コラム
2023.05.01(月) コラム
ジョブ型、リスキリングに備える自律人材育成法 ~5段階で育むセルフ・リーダーシップ
「ジョブ型」は「役割の明確化」ではない
何をもってジョブ型と呼ぶべきか、定義をめぐる論争が続いています。とはいえ、日本の多くの企業にとってジョブ型へのシフトが不可欠であり、このシフトの過程において社員のキャリア自律や自律人材化が避けて通れない道であることは、組織・人材開発に携わるHRパーソンの共通認識といえるでしょう。
ジョブ型シフトの主たる目的は、年功序列の負の側面を排すること、すなわち、流動性を高めて社内労働市場をグローバル水準にさらすことによって、自社の人財の価値を高めることにあります。ところがこの目的が欠落した、ジョブ型=「役割の明確化」という短絡的な理解が組織にはびこると、「職務記述書に役割として定義されたこと以外はやらない」などという、なんとも消極的で時代に逆行する人材だらけになりかねません。「高い視座で自分の仕事を捉え、上司に提言するような次世代リーダー候補が減った」などという事態を招いてしまっては本末転倒です。
Z世代特有の落とし穴に注意!
ジョブ型へのシフトに加えて、リモートワークの普及も自律人材育成、セルフリーダーシップ開発を後押ししています。とりわけ若手社員の自律支援は、企業にとって業績を左右するほど重要な組織課題と位置づけられるようになりました。
人事担当のみなさんと若手社員に関するお話しをすると、次のようなZ世代特有の落とし穴が見えてきます。
- 転職サイトや友人とのネットワークにより、外部情報をよく参照している世代。「外資に就職した友達はもっと活躍しているのに」等、意欲の高さが転じて、自分の実力に目を向けないままの不満につながる。
- 「社会課題解決の仕事ができるから入社したのに」。企業の社会的価値への関心が高いのは大変よいことだが、将来の夢に固執しすぎて、目の前の成長課題に向きあった着実な努力がおろそかになる。
- 自分らしさを大切にしてきた世代。良い点の自己認識のみに集中し、上司や先輩からの改善点や成長課題に関するフィードバックがなかなか受け入れられない。
- 入社してからリモートワークが主流なので、組織構造や階層の活用法を体得しづらい。上司を味方につける、スポンサーシップを得るといった類のコミュニケーションや処世術は自然には身に付かない。
セルフ・リーダーシップの5段階モデルで着実な自律人材育成を
ジョブ型が求める本質的な人材像の理解浸透のために何が必要か。若手社員をはじめ、キャリア自律をめざすビジネスパーソンに有益なガイドマップを示せないものか。このような問題意識から、PFCではセルフ・リーダーシップ5段階モデルをご紹介しています。
セルフ・リーダーシップ5段階モデルでは、ジョブ型が求める自律人材を、5段階で育成できるよう体系化しています。
Stage 1 (第1段階): 自分の特性・強みを正当に理解している
Stage 2 (第2段階): 自分への期待役割と目標にコミットしている
Stage 3 (第3段階): 他者によい影響を与えられる
Stage 4 (第4段階): 自分のキャリアを自らドライブできる(キャリア自律)
Stage 5 (第5段階): パーパス・リーダーシップを発揮している
各ステージのコンピテンシーとPFCの研修プログラムの一覧が以下の表です。
右端の列に記載された各研修プログラムは、セルフ・リーダーシップの5段階モデルに紐づいており、次の点を重視して設計されています。
- 持ち味や特性、潜在能力の自己理解と内省
- 外部環境や期待役割の考察と理解
- 上記の言語化および周囲との効果的なコミュニケーション
- 継続的な自己変革のマインドセット
リスキリングの基盤としてのセルフ・リーダーシップ
当然ながらセルフ・リーダーシップ開発のニーズは若手社員に限ったものではなく、すべてのビジネスパーソンにとって重要性が増しています。とりわけ、昨今注目されるリスキリングに取り組む場合、新たなテクニカル・スキルや専門領域を、外部環境や会社の押し付けでなく、いかに自分事化して身につけられるかが鍵となります。
サントリーHDの新浪社長はリスキリングの本質を次のように述べています。
「時代の変化に合わせて、自分自身のスキルを組み替えていく。市場とプロダクトに置き換えて考えれば当たり前のことだ。しかし終身雇用を前提とした日本の企業にあっては、その危機感が生じにくかった。不確実性の高い時代、その硬直性は弱みになる。この風土を変え、会社という組織を、一人ひとりが時代の変化を肌で感じ、新たな学びを得ながら適応していく多様な社員たちのしなやかな連なりにしなければならない。」
出所 2023年4月23日 日本経済新聞
ここで言及されているのはまさにリスキリングに際するキャリア自律の重要性です。世代を問わず、継続的な自己変革に備えた基盤づくりとしてセルフ・リーダーシップ開発を位置付け「新たな学びを得ながら適応していく多様な社員たちのしなやかな連なり」を作っていこうではありませんか。
PFCでは、セルフ・リーダーシップ開発のための研修プログラムと事例をご紹介するウェビナーを開催します。
PFCが新たに開発したセルフ・ディスカバリー研修、ブランチャード事業部が展開しご好評いただいているセルフ・リーダーシップ研修(C&M方式)をご紹介しますので、ぜひご参加ください。詳細・お申し込みはこちら
*セルフ・リーダーシップ開発を支援する管理職のスキル(1on1コンピテンシー)はこちらをご参照ください。
【この記事を書いた人】
山田奈緒子
PFC取締役
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