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「COP26とPFCの脱炭素戦略」 黒田由貴子

2021年11月13日、予定より1日遅れでCOP26 (第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が閉幕した。一昨日、これに現地で参加していたジャーナリストの方からその体験談を詳しく聞く機会があった。帰国直後だったこともあり、興奮冷めやらぬ様子で、会場内外の熱気にどれだけ圧倒されたかを語ってくれた。
特に開催国のイギリスは、EU離脱後に国際的主導権を発揮する千載一遇のチャンスだと、官民あげて相当な力の入れようだったという。たとえばBBCは、オリンピック並みの報道体制を組み、連日連夜、会議や市民活動の様子を放映していたそうだ。

特に印象的だったのは、気温上昇1.5度までのコミットメントと脱化石燃料の動きの2点とのことだ。2015年のパリ協定では、気温上昇を2度以内に抑えることが合意され、1.5度は努力目標という位置づけであったが、その後のIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の研究調査により、1.5度と2度では大きな違いがあることが判明し、目指すべきは1.5度以内であることがコンセンサスとして強調されていたという。脱化石燃料の動きについては言うまでもない。

そうした状況下、岸田首相による演説はまったくもって的外れだったという。1.5度への言及がなかったのと、アンモニア等による石炭火力発電で貢献すると言ったからだ。そのジャーナリストの言い回しをそのまま使うと、「途上国ならまだしも、先進国たる日本が石炭火力の維持を唱えたとは。それも『どや顔』で。『いったい、どの口がそれを言う?!』と思った。各国の反応も『この人、何言ってるの?』という感じだった」

アンモニア活用による石炭火力発電の是非について論じるほどの技術的知識を私は持ち合わせていないので、これに関するコメントは控えるが、温暖化対策に向けて世界の動きが加速化している中、日本が取り残されていくことへの危惧は強く感じる。多くの企業経営者も同様だろう。中には、日本の環境対策は世界的にも優れていると主張する高齢の元経営者もいるが、それは昭和までの話であり、もはや錯覚である。たとえば、COP26でも、複数の環境NGOが行った各国の気候変動対策の評価によると、日本は61か国中45位だった。

その日本でも、多くの企業は、脱炭素宣言をしているが、たいていはその期限を2050年あたりにしており、現経営陣が責任をもって行う立て付けにはなっていない。しかし、今朝の日経新聞の報道には少し勇気づけられた。同社調査対象企業のうち、43社が2030年代までに脱炭素実現を宣言しているという。(もっとも気候変動問題の切迫度を考えれば、たった43社で喜んでいる場合ではないが。)

翻って我が社といえば、多くの二酸化炭素を排出するような業種でもないので、これまではあまり当事者意識もなく、対策といえば紙のリサイクリング程度のことしかしてこなかった。しかし、今年、Bコープ認証を目指すことになったことをきっかけに、「環境分科会」なるものが組成され、電気、ガス、水道、廃棄物などのデータを精査し、このたび削減目標が打ち立てられた。電気は再生エネルギーに変え、ガスの使用は止めることで、スコープ1と2のレベルにおいて、概ね「脱炭素」が来年にも実現できる。

また、我が社の年度は1~12月で、もうすぐ、各社員が来年の個人目標を検討し始める頃だが、今後は、それぞれが、通常業務に加え、環境と社会に対しどう貢献するかの目標も設定することになった。ちなみに、私の今年の個人目標は、「週に1度はベジタリアン」というものだ。畜産業は環境への影響が大きいし、牛のゲップは、二酸化炭素より25倍の温室化効果があるメタンを排出するとされているからだ。私は無類の動物好きで、アニマルウェルフェアという観点からも、肉食を減らしたいと思っている。

同様の理由から、かのポール・マッカトニーは「ミートフリーマンデー運動」(月曜日は肉を食べない運動)を2009年から呼び掛けている。
正直いうと、今年度は、私の目標達成度合いはあまり高くなく、実績は2週に1回くらいになっている。来年度こそは、この目標を完遂したい。我もと思う人がいれば、是非、一緒に頑張りましょう。