コラム
2025.06.02(月) コラム
サステナビリティ認証が企業にもたらす未来:善い会社を考えるきっかけに

サステナビリティ認証の提出を求める企業の増加
サステナビリティ事業推進室長の千葉達也です。昨年末から、クライアントとの契約締結時に、EcovadisやSBTi(Science Based Targets initiative)などのサステナビリティ認証を求められるケースが増えています 。特に欧州の外資系企業では、特法法規制(例:EUのCSRDやCSDDD)の強化により必須とされ、取引継続の前提条件となる傾向が強まっています。これは、社会全体がサステナビリティを重視する方向に進んでいることの1つの証であり、対応が遅れると将来的にビジネス機会を失ってしまうリスクもあります。逆に言えば、早期に取り組むことで新たなビジネスチャンスを掴むことも可能です。
認証取得が人や組織が変わるきっかけに
PFC(ピープルフォーカス・コンサルティング)は、エコバディスやSBTiの取得は現在取り組み中ですが、これらにさきがけて最も審査が厳しいとされるB Corp認証を2022年に取得しています。B Corp認証は、企業の取得には厳格な基準(80点以上)を満たす必要があり、最初のアセスメントを受けた時は、基準を全く満たせず高い壁を感じました。ですが、そこから認証に向けたプロジェクトを立ち上げ、全社員が一丸となって取り組んだ結果、1年後には認証を取得することが出来ました。
振返ると、この時に労働環境や環境方針を見直し整理できたことは、現在や未来に向けての経営や社内環境の整備、そして今後の様々な認証取得に向けた礎になっていると感じます。
「善い会社」とは何かを問い直す:サステナビリティ認証を超えて
このような認証取得に関する問い合わせは、読者の皆さんの会社にも届いているかもしれません。しかし、あわてて依頼に応じるだけでなく、これを機に「善い会社とは何か」について議論し、パーパスに基づいた取り組みを主体的に進めることが重要です。
サステナビリティ認証の取得は、単なる取引条件の一部ではなく、企業の社会的責任を果たすための重要なスタート地点です。認証を通じて企業の信頼性が高まり、取引先や投資家からの評価も向上します。また、認証取得に向けたプロセスは、社内の意識改革や業務改善を促し、長期的な競争力の強化にもつながります。
何から取り組めばよいか迷う場合、まずはB Corpの設問 を参考にしながら「自社にとって善い会社とは何か」をまずは議論することをお勧めします。(図参照)現行基準および今年4月大幅なアップデートがされた新基準は今の時代に必要とされる内容を網羅しており、認証を取得しなくても設問への対応を検討することは企業が持続的に成長していく上での様々な示唆が得られるはずです。

変化の時代に問われる企業の姿勢:パーパスに立ち戻る
PFCでは、B Corpに関する内容を伝える多摩大学大学院の講座『21世紀の「善い企業」の条件』も担当しています。毎回、講師の側にも様々な気付きや発見がありますが、最近、大企業に勤める受講者の方からこんなコメントがありました。
「私は環境問題を担当していますが、講座を受ける前にはリスクがありそうことには関わらない方が良いと考え避けていました。しかし、授業を通じて、目を背けて情報を把握しないことが後になってもっと大きなリスクに繋がることに気づき、リスクに向き合いどう対処するかが大事だと考えが変わりました」
目の前の損得だけでなく、自分の会社が社会にどう貢献すべきか、そのことが現在の事業にどうつながるのか、といった視点で考え、行動することが私たちひとりひとりに求められているのです。
第二次トランプ政権によるDEI(多様性・公平性・包括性)推進プログラムの廃止が話題となり、米国内の企業が追随して取り組みを縮小・廃止する動きも見られます。一方で、アップルのようにリスクをとって取り組みを継続することを表明する企業や、表面的な表現を変更しつつ本質的な取り組みは継続する企業もあります。他にも、これまで推進されてきた政策の揺り戻しで色んな変化が起きていますが、企業として目の前の動きに惑わされず、未来を見据える考えることが大事なのではないでしょうか。どれが良い悪いではなく、自社のパーパスに立ち戻り、持続可能な社会の実現のためとるべき方針を決断することが求められているのです。
時間と労力はかかりますが、その過程で得られる知見や経験が、必ずや企業の持続的成長を支える力となります。認証取得をひとつのきっかけに自社の社会的責任を見つめ直し、より善い未来に向けた一歩を踏み出しましょう。
参照:
B CorpムーブメントをグローバルとつなぐB Labオフィシャルパートナー
B Market Builder Japan(BMBJ):https://bcorporation.jp/
千葉 達也(ちば たつや)
株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング
サステナビリティ事業推進室長