コラム

2023.01.19(木) コラム

「退職者は会社が嫌になったのではなく、上司が嫌になったから辞めるのだ」というのは本当か?(マイケル・グレイザー)

人はなぜ会社をやめるのか?

「人は会社から離れるのではなく、上司から離れるのだ」というフレーズを聞いたことがあると思います。ハーバード・ビジネスレビューの「To Retain Your Best Employees, Invest in Your Best Managers(最高の従業員をつなぎとめたければ最高のマネージャーに投資せよ)」)という記事は、ギャラップ社が調査を始めた2013年の時と同様、現在でもこのことが真実だと断言しています。

 この言い分は妥当ではありますが、すべてが真実だというわけではありません。ここで注意しなければならないのは、従業員の不本意な離職を、企業システム内の特定の人々だけの責任にし過ぎてはならないということです。

離職と組織的公正には強い関連がある

 組織的公正と従業員の定着(または離職)には強い関連性があることは、研究により示されています。以下はその3つの例です。

  • 1996年のJournal of Applied Psychology誌には「自分の組織が公正であると認識している従業員は、自分の仕事に満足する可能性が高く、会社を辞めることを考える可能性は低い」という研究が発表されてています。
  • 2009年にJournal of Business Ethicsに掲載された研究では「意思決定におけるプロセスや手続きの公正さを認識することが、従業員の定着率のカギを握るものである」ことが明らかになりました。この研究では、従業員が自分の職場が公平で公正だと感じている場合、仕事に満足する可能性が高く、会社を辞める可能性が低くなることも明らかになりました。
  • また、驚くことではありませんが、同じ2つの雑誌に掲載された他の研究でも、実際に受けた不当な扱いや不当だと感じられた扱いが、従業員の離職を左右することがわかっています。

 実生活でも、クライアントや同僚が、会社のことは好きだが、罵倒したり、不公平な扱いをしたりする上司にうんざりしている状況について愚痴るのを聞いたことがあります。彼らは、社内で人事担当者やオンブズマン、上位のリーダーなど、味方を探そうとします。しかし、これらの味方になるはずの人々は、従業員ではなく、マネージャーの味方をしがちです。その結果、従業員は、会社が正義を回復できない、あるいは回復する気がないと感じ、退職を決意するのです。

組織的な正義が低い職場で起きること

 さらに厄介なのは、職場で低い組織的正義にさらされたとき、人間がどうなるかということです。

 スタンフォード大学の研究者たちは、2015年に大規模な調査を行い、「組織的な正義が低いと、医師から病気だと診断される確率が約50%上昇する」ことを発見しました。彼らはまた、低い組織的正義が、メンタルの不調を感じたり、医師によって病気と診断されることに影響していることを研究しています。それはたばこの煙の害よりも大きいそうです。

 ちょっと考えてみてください。組織的公正が低い禁煙のオフィスで働くよりも、煙が充満していても組織的正義が高いオフィスで働く方が、より健康になる可能性が高いのです。 たしかに、従業員の定着率に関しては、管理職は重要な役割を担っていると言えます。しかし、経営者やその他のリーダーの役割が過小評価されないように注意しましょう。経営者やその他のリーダーは、自社のプロセスや職務慣行が従業員にとって公正であることを担保するための影響力と権限を持っているのです。会社に所属する人々が不健康だったら勝者はどこにもいないのです。

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マイケル・グレイザー
PFCシニア・コンサルタント
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