現しています。
ここから、認証を持たない企業がムーブメントに参加する入り口が見えてきます。私なりに整理すると、次の3つです。
- 協業する:自社の事業や技術と、B Corpの強みを組み合わせて新しい価値をつくる(LIXILの例)
- 取引で選ぶ:調達先やパートナーとしてB Corpを選び、その輪を広げる
- 知る:どのような企業が、どのような事業でインパクトを生み出しているかを知ることから始める
ただし、規模も文化も異なる企業同士の協業は簡単ではありません。私たちが組織開発の現場で見てきた限り、協業でつまずきやすいのは、技術や契約よりも「何のために一緒にやるのか」のすり合わせです。
PFCが、ここからやりたいこと
PFCは2023年1月にB Corp認証を取得しました。
その挑戦は2020年に始まり、社内で認証取得に向けたタスクフォースを募った際には、30人強の社員のうち13人が手を挙げました。参加の動機は、社会貢献への関心、自社を見直してみたいという思い、普段接点の少ない社員と一緒に何かをしてみたいという思いなど、さまざまでした。
振り返ると、B Corpへの挑戦は単に「認証を取るプロジェクト」ではありませんでした。自分たちはどのような会社でありたいのかを、それぞれの立場から考え、対話する機会でもあったのだと思います。
組織開発・人材開発を専門とするPFCだからこそできるのは、企業と企業、そしてその中で働く人と人が出会い、立場や組織の違いを超えて対話し、協働できる場をつくることだと考えています。
その取り組みは、すでに始まっています。『これからの「善い企業」の条件』を題材にした対話型読書会では、参加者から「1企業の枠を超えて、お互いに励まし合い、応援し合う動きにつながったら」という声も生まれています。
今後も、認証企業だけで閉じるのではなく、B Corpの考え方に関心を持つ企業も含めて、それぞれの実践や悩みを持ち寄り、次の協働が生まれる場をつくっていきたいと考えています。
今回のイベントでは、日本に拠点を置くB Corpの事業や想いを紹介する「B Corpカタログ」もお披露目されました。2026年9月末までに認証を取得した107社の協力で制作されたものです。B Corpに関心をお持ちの方は、まずはこのカタログから、仲間になりうる企業を探してみてはいかがでしょうか。
千葉 達也(ちば たつや)
株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング
サステナビリティ事業推進室長
