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2024.05.01(水) お知らせ

■AIを活用して組織を変革するために必要な3つのアクションとは~ ATD TK24参加報告  

こんにちは、PFCシニア・コーディネーターの山口真宏です。
2024年2月にロサンゼルスで開催された組織開発・人材開発の国際カンファレンス「ATD TK(TechKnowledge)24」にPFCテクノロジーパートナーシップリードとして、マイケル・グレイザーと共に現地参加してきました。

今回の目玉はやはり「生成AI」。アメリカでは人材開発の世界でも、生成AIの活用が急速に広がりつつあります。 

BYODセッションで様々なサービスをその場で体験

このカンファレンスでは、多くのBOYD(Bring Your Own Device)ハンズオンセッションが用意されており、様々なテクノロジーサービスをその場で実際に触りながら、人材開発の最新潮流を体感することができました。 

今回は特にChatGPTをはじめとする生成AIツールの実践的な活用方法が数多く紹介されました。例えば、研修シナリオやロールプレイの会話作成、動画やマイクロラーニングのコンテンツの制作など、これまで手間と時間がかかっていた作業は、いまやAIを使って非常に短時間で簡単に行えるようになっています。これも、セッション内で自らのPCでサービスを試すことで威力を実感しました。 

リアルなAIアバターとのロールプレイ 

特に印象的だったのは、AIを活用した没入型の学習体験です。AIアバターを使ったロールプレイサービス「SkillGym」では、アバターに感情知能が組み込まれており、非言語的な手がかりの重要性も学習できるようになっています。 

SkillGymのデモでは、実際にAIアバターとの個別ロールプレイが披露されました。アバターの表情や声のトーンは非常にリアルで、まるで本物の人間と会話しているかのような感覚でした。アバターとの会話を通じて、相手の立場に立って考える力や、適切な言葉選びの重要性を体感的に学ぶことができます。ロールプレイ後には、アセスメント結果と改善のためのアドバイスが提供されます。 

AIとのロールプレイは、対面で人間と行うロールプレイに比べて心理的なハードルが低いのも魅力の一つです。アバターとの会話なら、失敗を恐れずにチャレンジできます。ユーザーはいつでも自分の好きな時間に、まるで筋肉を鍛えるトレーニングのように、ビジネス上の会話の練習ができるようになるのです。繰り返し何度も練習することで、自然と自信がついていくでしょう。 

数分間でプロ並みの映像が 

また、AIを使ったビデオコンテンツの作成方法も数多く紹介されました。「Synthesia」というサービスでは、数百ものアバターと150以上の言語が用意されており、テンプレートを使って、たったの数分間でプロ並みのビデオを作成できます。他の参加者からも、「これは実用レベルだ」という声が聞かれました。 

AIの重要性とリスク 

AIツールは、今後ますます重要になってくると思われます。AIを活用することで、従業員一人ひとりに合わせたきめ細やかな学習体験を提供できるようになります。 

一方で、アメリカではセキュリティリスクを考慮し、 AIツールの導入に慎重な企業も少なくありません。データの取り扱いやAIのブラックボックス問題など、まだ解決すべき点は多いのが現状です。 

AIツールを導入する際には、セキュリティとプライバシーへの配慮が欠かせません。データの取り扱いには細心の注意を払い、従業員のプライバシーを守る必要があります。また、AIに頼りすぎるのも禁物です。あくまでもAIはツールの一つであり、人間の判断を補助するものです。最終的な意思決定は、人間が行わなければなりません。 

AIの導入が進む企業と、そうでない企業の二極化は既に始まっています。今後、AIは単なる効率化ツールではなく、イノベーションを加速させ、組織の働き方そのものを変えていく存在になるでしょう。 

AIを活用して組織を変革するための3つのアクション 

「AIに何ができるか」ではなく、「AIを活用して組織をどう変革していくか」。そんな視点を持つことが、これからの人事リーダーには求められます。 

今回のATD TKへの参加から、我々は具体的に以下の3つのアクションが重要だと考えました。 

1. AIの活用を義務付ける:ただ推奨するだけでは、組織内でのAI活用は加速化されないでしょう。 

2. AI戦略を策定する:やみくもにAIを導入するのではなく、何のための投資なのかを明確にする必要があるしょう。 

3. 生産性と学習のバランスを取る: 新たな技術を使い始めるのに、最初は時間がかかりますが、得られる生産性は非常に高くなるでしょう。 

AIは、私たちから仕事を奪うのではなく、人間にしかできない創造的な活動により多くの時間を使えるようにしてくれます。生産性を上げつつ、学び続ける組織をどう作っていくか。それが、これからの人材開発担当者の大きな役割となるでしょう。 

AIの活用は、もはや避けては通れない潮流です。変化の波に乗り遅れないためにも、一歩踏み出す勇気を持つことが大切です。 

将来を予見して、いま何をすべきかを考えよう 

最後に、カンファレンス内で紹介された、ある事例を共有します。19世紀半ばのアメリカの実業家ピーター・クーパーは蒸気機関車を発明した人物ですが、彼が1853年にニューヨークでビルを建設した際に、当時まだ発明されていなかったエレベーターの専用シャフトスペースを設けました。世の中でエレベーターが発明されたのは、その4年後の1857年のことです。 

クーパーは、ニューヨークの建物の高さが増していることから、将来の技術革新を見越して、建物設計にエレベーターを取り入れる準備をしていたのです。私たちも、いまの自分たちの組織にとっての「エレベーター」は何なのかを考える必要があります。 

AIの活用は、組織変革を加速する力を持っています。一人ひとりがAIと向き合い、学び、実践していくことで、組織全体の変革につなげていくことができるでしょう。 

皆さんも、ぜひ自社でのAI活用を前向きに検討してみてください。未来は、すでにここにあるのです。 


このATD TK24の報告会をオンラインで開催します。報告会ではPFCからの参加したメンバーによるレポートに加えて、記事中でご紹介したSkillGymのデモ(英語)も予定をしています。6月以降に開催予定ですが、詳細・お申し込み方法などは後日あらためてお知らせいたします(当初は5月末の開催としておりましたが、変更になっております)。


山口真宏(やまぐちまさひろ)
ピープルフォーカス・コンサルティング 
PFCテクノロジーパートナーシップリード 
シニア・コーディネーター