お知らせ
2026.07.29(水) お知らせ
■【記事】多様性の時代に、異なる背景を持つ人たちが「共に働く」とは何か(代表取締役 松村卓朗)
先日、カナダ大使館で開催された「Welcome Japan」のイベントにて、「AIや分断の時代に、就労やキャリアをインクルーシブに再定義する」というテーマのパネルディスカッションに呼んでいただき参加しました。
今回このテーマでお声がけいただいた背景には、私たちがこれまで組織開発の現場で向き合ってきた問いがあります。それは、「異なる背景を持つ人達が共に働くとはどういうことか」という問いです。企業の現場では、採用の多様化は確実に進んでいます。しかしその一方で、「多様な人材が組織にいること」と「その人たちが組織で活躍していること」の間には、まだまだ大きなギャップがあると感じています。
外国人活躍のために、組織開発が貢献できることは非常に多い
近年、人手不足を背景に日本企業では外国人材の採用が急速に進んでいます。一方で現場では、採用された外国人の側は「意思疎通が難しい」「自由に気軽に発言することが許されない」と言い、採用した企業の側は「主体性がない」「積極的に自発的に動いてほしい」と言い、結果として外国人材が「定着しない」といった双方にとって望まない結果に結びついてしまうことも少なくありません。
しかし、こうした現象を注意深く見ていくと、必ずしも個人の能力や意欲の問題ではない場合が多いことに気づきます。むしろ問題は、「組織のあり方」にあることがほとんどです。従って、「外国人により一層活躍してもらうためには」という問題に対して、組織開発ができることは非常に多いと私たちは考えています。
なぜなら、組織開発とは、「目に見えない、組織の“当たり前”を変える」ことだからです。日本の組織には、言語化されていないものの、日本で生まれ育った日本人にとっては「当たり前」となっている共通理解が数多く存在します。空気を読むこと、暗黙の了解、事前の根回し、文脈で物事を理解すること。これらは日本人同士であれば非常に効率的に機能しますが、その前提を共有しない人にとっては「存在しないルール」と同じです。
その結果、本来は能力のある人材であっても、何をすればよいのか分からないまま関わりを控えてしまう。つまり「活躍できない」のではなく、そもそも「参加できない構造」の組織になってしまっているのが原因なのではないでしょうか。
外国人活躍が問いかける「組織の変化」
だからこそ重要なのは、「人を適応させること」ではなく、「組織の前提を見える化すること」です。目的は何か、役割は何か、どのような期待があるのか。それらを明確にし、対話を通じてすり合わせていくことが必要になります。
これは、外国人材に限った話ではありません。
こうした変化は、結果として組織全体の透明性や学習力を高め、より健全な組織運営につながっていきます。また、多様性はしばしば「衝突の原因」として語られますが、本来はそうではありません。
違いがあるからこそ見える問いや違和感は、組織にとって新しい視点や変革のきっかけになります。
問題は「違いがあること」ではなく、「違いをどう扱うか」なのだと思います。
日本人のようにふるまうことを求めてはいけない
(パネルディスカッションで共有したPFCの知見・経験1)
今回のパネルディスカッションでは、ファシリテーターを務めたCultural Diversity推進協会の龔さんから、まず「日本企業に採用された外国人が活躍できないのはなぜか」と問いかけられましたので、次のような話をしました。
10年ほど前の出来事ですが、「日本企業に採用してもらえたので嬉しい」と喜んでいたアジアからの留学生のAさん。日本の大学院に学び、卒業したばかりでした。「なぜ日本企業に採用されたと思うか、就職活動中の後輩たちにアドバイスしてほしい。」とお願いしたところ、「自分は日本人になれます!日本語もこのように流暢に話せるし、どんな仕事も嫌がらずに引き受ける。飲み会も大好きだし、カラオケだって歌える。」とアピールしたと言うのです。
そう話すのを聞いて、私はとても悲しくなりました。
採用する際に「日本人になれ」というメッセージを暗に発信してしまっているのだと思いました。日本企業の組織のあり方にこそ、課題があると強く感じました。
採用のみならず、現場で働くマネジャー達の悩みを聞いていても、同じように感じる場面は少なくありません。人事評価の考課者トレーニングを提供したところ、「部下に外国人がいる。外国人の部下をこれまで持ったことがないので、どう評価したらよいか分からない。アドバイスをくれないか。」と言うのです。
「会社の人事制度をもう一度読み直してみてください。」と私はシンプルにアドバイスしました。
と言うのも、この会社の人事制度には、外国人はこう評価するのだ、などとはどこにも書いていないからです。あくまでも“仕事の成果”で評価するとしか書いていない。
このことは、一緒に働く外国人だけに当てはまることではありません。
「時短で働くワーキングママやパパをどう評価すればよいか分からない。」という相談もよく受けます。
これもまた、時短で働く人はこう評価すべしなどとは、どこにも書いていない。あくまでも“仕事の成果”で評価するというのが原理原則なのです。
自分とは異なる背景の人や、これまでの働き方とは異なる働き方の人と一緒に働くようになったときに、色々と余計な要素が頭にもたげて、混乱が起きるようです。
マジョリティはマイノリティ体験をすると気づきが起きる
(パネルディスカッションで共有したPFCの知見・経験2)
また、最後に、ファシリテーターの龔さんからは「マジョリティである日本人が、マイノリティである外国人の状況や気持ちに気づくためにどうすればよいか。」という質問もいただきました。私は「ずっとマジョリティで生きてきた人にはマイノリティとなった体験が少ない。マイノリティ体験することが有効ですね。」とお答えしました。
パネルディスカッションから降壇した後は、何人かの方が話しかけに来てくれて、「マイノリティ体験をすることというのが刺さった」と感想を共有してくれました。その方たちには、PFCにはマイノリティ体験ができるゲームもあるというお話もしました。
そのゲームは、カードを選んで自分自身の状況設定を確認するところから始まります。私が参加したときの私の状況設定のカードは、次のようなものでした。
「中東の〇国で生まれて、現在欧州の〇国に住んでいる。大学は卒業していなくて、エンジニアとして働いている。生物学上の性は女性だが、トランスジェンダー」。
通常、ゲームというものは同じスタートラインから始まるものですが、スタート地点がマイナスだったことに衝撃を覚えた、ということなどをお話ししました。
分断を統合する体験としてのアート
今回のイベントでは、パネルディスカッションの前に非常に印象的なセッション(Welcome Japan CXO Council)がありました。アメリカから来日されたDr. Max(ARTLUTION代表)によるファシリテーションのもと、参加者全員で「世界の分断と統合」をテーマにアートを制作するワークです。
まず最初に、「分断」をテーマに、頭に浮かんだイメージを一人ひとりが絵や文字で自由に表現。そして一人ひとりが描いたものをボードに貼り付けていきます。各人の表現が一つの作品として統合されていきました。

そこには、それぞれの立場や経験から生まれた、多様で時に対立するような表現が並びました。一見バラバラだったものが、重なり、つながり、新たな意味を持ち始める。そのプロセス自体が、とても象徴的でした。
個々の違いが消えるわけではありません。
むしろ違いはそのまま残りながら、全体として一つのストーリーを形づくっていくのです。
組織もまた「統合されるプロセス」である
パネルディスカッションが終わって、ホールに出てきてとても驚きました。
パネルディスカッションを行っている間に、Dr. Maxが、先ほどみんなで描いたボードを一つのアート作品に仕上げてくれていたからです。
「通常は一日かかるところ、今日は2時間で創りあげた!」と言っていました。

この体験を通じて感じたのは、「統合」とは均一ではない、人によってイメージが違うということでした。違いを揃えることではなく、違いを持ったまま関係性の中で意味を生み出していくこと。それが、組織におけるインクルージョンの本質に近いのではないかと思います。
企業における多様性も同じです。
単に多様な人を集めるだけでは、価値は生まれません。
違いを前提として受け入れ、それを対話によってつなぎ、意味ある形にしていく。そのプロセスこそが重要です。
外国人材の活躍推進は、単なる人手不足対策ではなく、組織の前提を問い直す機会です。
そして同時に、異なるものをどう統合していくかという、より本質的なテーマと向き合う機会でもあります。違いを揃えるのではなく、統合する力がこれからの組織に求められているのではないでしょうか。
第2回 Bar CDI @PFCのお知らせ
来たる8月20日(木)18:30~20:30の予定で、弊社にて、Cultural Diversity推進協会開催のトークイベント「Bar CDI」を「開店」します。参加ご希望の方は、Cultural Diversity推進協会の案内に従い、Peatixでこちらからお申し込みください。
第1回Bar CDI(4月24日開催)では、日本企業で働く外国籍リーダーの経験を通じて、職場で直面した壁や、キャリアを築くうえでの工夫など、「外国籍人材本人から見た職場のリアル」を取り上げました。
第2回では、そこから一歩進めて、視点を個人から組織へと広げたいと考えています。
外国籍人材を採用する企業が増える一方で、採用後の定着や活躍、管理職への登用、多文化チームのマネジメントについては、依然として多くの企業が課題を抱えています。こうした課題を、外国籍社員本人の日本語力や適応力だけの問題として捉えるのではなく、企業の制度、マネジメント、コミュニケーション、組織文化の問題として考えます。
わたくし松村卓朗やMichael Grazer(PFCプリンシパル・コンサルタント)、株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)の人事マネジャー村上あすか様がパネラーとなって話題を提供し、参加者の皆様とカジュアルな対話を行う予定です。
仕事帰りにふらっとBarに立ち寄る感じでお気軽にご参加ください。

松村卓朗
ピープルフォーカス・コンサルティング
代表取締役
プロフィールはこちら
