コラム

2026.05.28(木) コラム

■【記事】コンテンツでは解決できない「プレゼンの問題」

プレゼンの内容は理解している。分析も終え、スライドも作り、会議の準備も万全だ。しかし、いざ発表すると何かがうまく伝わらない。途中から会場の空気が離れ、Q&Aは噛み合わず、本来ならすんなり承認されるはずの提案が、「次の四半期にまた検討しましょう」という結論に変わってしまう。

これはコンテンツの問題ではありません。
話し手は有能なプロフェッショナルであり、テーマを深く理解しています。問題は、「内容を知っていること」と「効果的に伝えること」がまったく別のスキルであるにもかかわらず、後者を磨くための時間を取っている人があまりにも少ない点にあります。

こうした場面は、日常的によく見かけます。理にかなったビジネスケースを提示しているのに、声の抑揚がなく、スライドを読み上げるだけで、最も重要なポイントで立ち止まることなく通り過ぎてしまう。結果として、フィードバックは分析内容ではなく、発表者本人に向けられます。

「分かりづらかった」「自信がなさそうだった」「結局、何を提案しているのか分からなかった」。


いったい何が起きているのでしょうか?

内容を理解しているのに伝わらないプレゼンターを観察すると、ほぼ例外なく共通の癖が見えてきます。

声のスピードと音量が終始一定で、すべてが同じ重要度に聞こえてしまう。その結果、何一つ重要に聞こえなってしまうのです。沈黙を恐れ、「えー」「その」「では次に」といった言葉で間を埋めてしまう場面も多く見られます。本来、「間(ポーズ)」はプレゼンターが使える最も強力なツールの一つですが、驚くほど活用されていません。

言葉と身体の動きが一致していないことも少なくありません。
体を固めたまま立つか、目的もなく歩き回る。視線が合わない、あるいは散漫で、誰一人として「自分に話しかけられている」と感じられない。頻繁にスライドを振り返る癖もよく見られますが、これは聴衆とのつながりを断ち、「自分はスライドがないと話せない」という無言のメッセージを送ってしまいます。これらの多くは無意識で行われているからこそ、改善されないまま残ります。

言葉遣いにも問題があります。
つなぎ言葉以上に厄介なのが、発表者自身が無意識のうちに信頼性を下げてしまう表現です。
「関係ないかもしれませんが」「専門家ではないのですが」といった前置きは、その典型例です。私はこれを「信用漏れ」と呼んでいます。書面の報告書に「これは関係ないかもしれません」と書く人はいません。しかし同じ人が、口頭では平気でそう言ってしまいます。

仮に発表本編がうまくいっても、Q&Aで全てが崩れることもあります。
最初の質問を聞き違え、別のことを答えてしまう。曖昧な言い回しで話が長くなり、質問者自身が何を聞いたのか分からなくなる。細かい論点に引きずり込まれ、元に戻れなくなる。あるいは難しい質問に固まり、核心を避けた答え方をしてしまい、「何か隠しているのでは」と思わせてしまう。

多くのプレゼンターにとって、信頼を失うのはQ&Aの場面です。知識がないからではなく、プレッシャー下で聴衆と向き合う方法を持っていないからです。

人材育成や学習開発に携わっている方であれば、すでに気づいているかもしれません。
これらの癖は、助言だけではなかなか直りません。「ゆっくり話しましょう」「もっと目を合わせましょう」と伝えれば、その場では納得します。しかし次のプレゼンでは、同じ癖が戻ってきます。

それは、プレゼンのデリバリーが知識ではなく、身体に染みついた習慣だからです。変化には、実践、具体的なフィードバック、そして何より自分自身を映像で見る経験が必要になります。


実際に練習すると何が変わるのか

あるクライアントが、リージョナル・リーダー向けの四半期提案を行うチームを見ていました。分析も提案内容も的確でした。しかし後日、彼女はこう話してくれました。
「話している様子を見ているうちに、私自身ですら、本当に彼らがその提案を信じているのか分からなくなりました」。

そこで、私がおこなったことはこうです。
スライドには一切手を加えませんでした。
焦点を当てたのは、デリバリーのみです。各自が短いパートを発表し、声・身体の使い方・言葉の癖について具体的なフィードバックを受け、その後、自分自身の姿を動画で確認しました。この最後のステップこそが、最も大きな変化を生む瞬間です。

多くの人が、自分の姿に本気で驚きます。
目を合わせているつもりだった人が、実際にはほとんどスクリーンを見ていたことに気づく。普通のスピードで話していると思っていた人が、すべてを駆け足で話していたと分かるといった具合です。動画は嘘をつきません。ただ、聴衆が実際に体験したものを、そのまま映し出したにすぎません。

Q&Aでの変化も明確でした。
落ち着いて要点を押さえながら質問に対応できるようになると、会場の信頼感は一気に高まります。難しい質問は、信頼を失う場面ではなく、むしろ信頼を積み上げる機会に変わります。

これらは、特別な才能やカリスマ性を必要とするものではありません。必要なのは、フィードバック付きの練習です。そして、それこそが多くのビジネスパーソンが、これまで経験してこなかったことなのです。


私たちはそのためのワークショップをつくりました

私たちはそのためのワークショップをつくりました
私たちは、日本およびグローバルで、経営層、クライアント、部門横断チームに向けてプレゼンを行うプロフェッショナルを対象に、1日完結のワークショップを実施しています。参加者の多くは、第二言語・第三言語として英語でプレゼンを行っており、その分デリバリーの重要性はさらに高まります。

参加者は実際に使用するプレゼンを持ち込み、1日の中で何度も発表を行います。構造化されたピアフィードバックを受け、自分自身の映像を確認します。また、構成やストーリー設計も強化したいチーム向けには、プレゼンデザインに特化した半日のプログラムも用意しています。
■【記事】なぜ優秀なチームほど、プレゼンがうまくいかないのか?成果を出すプレゼンの組み立て方とは | PFC
いずれのプログラムも、英語および日本語で提供しています。

もし、ここに書かれている状況が組織内で起きていると感じられるのであれば、こちらからマイケル・グレイザー宛にお問い合わせください。


マイケル・グレイザー(Michael Glazer)
ピープルフォーカス・コンサルティング
プリンシパル・コンサルタント
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