コラム

2024.03.29(金) コラム

なぜ管理職はエンゲージメント調査を受け止められないのか?~調査結果を職場風土の向上に生かすには

20年前、上司が叫んだ。「これは星占いだ!」

まず、20年前のお話をしましょう。

私が、とある日本と欧州のジョイントベンチャー企業の人事企画で働いていたときのことです。欧州側のパートナーから、社員のコミットメントや職務満足度等のスコアを、新しい会社の経営指標にしようと提案があり今でいうエンゲージメント調査を導入することになりました。さすがヨーロッパ企業は戦略人事で先を行っている!と私の胸は躍っていました。

しかし、会社設立1年目の最初の日本の調査結果は、惨憺たるものでした。日本のエンゲージメントスコアは全世界のどの拠点と比べても低かったのです。調査概要や結果のハイライトを、部門トップたちを前に説明していた時のこと。ある部門ヘッドの顔がみるみるうちに真っ赤になって、こう叫んだのです。「人事はこんな星占いみたいなもので俺たちを評価するのか!」。

周囲の部門長たちも、(よくぞ言ってくれた)というような表情をしていました。

エンゲージメント調査は大企業のたしなみになった

あれから20年。人的資本経営の追い風を受けて、いまや多くの企業がエンゲージメント調査をどんどん導入しています。大企業では、実施して当然の人事慣行になりました。

「人事白書2021」では、パルスサーベイを「行っている」が18.9%、「今後行う予定である」が17.0%で、3社に1社の割合でパルスサーベイの実施を考えている状況だと紹介されました。
翌2022年のパーソルホールディングスの調査では、「定量的に計測している企業は全体の29.3%、超大手企業は42.0%」と綴られています。(エンゲージメントサーベイの歴史・市場 - 日本の人事部『プロネット』 (jinjibu.jp) 参照。)

最近は、大規模な組織でも簡単に調査ができるデジタルツールが日々誕生しており、エンゲージメント調査は今後ますます活用されていくでしょう。

しかし、もちろん調査すること自体が目的ではありません。調査結果を職場風土の改善に活かすにはどうしたらよいのでしょうか。

職場風土の改善には「組織開発」の視点

多くの企業が、調査結果を職場風土の向上に役立てるフェーズに入っていきます。そのために欠かせないのは「組織開発」の3つの視点です。

  1. エンゲージメント調査は組織長や管理職を評価する通信簿ではなく、組織の健康診断・定点観測だと位置づける
  2. 一発逆転の解決策導入!を目指すのではなく、職場組織で継続的な体質改善に取り組む
  3. 起きていることを単純な因果関係ではなく、複雑系として捉え、システム思考で臨む

管理職を傍観者にしない

とりわけ3点目の「複雑系として捉え、システム思考で臨む」は、組織開発の神髄です。複雑系のシステムを客観視して把握することは重要ですが、それだけはなく、自分自身をシステムの当事者として捉え、自分はどう影響しているのかを内省することが必要です。

とりわけ、周囲への影響力が大きい管理職は、最もこの内省をすべき一番の当事者です。たとえばこんなポジティブな状況を考えてみましょう。自身がすこぶる優秀で、そして管理職同士の結束も強く、一見、組織に何の問題もないような状況だとしても、調査結果のプラスの面だけをみて満足してはいけません。「社員が管理職に依存していないか?」「中途採用者が疎外感を感じていないか?」など、チャレンジ機会や権限委譲、インクルージョンの領域でマイナスの影響が出ていないかを考える必要があります。組織という構造の中で自分がどう影響しているか、影響しうるかを考え、プラスとマイナスのバランスが今どうなっているか?という観点を持つことがシステム思考です。

「星占いで評価されてたまるか!」と激怒する管理職はさすがにもういないでしょう。しかし、エンゲージメント向上と職場風土の改善が自分の職務で自分に責任があると認識している管理職はまだ多いとは言えません。

ではどうしたら管理職にエンゲージメント調査結果を自分ごと化してもらえるのでしょうか?管理職が傍観者側にまわってしまう「落とし穴」はいくつもあり、これに陥らないための処方箋が必要です。

次回の記事ではその落とし穴について詳しくご紹介します。


【関連サービス】
● 部下のいない管理職も仕事で活用できる、”1対1”のマネジメントコミュニケーションスキル
積極的傾聴スキル
アサーティブコミュニケーションスキル
1on1スキルコーチングスキル
キャリア開発の支援
● “1対多数”のマネジメントコミュニケーションスキル
チームマネジメントチームリーダーシップファシリテーションスキルインクルーシブリーダーシップ等)
● エンゲージメント調査の結果をもとにチーム効果性を調査し、チーム内で話し合う
「チーム効果性調査+チームリーダーシップ研修」
● 次世代経営リーダーの育成(課題形成、システム思考、変革リーダーシップ、戦略策定等)