コラム

2023.06.16(金) コラム

グローバルに通用する人材を育成するための世界基準「PFCアセスメント・センター」

文化やマーケットが違う中でいかにパフォーマンスを発揮するか

 ビジネスが国境を越え、グローバル化する中、人材のグローバル化やグローバル人材の活用がますます大きな課題になっています。グローバル人材には、これまで日本国内で重視していたこととは異なるスキルやコンピテンシーが求められます。
 多くの日本企業では、海外赴任のための人材の棚卸、育成、あるいはグローバルの観点で通用するための人材能力開発に関して十分ではない企業が多く、こうした人材の育成、開発は、多くの企業で大きな課題となっていると言えるでしょう。安田太郎氏(ピープルフォーカス・コンサルティング シニア・コンサルタント)は、こうした現状を次のように語ります。

 「海外に人を派遣するということは、海外で現地のスタッフを使って、文化やマーケットが違う中で本当に仕事ができるのかということであり、その違いはかなり大きいものです。日本でマネジメントをすること、リーダーシップを発揮することと、日本以外の国でそれをすることは、一見同じように見えても、コミュニケーションの取り方ひとつとっても全く異なります。それを柔軟に本人が察知して、コミュニケーションスタイルを変えていくなどしていかないと、やはりうまくいきません。当然国ごとに、求められるスキルは異なります」

 こうした、ある特定のスキルやコンピテンシーの評価、育成を行っていく手法のひとつに「アセスメント・センター」があります。
 アセスメント・センターとは、専門の評価者(アセッサー)を使って、人材の評価・分析を集中的に行う手法です。企業が社内で実施する場合と、社外の専門のアセスメント・センターに対象者を送り込む場合がありますが、主に、リーダー層の評価・分析・育成計画の立案のために用いられます。
 通常の人事考課では、評価者である上長らの評価基準に主観が入ることで客観性に欠けたり、一貫性に欠けたりすることがありますが、第三者が行うアセスメント・センターであれば、より客観的で公平な審査ができます。また、通常の人事考課は、主に現在の職について評価しますが、アセスメント・センターでは、将来の仕事やポジションに関して考課できることも違いのひとつと言えます。

「選別」ではなく、「開発」を目的とする、PFCの「アセスメント・センター」

 ピープルフォーカス・コンサルティング(以下PFC)は、昨今のグローバル化、海外進出に必要なリーダーシップ、コンピテンシーの開発をサポートするために、「アセスメント・センター」を提供しています。

 PFCのアセスメント・センターによって得られる効果は以下の通りです。

  • 選抜したメンバーに必要なコンピテンシーやマネジメント・スキルの分析
    (多様な文化的背景を把握した上での多言語でのアセスメントによる多面的な分析)
  • リーダーの評価によるポストの選定、リスク・マネジメント
  • リーダーとしてのポジションにふさわしい人物の選定
  • 効果的な人材開発のためのニーズの把握
  • 今後の人材開発戦略のために必要な課題、コンピテンシーの抽出

 PFCのアセッサーには、日本人コンサルタントだけではなく、台湾人、イギリス人、アメリカ人が所属しており、言語も、中国語、英語、日本語と、様々な言語で対応できます。多言語対応によって、その国の持つ文化的背景を考慮した分析が可能です。
 また、アセスメント・センターを適切に提供し、成果を出すには、アセッサーと呼ばれるコンサルタントの力量が非常に重要であり、さまざまなスキルが必要となります。「観察」する力、「評価」のスキル、「レポートに落とし込む」スキル、そして「コーチングスキル」。この4つのスキルが必要となります。
 PFCのアセッサーの一人である安田太郎氏は、「PFCのすべてのコンサルタントは、豊富な経験とトレーニングによって、これらのスキルを十分に身につけています。また、異文化ということを経験的に分かっていて、何が強みで何が課題なのか言語化することができます」と語ります。
 PFCのアセスメント・センターは、「人材の選別」だけではなく、「人材の育成」を第一の目的にしていることも特徴のひとつです。結果的に「人材の選別」につながりますが、第一は人材の育成です。
 前出の安田氏は「私たちがベースにしているのは、この人がどういう強みを持っていて、今どういう課題を持っているのか。どうすればその課題が解決できそうなのか、どうすればもっと強みが海外で生きるのかという、デベロップメントです。アセスメントと呼ぶと、意味合いが調査や評価と聞こえてしまうので、デベロップメント・センターと呼ばれることもあります。すべての人材は資本であり、それをどう生かすのかを考えなければなりません」と語ります。 アセスメント・センターによって、今後の人事教育の戦略を作っていくことが重要なポイントです。アセスメント後、一人ひとりに対してどのような教育をするのか、海外に通用する人材をどう育てていくのかという課題の解決につなげることが重要です。

グローバルカンパニー、アイホン株式会社で「アセスメント・センター」を実施

 住宅から介護施設、病院など幅広い用途でセキュリティ事業やケア事業を推進するアイホン株式会社は、連結で約2,000名の従業員を持つグローバルカンパニーです。
 アイホンでは、海外各国へリーダーを派遣していますが、海外赴任候補者にふさわしいコンピテンシーを把握し、今後の教育につなげたいという課題がありました。実際にどのようなコンピテンシーが必要なのかを明確にするため、アセスメントの実施を検討しました。
 そこで、海外という環境の中で、彼らのリーダーシップは何が強みで何が課題なのか、今後どのような人材開発が必要なのかを見出すことを要件に、グローバルにアセスメントの実施ができるPFCが候補にあがりました。さらに、海外スタッフであるため時間、コストを考慮し、ケーススタディの演習も含めて、部下面談、記者会見演習など、「すべてオンラインで実施する」ことが条件でした。
 安田氏は、PFCのアセスメント・センターの優位性について以下のように述べます。

 「PFCのアセスメント・センターでは、アセスメントの対象者にケースを読んでいただき、そのケースの主人公になったつもりで、自分だったらどのような解決策を導き出すのか考えていただきます。自分が主人公だったら、どういうソリューションを策定し、どういうコミュニケーションを取っていくのか、具体的に考えてもらうわけです。アジアであれば、アジアのコンテキストの中でどう考えるか。ヨーロッパであれば、ヨーロッパのコンテキストの中でどうコミュニケーションをしていくのか、彼らがいる国で本当に通用するのかどうかを多面的な目で見て、そういったことを考慮した上でレポートに落とし込みます」

 PFCは、アイホンが抱える課題に則したコンピテンシーに対して調査・分析できるように、綿密なアセスメント・プランを策定し、具体的な実施計画を提案しました。

アセスメントのフレーム

コンピテンシーと各ツールの関係

アセスメント・レポートに高い評価

 アイホンからは、いくつかの点でアセスメント・レポートに高い評価をいただいたそうです。ひとつは、レポート内容のクオリティでした。
 アセッサーの安田氏は、「アセスメントによって、海外というコンテキストの中で、彼ら一人ひとりがどういう強みを持っていて、どういう改善ポイントがあるのか、例えば、部下の持つ背景を理解し、十分なコミュニケーションをとっている、あるいは、聞くのは上手だけど言いたいことが伝わっていないなど、強みと課題を分析し、人材開発上の課題を見出していきます。レポートはまず本人にも響きましたし、彼らを長年見ている人事の方からも、『このアセスメントだけでよくここまで見えましたね』と言っていただきました。納得感は非常に高かったのではないでしょうか」と語ります。
 またアイホンから、アセスメント結果から想像して、現場でどんなことが起こっているか、仮説でいいのでPFCの見解を聞きたいという要望があったと言います。一人ひとりのアセスメント結果から、現場でどのようなことをしがちなのかを把握しておきたいということでした。
 これに対しても安田氏はこう語ります。「あくまで仮説でしたが、これがほぼその通りだということでした。アセスメントで出ている行動は、やはり現場でも少なからず出てしまっているわけです。アセスメントで書いたことがほとんどこの通りだということでした。『なるほど、やっぱりそうだったのか』という感覚を持っていただいたのだと思います」

今後ますます「アセスメント・センター」が担う役割は大きくなる

 近年、企業評価において非財務情報の重要性が高まっており、日本では2023年度から上場企業は非財務情報を開示することが義務となりました。非財務情報とは、数値や数量で表せる財務以外の情報のことで、特に重視されていることのひとつが「人的資本」の分野です。人的資本とは、人が持つ能力を資本として捉えるという意味ですが、非財務情報可視化研究会が2022年に発表した「人的資本可視化方針」では、研修時間、研修参加率、人材育成の効果などの人材育成に関することが含まれています。この点においても、アセスメントの重要性は高まりそうです。
 今後、日本では人口が減少していきます。多くの企業が、海外との取引、パートナーシップを志向していくのは間違いありません。しかし、人材開発においては、日本独自の考え方が通用しなくなってきていることを考慮する必要があります。グローバルに通用する人材育成は、多くの企業で喫緊の課題と言えそうです。
 そのための人材開発のひとつのツールとして、今後ますます「アセスメント・センター」が担う役割は大きくなっていきそうです。


PFCのアセスメントセンターサービスの詳細はこちらをご覧ください。


アセッサー・プロフィール
安田 太郎 (Yasuda Taro)
ピープルフォーカス・コンサルティング シニア・コンサルタント

日本の大手小売企業で採用・教育・海外人事を担当したのち、上海で人事コンサルティング業務に従事。組織風土の分析および浸透支援、リーダーシップ育成プログラムの推進、スキル研修プログラムの監修・実施にすぐれた手腕を持つ。

日本語、中国語に加え、英語にも堪能な安田は専門分野を人材に特化し、経営戦略に連動した人事戦略の立案、社内コミュニケーションプランの策定、評価の実施、人事機能の再構築、さらに人事制度の構築および導入等を支援している。甲南大学経営学部卒。復旦大学(中華人民共和国)国際文化交流学院修了。

この記事を書いたのは:
猪口真 
株式会社パトス 代表取締役、インサイトナウ株式会社 代表取締役

ビジネス書籍の編集・執筆ほか、ビジネス誌・Webメディアへの寄稿多数。人材教育コンテンツの開発や、執筆も多数。取材・調査による分析レポート、映像制作ほか、マーケティング・コンサルティングまで行う。

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