コラム

2000.09.02(土) コラム

GCEP:自組織を“越境”し、カンボジアでCxOとして働いた3ヶ月を振り返る(修了者インタビュー)

新興国での”越境”体験学習で価値観を揺さぶる

「グローバルリーダー育成施策の一環として、社員にグローバルな舞台での体験を積ませたい」。こうお考えの人材育成責任者・担当者の方は少なくありません。「グローバルリーダーとしての活躍を期待するには、自社の海外法人に送るだけでは足りない」という声もよく聞かれます。グローバルリーダーを目指す社員のみなさんに必要なのは「価値観が揺さぶられる」「目を見開かされるような新たな視座を得る」「リーダーとしての成長につながるハードシップ」などの体験です。

PFCではこのような声にダイレクトにお応えすべく、長らくGAIA(ガイア)リーダーの旅プログラムを提供してきました。GAIAリーダーの旅は、次世代のビジネスリーダーに求められる4つのリーダーシップ(G:グローバル・A :アンビデクストラス・I:イノベーティブ・A:オーセンティック)を新興国での“越境”体験学習を軸に身につける次世代リーダー育成プログラムです。

自組織からも”越境”するGCEP

さらに、グローバルな舞台で活躍できることに加えて、次世代経営を担うことが期待されるリーダーに対しては「自組織からも”越境”させたい」というご要望もいただくようになりました。異なる価値観の人たちを率いて、必ずしもこれまで培った自身の経験が生かせるとは限らない領域で、経営陣のひとりとして事業運営に関わる体験を積ませたい。そういった声に応えるべく生まれたのがGCEP(=Global Corporate Entrepreneurship Program)です。GCEPは海外のスタートアップベンチャーでの経営修行を中心としたプログラムで以下のような特長があります。

・グローバル:日本から離れたカンボジアという舞台での越境体験、ならびに若いグローバルチームを率いる経験ができる
・コーポレート:NPOではなくビジネスの現場、しかも、大企業ではなくスタートアップベンチャーでの経験が積める
・アントレプレナーシップ:インターンシップとはいえ、CxOとして赴き実際の事業に携わり、企画から開発、マーケティング、セールス、ファイナンスに至るまで一通りの責任を担う

GCEPでは、これまで働いてきた自組織と異なる環境で、自分と異なる価値観に触れながら、チーム運営や事業推進の新たな視点を体得します。また、これまで培ってきた自身のバックグラウンドが活かせない中で、どうすれば価値が出せるかを考え抜く体験を通じて、考え方・発想力や行動力をバージョンアップすることを狙いとしています。

カンボジアのテクノロジー・スタートアップ・ベンチャーでCXOとして働いた3ヶ月

カンボジアのAII(Asian Institute of Innovation:アジア・イノベーション大学)と提携して今年PFCが始めた新たなプログラム、GCEP(Global Corporate Entrepreneurship Program)。最初の派遣修了者のMさんにWelcome Back to Japanの慰労を兼ねてお会いし、インタビューをさせていただきました。

Mさんは、商社に勤めていて、CFO候補として近いうちに経営幹部となることが会社から期待されている人物。Mさんを派遣した企業は商社なので、経営幹部となるには海外赴任の経験を有することが暗黙の条件となっているのですが、財務バックグランドのMさんにはこれまでその機会がありませんでした。今回のGCEP参加で、海外のスタートアップベンチャーで経営幹部として関わる3ヶ月のプログラムの経験により、海外でのマネジメント経験に近いことが実践出来るという会社の思惑がありました。派遣した企業の経営陣からはとりわけ、これまで培ってきた経験が直接活かせない環境で、いかにして自身の価値を出せるかを日々考え抜く体験をさせてほしいと、このプログラムへリクエストされました。経営陣はまた、「どれだけの逆境をサバイブできたか」「どれほどレジリエンスを高められたか」といったことが、意義のあるプログラムだったか否かを測る評価指標だと徹底した言葉がありました。Mさんの将来にとっても、会社の未来にとっても重要な3ヶ月となる旅立ちとなったのです。

GCEPで海外派遣される前に行った国内でのプログラム(スタートアップベンチャーでCXOとして働くというのは、大企業でマネージャーとして働くのとは大きく異なるので、「アントレプレナーシップ」のマインドセットや方法論を学ぶことがメインテーマだった)を終えたMさんが、旅立ちの際に語っていたのは、「わずか3ヶ月だが、帰国の際には、関わり一緒に働いたスタートアップの仲間達から『帰らないでくれ』と言われることが私のビジョン」ということでした。

以下、カンボジアでの3ヶ月のGCEPから戻ってきたMさんへのインタビュー(一問一答)内容をご紹介します。

Q:日本から旅立つ直前には、「わずか3ヶ月だが、帰国の際に、関わり一緒に働いたスタートアップの仲間達から『帰らないでくれ』と言われることがビジョン」と語っていたが、そのビジョンは実現したか?

A:実現した。

自分が関わった3つのチームの皆がフェアウェルセッションで、「帰らないでくれ」と言ってくれた。

1つのチームのメンバーたちは、9月にシェムリアップのアンコールワットに自分を連れて行ってくれることを計画していたようで、「アンコールワットには一人で行ってきた。そもそも9月には日本に戻ってしまっている。」と伝えたら、とても残念がっていた。

また、あるチームは「自分たちが起業したら最初の出資者になってほしい」とも言ってくれた。

日本に戻っても、私は私が関わったどのスタートアップベンチャーとも引き続き関わっていきたい。もちろん自分ができるアドバイスや指導もしていきたいし、このまま起業し事業として運営されていくならば、個人的にでも投資をしたいとも考えている。

Q:GCEPから帰り、久しぶりに日本の職場に戻ってみて周囲の反応はどのようか?何か変化を感じるか?

A:自分の部下が意識の面で大きく変わった、自分がいない間に、自分がいないことで成長したと感じる。

私がいない3ヶ月の間、自分でやらざるを得ないことが多かったのだろう。そもそもカンボジアのPJルームには、私のスマホの電波が届かないので、よほど緊急でない限り電話に出ないことも、メールに返事しないことも少なくなかった。

Q:カンボジア滞在中、最も心に残ったことは?

A:貧困層が住む村である、トンレサップ湖のフローティングヴィレッジに行ったときに、政府が設立した学校で小学生が一生懸命英語を勉強している姿に目を奪われた。KIT(AIIはカンボジアでは引き続きキリロム工科大学の名称を使っている)のようなエリート達が集まる大学に、英語が堪能な人が集まるということなら分かるのだが、この国の裾野の広さに、このままでは日本は世界に置いていかれると危機感を抱いた。

Q:大学発のスタートアップベンチャービジネスに携わってきた中で、最も印象に残っているできごとは?Mさんが関わることでどのような変化があったか?

A:ビジネスモデルのコンペ(全国大会)に参加した際には大きな衝撃と刺激を受けた。大学生のチームが多く参加していたのだが、多くの大学の学生が、自分たちの為だけでなく、カンボジアの未来のためにビジネスモデルを考え、国の課題を解決しようとする姿勢には感動すら覚えた。

さらに、クメール語(カンボジアの公用語)ではなく、皆英語でプレゼン・質疑応答をしていた。

中には「カンボジア牛を和牛のようなブランド牛に育てる」という、コンペのテーマであるIT技術に関連すらしないものもあったが、審査員の指摘に臆することなくカンボジアの未来の為には必要なビジネスなのだと胸を張る姿には、若者達の勢いとともに、「国の将来の為に真に貢献したい」という強い想いが感じられた。

このコンペには私の関わったスタートアップ事業の2つも参加したが、地区の大会では2位になった事業も、全国大会では決勝(TOP8)に残れずその点は残念であった。

技術的なスキルや事業の完成度だけではなく、カンボジアにおいて「国の経済成長や課題解決への寄与」という大きなテーマからスタートし、強い想いをもってビジネスを進める覚悟が問われるのだと痛感した。

コンペに参加していたチームのメンバーやリーダーの7割程度が女性だったということも大変印象に残っている。

Q:コンペの結果は残念だったということだが、チームとの接し方には後悔はないか?

A:ない。

将来を担っていく若者たちが起こしたスタートアップベンチャービジネスなので、何より自分は、彼らの将来を常に考えて接した。例えば、ベンチャーにはスピードが求められるので、ビジネスの進捗を重視するべきという検討をしたこともあったが、私は「ここは大学という教育の場でもあるのだから、将来を担う彼らが学べるよう自発的な動きを尊重すべき」と自分が去った後のことを考えて指導した。

また、せっかく実際の起業家や経営者が審判となるコンペにも出場できるのだから、将来のエンジェル投資家へのプレゼンの練習にもなると考え、どういったことを投資家は見るのかという点からドキュメンテーション・スピーチ・ビジネスフィージビリティなど評価項目を設けて2チームのメンバーで互いに評価させることも行った。何が足りないか、どのようなところを改善するとより伝わりやすいかなどを学生たち自身に考えさせたことは、彼らの将来にとって、起業する時はもちろん、起業しなくてもビジネスにリアルに携わっていく時、例えば顧客開拓を進める際にも大いに役に立つと信じている。

Q:カンボジアという国自体への印象や思いは?

A:カンボジアでは、中国経済の停滞の影響を受けて、今後中国からの投資が減退する可能性がある。近年のカンボジアの発展は中国が支えていた面があるので、その影響で建設ラッシュは滞り、カンボジアのGDP成長は早晩失速するだろう。

しかし、そうなると、国の成長は、サービス業とIT産業、および第1次産業をどう効率化できるかにかかっている。いよいよ国内の若い起業家の出番だ。KITのような大学からのスタートアップベンチャーを活性化させる必要性がますます高まっている。

カンボジア国民の平均年齢は25歳。カンボジア人達が自立して国を運営していけることに貢献したいと私は常々思って接していたが、次に続く人にも、そうしてほしい。

Q:GCEPはどのような場と人に説明するか?経験者として、どのような人に勧めるか?

A:自分はGCEPでリーダーシップとマネジメントの両方を経験することができた。ビジネスを引っ張ることと、部下や後輩の育成をすることが求められる人には、誰でも集中してそれを鍛えることができる場だ、しかも英語で、と伝えたい。

これからマネジメントになる人が行くと、自身のスタイルを出しながら思うようにマネジメントできて、判断能力や上と下とのコミュニケーション能力が鍛えられる場だ。

さらに、大学発のスタートアップベンチャーなので、この国の将来を担う人達と接してその起業家精神から刺激を受けることも多い。日本では起業が難しいことでも、カンボジアではまだまだビジネスチャンスが潰れないでたくさんあることを実感できる。


将来に経営幹部になることが期待される方々には、自身が培ってきた能力の発揮に加え、安住域から越境する場で、CxOとして実際の事業推進経験を積むことが、大きな成長につながります。

GCEPでは、海外の大学発のスタートアップベンチャーの事業にリーダーとして携わりながら、「逆境をサバイブする」「レジリエンスを高める」といった実践ができる場を提供します。近い将来に経営幹部になることが期待される方々には、専門領域での能力発揮に加え、安住域から越境し、CXOとして事業推進経験を積む場が成長に有益です。

経営幹部育成にご関心ある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。