コラム

2026.05.21(木) コラム

■【記事】サステナビリティ経営時代のDEI②——企業が直面する4つの組織課題―インクルーシブな職場風土をどう醸成するか?

前回の記事では、サステナビリティ経営時代において、DEIを「継続的な組織開発」として捉える必要性がある背景として、日本企業が直面する4つの課題を整理しました。

1. 切迫する人材不足への対応
2.倫理・コンプライアンスといったリスク対応
3.イノベーションに向けた組織の硬直化
4.真のサステナビリティ経営を求める次世代人材の獲得

今回は4つの課題それぞれについて、PFCのDEI組織開発のノウハウ3点セットをご紹介します。

①ゴールとすべき職場風土の「あるべき姿」
② 取り組みにおいて外せない「DEI重点領域(取り組みのキモ)」
③ PFCが提供するソリューションの例

DEIの取り組みは、「研修やワークショップ」という形をとることが多くあります。ここでありがちなのが、参加者が「またダイバーシティの研修か!」と受け身になり“やらされ感”でいっぱいになってしまうことです。これだと組織開発としての効果が大きく損なわれてしまいます。一方で「話し合いそのものが楽しい」「気づきが多い」と、うまくいっている場合でも、ポジティブな体験がかえって取り組みの目的を曖昧にしてしまうことが少なくありません。

重要なのは、DEIへの風土変革が目的であることを見失わないこと、つまり「目指す組織のあるべき姿」を管理職やリーダー層、メンバーにどう訴求し続けるかです。以下、課題別に見ていきましょう。


課題1:人材不足への対応
ゴールは「異質人財」が中核人材になる組織

① ゴールとすべき職場風土の「あるべき姿」

人材不足に対応するためのDEI組織開発のゴールは明確です。国籍、年齢、性別、キャリア背景など、これまで傍流に置かれがちだった「異質人財」が、一過性ではなく継続的に中核人材として登用され、活躍できる状態を目指すことです。「多様な人材がいる」こと自体ではなく、多様な人材が「重要な仕事や意思決定に関わっている」、インクルージョンの実現がポイントになります。

② 取り組みにおいて外せない「DEI重点領域(取り組みのキモ)」

この状態を実現するためには、以下の2つの論点が避けて通れません。

  • 少数派に不利に働く、組織内バイアスの可視化とプロセス改善
  • エクイティ(公平性)を正しく理解し、現場で実践する力

評価、配置、育成、会議運営—―。一見中立に見える制度や慣行が、特定の人にだけ有利に働き、他の人を排除していないか。バイアスが機会の不平等につながっていないかを丁寧に点検することが、DEI組織開発の出発点になります。

③PFCが提供するソリューションの例

この課題に対するソリューションとして、次のようなプログラムを組み合わせるケースが多くあります。

  • 職場向けアンコンシャス・バイアスワークショップ
  • 異文化理解ワークショップ
  • 少数派人材向けリーダーシップ開発研修

ポイントは「少数派を変える」ことではなく、「組織風土や組織能力の方を進化させる」ことです。管理職やリーダー層のパフォーマンスマネジメント運用力、育成のスキル、ファシリテーションの力量が鍵となります。

御社では「異質な人材」が、どんな場面で・どこまで影響力を発揮できているでしょうか


課題2:リスクマネジメント
「不都合な真実」を包み隠さず話せる組織をつくる

① ゴールとすべき職場風土の「あるべき姿」

リスクマネジメントの観点での組織開発ゴールは、次のように表現できます。組織にとって耳の痛い「不都合な真実」についても、率直に話し合い、集団浅慮(グループシンク)を自ら回避できる組織であること。問題が起きたときに声を上げられるかではなく、起きる前に違和感を共有できる風土であるかが問われます。

② 取り組みにおいて外せない「DEI重点領域(取り組みのキモ)」

論点は主に2つです。

  • 少数派が声を上げられる仕組みが、一過性でなく機能し続ける風土があるか
  • いま流行りの「心理的安全性」の「誤解」を排除し、正しく理解・実践できる状態か

心理的安全性とは「やさしさ」や「ぬるさ」ではありません。ときに厳しい「率直さ」と「尊重」が両立している状態です。組織としてこれをどれだけ本気で追求できるかが分かれ目になります。

③PFCが提供するソリューションの例

このような課題に対するソリューションとしては、次のような取り組みがあります。

  • 管理職・リーダー層向けインクルーシブ・リーダーシップ強化
  • メンバー向けアサーティブ・コミュニケーション研修
  • 心理的安全性醸成のための実践スキル習得プログラム

トップや上層部がロールモデルであることは極めて重要です。しかしトップだけ、現場だけ、では風土は醸成されません。トップと現場の「両輪」、そして管理職やリーダー層を要としたあらゆる場面での実践が風土を育みます。

御社では「耳の痛いことでも言って大丈夫」という空気が、職場のあちこちで発生しているでしょうか。


課題3:組織の硬直化
コンフリクトから価値を生み出せるか

① ゴールとすべき職場風土の「あるべき姿」

ファシリテーション研修を行うと、実践演習のあとの振り返りで「自分たちはどうしても従来の考え方を踏襲してしまい、革新的な発想に欠ける」という気づきに至ることがままあります。組織は放っておくと硬直化するものです。ここでゴールとすべきは、異なる視点が健全に衝突しながら、チームとしてアウト・オブ・ボックス(これまでの常識の箱から飛び出す)思考法を実践できる状態です。

「波風は立たないが、新しいものも生まれない」――そんな組織からの脱却がテーマになります。

②取り組みにおいて外せない「DEI重点領域(取り組みのキモ)」

  • 間違った「コンセンサス偏重」を捨て、「コンフリクト(対立)」から結論を生み出す力
  • 過去の成功体験を手放し、アウト・オブ・ボックス思考を職場で試すチャレンジ行動の促進

対立や衝突を避けるのではなく、扱う力を育てる。ここにDEI組織開発の本質があります。

③ PFCが提供するソリューションの例

PFCではそのような課題に対して、以下のようなプログラムをご提供しています。「誰が正しいか」ではなく、「どう考え続けるか」に重心を移す支援です。

  • メンバーの思考力(問い・仮説)強化プログラム
  • 管理職・リーダー層の意識改革とファシリテーションスキル強化

御社の会議では、異なる意見が「歓迎される瞬間」はどれくらいありますか。そして、管理職やリーダー層は、高いファシリテーションスキルを有しているでしょうか。


課題4:次世代人材の獲得
「選ばれる企業」であり続けるために

① ゴールとすべき職場風土の「あるべき姿」

Z世代・ミレニアル世代の選別眼にかなう、ウォッシュ(見せかけだけのよい職場)でも「ゆるブラック(いわゆる「ブラック」ではないが、緩すぎて成長が望めない職場)」でもない組織風土の醸成です。理念と実態のズレは、最も早くこの世代に見抜かれます。

② 取り組みにおいて外せない「DEI重点領域(取り組みのキモ)」

エンゲージメント指標を「経営ダッシュボード」として活用できる力はあるでしょうか

  • 年齢にとらわれることなく育成・登用を実現する組織能力の実装

エンゲージメント調査を取ること自体が目的になっていないかが、分かれ道になります。

③ PFCが提供するソリューションの例

選ばれる企業であり続けるためには、エンゲージメント調査結果を使った職場単位の対話促進が欠かせません。

  • 管理職・リーダー層向け育成スキル強化(SLIIなど)
  • メンバー向けキャリア自律・セルフリーダーシップ強化

「育ててもらう組織」から「成長を支援しあう組織」への転換が鍵です。

御社の若手は、自社を「長く関わりたい組織」として語れるでしょうか。


まとめ

今回は、いま多くの企業が直面する4つの組織課題に対して、

①ゴールとすべき職場風土の「あるべき姿」
② 取り組みにおいて外せない「DEI重点領域(取り組みのキモ)」
③ PFCが提供するソリューションの例
を紹介しました。

継続的なDEI推進では、人事や推進室が風土改革/組織開発をどう設計するかが極めて重要です。今期・来期のDEIの課題設定や企画を検討されている皆様には、PFCのDEIディスカッションペーパー(サステナブルな経営に資するDEIとは?ーDEIは組織開発の時代へ)を進呈いたします。ディスカッションペーパーのお申込みはこちらから


次号サステナビリティ経営時代のDEI③はいよいよ最終回です企業のDEI推進が社会を変える、セオリーオブチェンジ(ToC)・モデルをご紹介します。


山田 奈緒子(やまだなおこ)
ピープルフォーカス・コンサルティング
取締役
グローバルな人事戦略構築の課題に直面する日本企業へのソリューション提案における第一人者。
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