コラム

2022.01.27(木) コラム

なぜダイバーシティだけでは不十分なのか? ~ダイバーシティからダイバーシティ&インクルージョンそしてエクイティへ

進化するダイバーシティの取組み

 ダイバーシティ(多様性)が企業の競争力維持に欠かせないと言われるようになって20年以上経ちました。創造性の向上、働き手の確保、リスクマネジメントなどにつながるダイバーシティはいまや企業の持続的競争力に欠かせないと認知されるようになりました。

 東京取引証券所が2015年に策定したコーポレートガバナンス・コードにも「女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保」が挙げられました。さらに、2021年のコード改訂では、「管理職などの中核人財における多様性の確保とその情報開示」が追加されています。ダイバーシティ推進に「取り組むか、取り組まないか」を問う時代は終わり、今は「いかに早く効果的にダイバーシティを確保するか」が重要な経営課題となっているのです。

「インクルージョン」と「エクイティ」まで踏み込む

 ダイバーシティによる競争力向上に必要なのは「インクルージョン(包摂性)」の考え方です。さらに、欧米などのグローバル企業の間では、加えて「エクイティ(公正さ)」も必要だと考えられるようになり、「DEI(Diversity, Equity, and Inclusion)」を掲げるところがこの1,2年で急増しました。

 なぜ、ダイバーシティだけでは足りないのでしょうか?

 インクルージョンとエクイティとはどういうことなのしょうか?

インクルージョンとは:夕方の会議が子育て中の社員を排除する

 まず、インクルージョン(包摂性)とはどういうことか、考えてみましょう。

 たとえば、女性従業員比率が3割を超えている企業は、「当社はダイバーシティを確保できています」と言えることでしょう。しかし、その女性従業員たちが補助的な業務にしか携わっていなかったとしたら、その企業の経営には参画できていません。つまり、中核人財とは見なされておらず、インクルージョンがなされていない状態と言えます。

 あるいは、ある子育て中の従業員が時短勤務をしていたとします。職場ではいつも夕方に重要な会議が開催されていて、その人がこの会議に参加できていないとしたら、疎外感を感じることでしょう。これもインクルージョンの欠如の例です。

 また、経験の浅い従業員が、会議等で発言すると、いつも聞き流されたり否定されたりしているというケースもインクルージョンの欠如の一例です。その人は職場において認められていないのだと寂しく感じることでしょう。

 このように、多様な人財がいたとしても、一人ひとりが組織への帰属意識を持ち、自分が認められているという感覚を持つことができなければ、潜在能力はおろか、持てる力を存分に発揮することすら難しくなります。インクルージョンの欠如によりダイバーシティの威力を発揮できないという状況に陥るのです。

 一方、インクルージョンができている職場、すなわちインクルーシブな職場では、全ての従業員が次のような気持ちを持っています。

  • 自分は認められ、尊重されている
  • 同僚とのつながりがあり、仲間意識を持てる
  • 持てる才能と活力を組織の成功のために存分に活用している
  • 組織の成功と共に自分も成長している

 このような状態が実現できれば、従業員エンゲージメントが高まり、個々の力が発揮されるのみならず、相互作用によって、チームワークや組織全体のケイパビリティも向上していくことでしょう。

エクイティとは:平等なだけでは不十分

 インクルージョンに加えてここ1、2年急増しているのがエクイティ(公正さ)の考え方です。

 ご存知のように、日本の各企業が女性活躍推進に取り組んできたにも関わらず、WEF (World Economic Forum)による国別ジェンダーランキングにおいて日本は121位(2021年時点)と惨憺たる状況です。また、米国においては黒人の社会的地位の向上が十分ではないことが問題視されています。こうした背景から、従来の取組みの有効性が疑問視されるようになりました。

 そこで出てきたのが、エクイティという概念です。この概念は、エクオリティ(Equality、平等さ)と対比するとわかりやすいでしょう。よく、男性幹部の方は「自分は女性を差別していない。性別に関係なく平等に扱っている」と言います。しかし、平等ではだめなのだというのがエクイティ(公正さ)の考え方です。

なぜならば、女性(やその他の組織における少数派の人たち)は、不利な条件のもとで働かざるを得ないことが多いからです。ハンディギャップを考慮せず平等に扱ったらどうなるでしょう?女性たちが十分なパフォーマンスを出せない、または出していることを認めてもらえない状況に追い込まれるのです。

「かけっこ」を想像してください。男女が同じスタート地点にいるのであれば、ヨーイドンで早くゴールにたどり着いた人を昇格させるというのは当然です。しかし、実態としては、下の右図のように、女性は様々なハンディギャップがあって男性より後方からスタートしているので、公正な競争になっていないのが現状です。

 女性の場合のハンディキャップの例としては容易に思いつくのは、家事や育児の負担が女性にかかりやすいといったことでしょう。その他にも「女性はこうあるべき」という社会の固定観念や、アンコンシャス・バイアス、ロールモデルの不在など様々あります。 

 こうしたハンディキャップを取り除くには、個人任せではなく、組織や組織のリーダーが積極的に関わっていかなければなりません。エクイティも、ダイバーシティ&インクルージョンを実現するために必要な条件なのです。


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