Web版 組織開発ハンドブック

2022.06.03(金)組織開発

エグゼクティブ・コーチング

エグゼクティブコーチングは70%で採用されている

 エグゼクティブ・コーチングは、経営層や次世代幹部層に対し、外部のプロフェッショナルコーチが定期的に個別のコーチングを行うことによって、エグゼクティブのリーダーシップ強化、ひいては経営戦略実現を支援する手法である。

 エグゼクティブ・コーチングは、フォーチュン500社のうち70%で採用されているというデータもあるほど(The Hay Group 調べ)、欧米を中心に多くの企業で取り入れられていいる。

 エグゼクティブ・コーチは、客観的な立場でフィードバックを行ったり、 エグゼクティブ自身の考えを聴きだすなど、エグゼクティブと共に考えながら、エグゼクティブが自らと組織の課題を認識し、 行動を起こすことを支援する。

トップ・エグゼクティブの孤独

 厳しい経済環境を乗り切るにはトップの強いリーダーシップが求められている。変化の激しい現在、過去の成功体験や経験則がすぐに有効でなくなることも多い。経営者は常に自己を振り返り、自己再生に努める必要がある。

 しかしながら、会社のトップ層になればなるほど、社内で心置きなく相談できる相手は限られてくる。社内といえども極秘の業務もあるし、極秘でなくても人や組織の課題については気軽に相談できない。つまり、自分を客観的に振り返る機会が圧倒的に減少するのだ。

 信頼できる外部のプロフェッショナルコーチは、エグゼクティブに対して客観的な立場でフィードバックを行うことができる。エグゼクティブにとってのコーチは、自らの思考や判断を映してくれる鏡のような存在とも言え、孤独な経営者にとっては組織の利害関係を超越した信頼できる相談者となりうるのである。

エグゼクティブ・コーチングの内容

 通常、エグゼクティブ・コーチが決まったカリキュラムを提示することはない。ビジネス上の課題もエグゼクティブの個人的課題も千差万別であるからだ。コーチングプログラムは、最初にエグゼクティブ個人と、何を目標とするかについて合意することから始まる。
コーチングで取り扱われる典型的なコーチング課題には次のようなものがある。

・VUCAの時代における経営方針、ビジョン創造
・ 戦略的思考や意思決定
・ リーダーの行動変容や変革推進
・イノベーションの促進
・ エンパワーメントな組織づくり、組織風土改革
・働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョンの促進
・次世代幹部育成のためのリーダーの効果的な関わり方(部下指導力強化)
・ 外国人相手のリーダーシップ(海外赴任先にて)
・日本と現地組織間のガバナンス、リスクマネジメント
・自己認識力と自己内省化

エグゼクティブ・コーチングとコンサルティングの違い

 エグゼクティブ・コーチングでは、コーチがコンサルタントのようにクライアントに代わって問題解決することはない。従って、エグゼクティブ・コーチが調査や分析や戦略立案をしてくれると期待してはいけない。あくまでも、エグゼクティブ自身が問題の解決をすることの後押しをするのが、エグゼクティブ・コーチングの目的である。クライアントの課題や目標を出発点とする点において、コンサルティングと類似しているが、エグゼクティブ・コーチングとコンサルティングは全く異なるものである。エグゼクティブ・コーチングの焦点はエグゼクティブの成長にあるから、従来の手法やサービスがなかなか触れることの出来なかった人間特有の領域に密接に触れていく。

エグゼクティブ・コーチの資質と選び方

 エグゼクティブ・コーチは、単なるコーチングのスキルや知識ではなく、ましてや資格や経歴ではない、職業人としての見識と人格と倫理を問われる存在である。そうでなければエグゼクティブが全幅の信頼を置いて相談できる相手たりえない。個人としての深い学びと組織の成功のために、慎重にかつ大胆にコーチを選ぶ必要がある。ただし、コーチはメンターとは異なるので、自分より「先輩」であったり「業界エキスパート」である必要は必ずしもない。

 エグゼクティブ・コーチを選ぶにあたっては、以上を念頭におきながらコーチを選び、先入観に囚われずに話をすることである。そのコーチは何を経験してきて、何のためにどのようなコーチングをしてくれるのか。どのような洞察力をもってエグゼクティブの世界をともに探索してくれるのか。そのためにどのような覚悟と約束をしてくれるのか。このようなことを探ってみよう。

 最後に、一番大事なことは、あなた自身が、自分の成長のために、コーチングに対してどのような覚悟と約束をできるのかを忘れないでいただきたい。