クライアント事例

株式会社野村総合研究所様

2020年4月、いちはやくオンライン研修の導入を決定
コロナ禍に見舞われて多くの研修担当者が右往左往していた2020年4月、いちはやくオンライン研修の導入を決定した企業があります。ITソリューション/コンサルティングの大手企業として知られる株式会社野村総合研究所(以下NRI)です。今回ご紹介するのは2020年の春に昇格した主任・副主任の皆さんを対象とした、DiSCを使った研修と、リモートワーク下でのコミュニケーションをテーマにした研修の二つです。数百名の対象者の方たちを20名前後のグループに分け、40回近いオンライン研修を実施しました。

人材開発部育成第一グループ グループマネージャーの長濱淳一氏と、実際に研修を企画・導入した人材開発部育成第一グループ上級専門職の土本章夫氏にお話を伺いました。
左から)長濱氏、土本氏

バーチャル・ロールプレイ等で会議運営スキルを学ぶ

リモートワークコミュニケーションは5時間のコンテンツを午前午後にわけてZoomでのバーチャル開催の形で実施しました。
  • バーチャル会議と対面会議との違い
  • バーチャル会議の難しさの要因
等をグループディスカッションも混ぜながら進行。バーチャル会議を成功させるための具体的なスキルとして
  • 心理的安全性を高めるためのSAFETYモデルの活用
  • ロー・コンテキストなコミュニケーションの実践
  • 自身の意見を簡潔に、明確に伝えるためのPREP法の実践
等も学び、バーチャル会議を実際にファシリテーションする演習を、ロールプレイング形式で行っていきました。

バーチャルでのグループワークが課題だった

PFC

バーチャルで研修を実施するにあたって、懸念等はありましたか?

土本氏

今回のリモートワークになる前から一部では遠隔地を結んだオンライン会議を実施していたのでオンライン会議自体にはそれほど抵抗感がありませんでした。また、研修についても講話形式のものは2019年からオンラインで始まっていたのですが、ワークショップ形式での研修は手つかずで、グループワークがどこまでできるかが導入当初の課題でした。

共感のプロセスを理論的に学ぶ

PFC

実際の研修をご覧になってみていかがでしたか?

土本氏

手ごたえとしては、思っていたよりはうまくいったという印象です。講義部分はオンラインで聞けるし、グループワークもZoomのブレイクアウト機能を使って議論してもらいました。議論の内容を講師がまんべんなく見ることが難しい、グループの状況が一見わからないといった問題は、バーチャルならではの問題として感じましたが、総じてうまくいったと思います。

受講者からも:
  • この状況下で必要な研修であった
  • 実践ですぐ使える内容だった
  • バーチャルではお互いに意見を言える環境をつくることが重要だと改めて感じた
  • 主任に限定せず、広く実施してほしい
  • 他本部社員と交流で刺激を受けた
等の意見が聞かれました。

一方で、4月から本格的なリモートワークが始まりましたが、実施時期が9月以降になってしまったこともあって、既にリモートワークに慣れてきた部分もあり物足りなく感じた受講者もいたようです。受講者が業務で実施しているオンライン会議の状況も経験も日々進化しており、状況に合わせた研修コンテンツの改定が必要だったと感じました。

会議スキルにとどまらず働き方そのものを変える

PFC

グループディスカッションを行う中で、現場での課題が見えてくるという副産物もありましたね。

土本氏

皆さん同じような状況だと思いますが、「コミュニケーションを取りづらくなっている」という声が良く聞かれました。特に、新入社員や異動したばかりの人は、これまでであれば「周りの人から見よう見まねで覚えていく」ことで学べたのですが、今はそれができないので「仕事が覚えづらい」という声がよく聞かれます。先輩の側からも、「仕事を教えづらい」「成長が鈍い」「営業活動がしづらい」などの話が出ました。営業活動は、特に新規のお客様だと難しさがあるようです。

PFC

そういった課題に対して、研修担当者として何か対応できることがありそうでしょうか?

長濱氏

この問題は、人材育成にとどまらず、現在の状況下において「働き方そのものを抜本的に変える」ということにつながっています。「会社としてリモートワーク下でどう動くか」という明確な方針が今後出てくれば、我々の取り組みの方向性も明確になっていくのではないでしょうか。

9割の受講者が「研修はオンラインのほうがいい」と回答

PFC

研修の形態は今後どのようになっていくと思われますか?

長濱氏

東京オリンピック対応でテレワークを推進しようという動きはありましたが「リモートワークにはメリットもあるが、実際には難しいよね」という話が多く、広まっていませんでした。それが、一気に強制され、新しい働き方が定着しはじめていますよね。研修についても、受講後アンケートを見ると8割から9割の人がオンラインのほうが便利でいいと言っています。海外の人も参加しやすいし、「会ったが方がいい、集めたほうがいい」というケース以外はオンラインで手軽に行うことがスタンダードになっていくのではないでしょうか。オンラインの研修のやり方も日々進化し、受講者や講師の側も経験値が上がってきているので、オンラインでできることがどんどん増えていると感じます。感染症の問題が収束しても研修の基本がオンラインであることは変わらないでしょう。

1時間×8回の研修があってもいい

長濱氏

そんな中で、われわれ企画側も頭を切り替える必要があると感じています。たとえば実施時間一つとっても、これまでだったら「朝から半日」とか「1日だったら夕方5時まで」のように考えてしまいがちでしたが、もっと細かくわけて「1時間×8回」のようにするなど、フレキシブルに考えなければいけないなと思っています。

また、グループワークの様子が見えにくいといった課題についても、グループごとに1台、グループ数分のPCを用意することで講師や事務局が、どのグループが活性化しているか等を一目で見ることができるようにしました。オンライン研修の弱みは、工夫次第で克服できると感じます。

「あうんの呼吸」をバーチャルでどう可視化するか

PFC

今後、研修や組織のバーチャル化はどのように進んでいくと思われますか?

長濱氏

弊社は10年前からペーパーレス化を行っており、フリーアドレス制も徹底してやってきました。会議室には大型ディスプレイもありました。これまでは「そこまで必要ないんじゃないの?」のような声もありましたが、これらのインフラがあったので、あとは意識だけだと思っています。そもそもシステム開発においては遠隔地に開発委託することも普通に行われていましたので、弊社の場合、特に大きな問題なく行えそうだと思っています。

PFC

去年、今年の新入社員のみなさんについてはどうでしょうか?

長濱氏

新入社員研修は別の担当になるのですが、人間関係づくりが一番の課題だと思います。一緒に昼食に行く機会もないし、オフの時の集まりもない。業務内容についても、人間関係ができていて暗黙知として共有されていれば何とか学んでいけるが、それもない。同期の絆や雑談もできにくいし、新しいアイデアが生まれてくるちょっとしたコミュニケーションもしにくい状態なので、今後特に対策が必要と思う半面、若い世代は意外とすぐに対応するのかもしれないという気もしています。

また、リモートワーク以前から、ふだん仕事をするメンバー間には濃密なコミュニケーションがあり、あうんの呼吸で仕事が進められていました。なので、新しいメンバーの受け入れにあたってのコミュニケーションはリモートワーク以前からの課題だったとも言えます。様々な価値観を持った人がどう効果的にコラボレーションしていくのかという点については、研修でも強化していきたいと考えています。

PFC

最後に、PFCとのコラボレーションへのフィードバックをお願いできますか?

土本氏

2020年の4月にオンライン研修を探していた時には、まだ既存の対面研修のコンテンツをそのままオンラインで行うという研修会社が多い中で、PFCさんは既にオンラインならではのコンテンツを提供していて、一番進んでいるという印象を受けました。またPFCさんはもともと海外で研修を実施していたり、オンラインでのミーティングをやったりしている実績もあり、声をかけました。講師のクオリティも高かったと思います。

長濱氏

去年は、これまでのやり方が大きく変わる時だったので、オンラインに先行して取り組んでいたPFCさんにはオンライン研修について教えていただき、とても助けられました。今回はオンラインならではの良さも生かしながら実施できたと思います。でもまだまだ変えていかないといけないし、技術も変わっていく中で、さらにいろいろなノウハウをご提供いただければと思います。

最後に、今回のプロジェクトをクライアントと二人三脚で進めた、PFCのシニア・コンサルタント桑山政嗣の言葉をご紹介しましょう。

「NRIさんはそもそも裁量労働制で、自立したワークスタイルの社員が多く、インフラひとつとってもリモートワーク化、オンライン化への準備が整っている状態でした。そのような制度やインフラの充実に加え、社員の皆さんには自立性・柔軟性があり、グループワークの中でもリモートワークで皆さんが工夫されている様々なアイデアがやりとりされていました。オンラインであっても『実際には言語以外の表情など見た目から得る情報がコミュニケーションをとるうえでは重要なのだ』といった本質的な意見も聞かれ、皆さんが積極的にオンラインコミュニケーションに取り組まれていることがよくわかりました」

PFCのパートナ―企業であるケン・ブランチャード社の調査によれば、コロナ禍以前、主に対面式研修を活用していた組織は63%でしたが、コロナの影響により9%まで落ち込みました。さらに、コロナ後にどうなるかの予測については、対面式に戻ると考える回答者は3分の1に過ぎず、バーチャル方式とほぼ同じくらいのレベルになっています。(詳しくは こちらをご覧ください。)皆さんの組織はどんな状況でしょうか?
オンライン研修、バーチャル集合研修をお探しの方はお気軽に PFCまでご相談ください。