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2023.04.05(水) お知らせ

■ 『やりっぱなしにしない!』エンゲージメント・サーベイ結果を組織強化に繋げるには

エンゲージメント・サーベイをやりっぱなしにしていないか?

 エンゲージメント・サーベイをおこなう企業が増えている。ひと昔前に「従業員満足度調査」を行っていた企業で「これまでは満足度のスコアをとっていたけれども、これからはエンゲージメントですよね!」と嬉しそうに話してくれる人事担当者も増えた。
 しかし、エンゲージメント・サーベイを行ったはよいが、やりっぱなしになっている企業が少なくない。やりっぱなしになる理由として、サーベイ実施とサーベイ活用(即ち、エンゲージメント向上)の活動を完全に分けて考えている企業が多いことがあげられる。サーベイを行って結果が出た後で「サーベイ結果をどのように活用したらよいだろうか」という相談が明らかに増えているのもその証拠だ。あるいは、外資系企業では「グローバル本社から全世界で行うサーベイに日本も組み込まれた。結果を世界のスコアと比較できる、定点観測もできるというので見ていきたいのだが、どう見てどう活用すればよいか」という相談も増えている。せっかく行ったサーベイを積極的に活用したいというより、むしろ、サーベイ結果を突きつきられて困っている様子も見て取れる。

エンゲージメントとは何か/エンゲージメント・サーベイとは何を測るものか

 そもそもエンゲージメントとは何か、と問われたら、皆さんはどのように説明するだろうか。 エンゲージメントとは、一言でいうと「会社への愛着心(思い入れ)」だ。

 では、会社への愛着心とは、どのような要素で構成されるのか。法政大学大学院 政策創造研究科 教授・研究科長の石山恒貴氏は、著書『日本企業のタレントマネジメント』等で次のように定義している。

  1. ワーク・エンゲージメント:仕事に対する熱意がありモチベーションが高い状態
  2. 組織コミットメント:企業への満足度が高く愛着を持っている状態
  3. 職務への満足感:仕事内容そのものや職務環境に満足している状態

 要するに、ワーク(仕事)に熱意を持てて、組織にコミットできて、職務(仕事内容や職務環境)に満足できていてはじめて、エンゲージメントが高い状態を保てるということだ。

エンゲージメント・サーベイを活用する際の落とし穴と、サーベイ結果を組織強化につなげるポイント

 「エンゲージメント・サーベイを実施したはいいが、サーベイ結果をエンゲージメント向上になかなか繋げることができない」と頭を抱え、我々に相談してくる企業は少なくない。この様な悩みを抱える企業が陥っているよくある落とし穴は下記の3つだ。

1)会社(人事や経営企画)が分析するのみ
2)「エンゲージメント要因」と「制度や報酬等の要因」が混在するサーベイを紐解くための知識を管理職が有していない
3)管理職に組織開発を実践する知見や技術がない

 では、エンゲージメント・サーベイを実施して終わりにせず、上述の3つの落とし穴にも陥らずに、真に組織強化につなげるようにする為の具体的なポイントは何だろうか。

1)会社(人事や経営企画)が分析するのみ
➡チーム単位でサーベイ結果と向き合わせ、管理職がコントロールできることにフォーカスする

 サーベイ結果の活用にあたって多くの企業が陥りがちなのがこの罠だ。サーベイ結果に会社として取り組むのは良いが、人事や経営企画等が一生懸命分析しているだけという状況だ。この状況は、二つの意味で間違っている。

 ひとつ目は、サーベイ結果と真剣に向き合っているのが会社(人事や経営企画)のみであって、当事者たちには他人事になりやすいということだ。さらに、会社(人事や経営企画)が考えた解決策や施策を現場に押し付けるという結果を招きやすく、現場のやらされ感を助長しかねない。エンゲージメントとは双方向の約束だから、エンゲージメントのサーベイ結果と当事者が向き合わないと意味がない。
 また、調査結果の原因はや、スコア向上のための施策は、当事者がよく知っているはずだ。彼らが現実に向き合う材料を現場に渡すことが効果をもたらす。

 誤りの二つ目は、会社が分析するのでは、組織の対象が大きくなりすぎるという点だ。会社全体の、あるいは本部全体のスコアは〇点、昨年と比して、またはグローバルと比較して〇点アップ/ダウンということだけがクローズアップされがちになる。もちろん会社全体としての傾向を見る必要はあるが、チーム単位にブレイクダウンすることで当事者達が向き合うことが可能になる。

 従って、会社(人事や経営企画)がすべき重要な仕事は、決して自分達で分析を進めるのではなく、チーム単位にブレイクダウンしたサーベイ結果を用意し、チーム単位で向き合うのを促すことだ。サーベイ結果を活用してエンゲージメントが高まるようなやり方ができれば最高だ。

2)「エンゲージメント要因」と「制度や報酬等の要因」が混在するサーベイを紐解くための知識を管理職が有していない
➡管理職に思想も含めた正しい理解を促し、 自身のマネジメントへの活用を促す  

 エンゲージメントを高めるには、制度や報酬など、社員の努力では変えられない要因への不満を取り除くことも欠かせない。
 まず、エンゲージメント・サーベイと従業員満足度調査との本質的な違いに触れておこう。従業員満足度調査は、主として会社から与えられたものに従業員が満足しているかを確認するための調査だ。給与や福利厚生をはじめとして、与えられた環境や業務内容等、会社が用意した環境に満足しているかを把握するものだ。調査対象である、従業員満足度は、会社と社員の関係が決して双方向ではない。
 一方、エンゲージメント・サーベイでは、会社と社員の関係が双方向になる。
・会社が示す「自社が目指すもの」に社員が共感する
・社員が「自分に期待されること」を理解している
・社員が「自らが目指すもの」を理解している
・「会社から期待されていることを実現することが自らにどのようなメリットがあるか」を社員が理解している
 そのうえで、会社と自分が同じ方向を目指すことへの双方向の約束を交わす、いわば、会社と個人とが「婚約」を交わした状態がエンゲージメントなのだ。

 双方向の約束を測ることを目的としたエンゲージメント・サーベイだが、実際には「従業員満足度」で聞くべき設問が混在しているケースが多く、この場合は従業員から制度や報酬といったものへの不満が出がちだ。これらを混在させたままワークショップなどを実施すると、会社の制度や福利厚生に対する愚痴大会、会社の批判大会になってしまう。他責(会社が悪い)発言を生み出してしまう可能性もあり、エンゲージメントを高める為の話し合いのはずが、かえって組織と個人の距離を遠ざけることに繋がってしまうという笑えない状況に陥る。
 こうした状況を防ぐには、まずサーベイ結果を元に、制度や報酬など会社が対応すべきことと、エンゲージメント要因を中心に自身のマネジメントへの活用を促すことを明確に分けて示すことが求められる。

3)管理職に組織開発を実践する知見や技術がない
➡中間管理職に組織開発の知見と技術を授け、現場を巻き込み風土改革するファシリテーション力を 発揮させる

 チーム単位でサーベイ結果と向き合ってもらい、エンゲージメント向上の為に何ができるか、何をすべきかを考えてもらう際に、鍵となるのはチームリーダー(中間管理職)だ。チームリーダー(中間管理職)からよく聞かれるのはこんな声だ。
「エンゲージメントに関してメンバーと話したことがないので、議論をどの様に進めればよいか分からない」
「メンバーと対話しても、そもそも意見を引き出せるか不安だ」
「チームの中で今後どんなリーダーシップ行動をとればいいのだろうか?」。
 つまり「チームリーダーに任す」といわれても、サーベイ結果を題材にメンバーと対話する上での知識やスキルが不十分なままなので、やる気はあっても成果につながらない。組織開発の知見と技術をチームリーダー(中間管理職)に授けることが、サーベイ結果を組織強化へ繋げるためには肝要だ。

チームリーダー(中間管理職)が理解しておくべき組織開発の知見

 エンゲージメントサーベイの結果をもとにメンバーと対話するチームリーダーは、下記のような内容について知っておく必要がある。

  • チーム運営の基礎:エンゲージメントと組織強化の関連性等の理解促進など
  • 組織コミットメントの醸成(=ベクトルの浸透):パーパス(企業の存在意義)・ミッション(企業理念)・ビジョン(将来像)・バリューズ(価値観)の理解度や体現度をいかにして向上させるか
  • ワーク・エンゲージメント(=仕事のやりがい)の確保と向上の仕方:各人が、自身の志と組織のベクトルの重なりを理解し納得感を持って業務に取り組めているか、組織の成果と自身の成長がつながっているか(成長実感があるか)など
  • 職務への満足感:周囲に対して効果的なコミュニケーションを行い、活発な交流を促しつつ一体感を醸成する方法、心理的安全性を担保する環境の作り方、など

 もちろんファシリテーション・スキルも欠かせない。チームリーダー(中間管理職)にファシリテーションスキルを授けると、エンゲージメント向上のためのメンバーとの対話を引き出す手腕を発揮できるようになるばかりか、風土改革を現場を巻き込んで改善を効果的にすすめることができるようになる。

エンゲージメント・サーベイをやりっぱなしにしない!ウェビナーを開催します

PFCでは、エンゲージメント・サーベイを組織強化につなげるための様々な工夫や施策を、各企業様の状況やニーズに合わせて提供している。

5月12日開催のウェビナー「人的資本経営を加速させる エンゲージメント強化のための3つのポイント」でも、他社事例を含めた取組み等をご紹介予定だ。ご興味ご関心ある方はぜひご参加いただきたい。

エンゲージメント・サーベイと人的資本経営についてはこちら

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