コラム

2023.03.02(木) コラム

「人的資本経営を追い風にする!人事がすべき3つのこと」

 いよいよ今年 から人的資本情報の開示義務化がスタートします。投資家の非財務情報への着目は高まるばかり。サステナビリティ情報の開示も加速化しています。非上場企業や中小企業においても、人的資本経営は、顧客や労働市場へのアピールのためにもはや欠かせません。

 人材開発・組織開発のご担当者は、こういった情報開示の本質的な目的である、「人的資本経営」をどう実践するか、言い換えるならば、この追い風を受けて自社の人的資本をどう強化していくか、検討されていることでしょう。

 人的資本情報をKPIとして掲げたら、この活用方法を組織運営のプロセスに組み込まねばなりません。人的資本経営実践に向けて、PFCは次の3つを人事が行うことが鍵だと考えています。

1)経営ダッシュボードに組み込み、経営陣のコミットを促進する
2)実行責任を現場に課す
3)事業部の戦略人事機能(HRBP)を強化する   

人的資本経営に向けて人事が行うべきこと1)経営ダッシュボードに組み込み、経営陣のコミットを促進する

 御社の経営会議では、人材や組織に関するトピックはアジェンダに入っていますか?議論の時間は全体のどれぐらいでしょうか。

 人的資本経営であるからには、利益や売上といった事業関連の指標のみならず、人的資本情報が経営のダッシュボードに加えることが必要です。「経営ダッシュボード」とは、車のダッシュボードのように、経営判断において一覧すべきすべき重要なデータ群のことです。多くの企業が、ダイバーシティの推進度合い、社員のエンゲージメント状況、企業風土の状況、サクセション・プランの進捗といった指標を掲げています。経営会議の議題と討議時間もこれを反映すべきでしょう。

 最近お話しした人事ヘッドは、「プレジデントが経営会議で人事や風土に関する議題を話したがるので、毎回討議の準備という仕事が増えた」と嬉しい悲鳴を上げていらっしゃいました。効果的な討議によって、経営陣のコミットメントさらに引き出すことも人事ヘッドの役割といえましょう。

人的資本経営に向けて人事が行うべきこと2)実行責任を現場に課す

 人的資本のKPIを事業部レベルに下ろし、名実ともにその実行責任を現場に委譲した企業も多いことでしょう。

 特に、長年にわたり「優先順位の低い取り組み」という暗黙の汚名に甘んじてきたダイバーシティ推進は、この機に事業部や部のレベルでの実行促進を加速化すべきです。ある企業のダイバーシティ推進トップは、「KPIを事業部レベルに降ろしたことで、〝うちの会社は女性活躍はできている〟というのが単なる思い込みで、自部署では進んでないという現実に管理職が向き合うことになった。管理職候補の人材プールをどう作るか、そのために選抜研修をどう活用するか、という発想にようやくなってもらえた」とほくそ笑んでおられました。 エンゲージメント調査結果の活用も、この機に促進すべき施策の代表例です。社員のエンゲージメント・レベルが成果に連動する指標であることは、もはや一般常識になりつつあります。自部署のエンゲージメント調査結果に基づいて、管理職が人財育成や風土改革のアクションプランを策定できるようなることを目指すべきでしょう。

人的資本経営に向けて人事が行うべきこと3)事業部の戦略人事機能(HRBP)を強化する

 ダイバーシティやエンゲージメント・スコア等のKPIの実行責任が事業部になると、事業戦略と一体となった人事戦略を構想し、実行しなくてはなりません。事業部の戦略人事機能とは、事業部長のパートナーとして事業戦略に基づいた人事戦略構想し、人的資本強化の取組を策定し、現場を巻き込みながら実行するということです。自社にはこのようなHRBP(事業部人事)がいるでしょうか?

 人的資本経営におけるHRBPは、戦略構想力および人材開発・組織開発に関する知見を高めると共に、良き教育者であり、ファシリテーターである必要があります。先日、風土改革を推進中の企業で経営陣ワークショップを行いました。ある役員の方が「施策を粘り強く実行するとエンゲージメント調査の結果が変わる。やればよくなる手ごたえを得た」と仰ったので、ベストプラクティスを共有いただきました。今後は経営会議、そして事業部において、定期的にベストプラクティスから学びあい、称え合おうではないかということになりました。この会社では風土改革の一環で管理職にファシリテーション研修を展開していて、研修事務局の人事や研修担当の方々もたいへんスキルのあるファシリテーターです。エンゲージメント・スコアというKPIを基軸に、学習する組織への風土改革をファシリテーションできる体制を整えています。

 PFCでは今後、人的資本向上のためのハウ・ツーをウェビナー等で発信していきます。 今予定されているのは、パーパスの活用法、エンゲージメント調査活用法、管理職のチームビルディング・スキル強化策、若手社員のセルフリーダーシップ強化策等です。

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