Web版 組織開発ハンドブック
組織開発
有価証券報告書「2026年問題」と人事部が行うべきこと
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人的資本開示が、人事と組織に突きつける本質的な問い
「有価証券報告書の2026年問題」という言葉を耳にする機会が増えてきました。人事、経営企画、IRに関わる方であれば、「人的資本の開示が厳しくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。ただ、その一方で、何がいつから変わるのか、それが自社の人事や人材開発とどう関係するのか、どこまで準備すればよいのかが、はっきり見えていない企業も少なくありません。
本記事では、有価証券報告書の2026年問題を人事・組織の視点から整理し、この変化が何を意味しているのかを解説します。
そもそも有価証券報告書とは何か
有価証券報告書とは、上場企業などが毎年提出する、最も公式性・信頼性の高い企業情報の開示書類です。売上や利益といった財務情報だけでなく、事業内容、事業上のリスク、ガバナンス体制などを、法律に基づいて網羅的に開示します。提出先は金融庁であり、虚偽記載は認められません。有価証券報告書は、企業が投資家や市場に対して提示する公式な事実の記録といえる存在です。
なぜ「2026年問題」と呼ばれるのか
2026年問題とは、2026年3月期以降の有価証券報告書で、人的資本・サステナビリティ情報の開示が本格化することを指します。重要なのは、2026年に突然評価が始まるわけではないという点です。3月決算企業の場合、2026年3月期の有価証券報告書に記載される対象期間は、2025年4月から2026年3月までの1年間となります。つまり、2025年4月1日以降の人材・組織に関する取り組みが、新しい開示ルールのもとで記載・評価されるということになります。この「評価対象となる期間が、すでに始まっている」点が、2026年問題と呼ばれる所以です。
「評価される」とはどういうことか
ここでいう評価とは、国や行政が企業に点数をつけるという意味ではありません。投資家、機関投資家、アナリスト、ESG評価機関といった市場のプレイヤーが、有価証券報告書に記載された人的資本の内容を読み、比較し、解釈するという意味での評価です。有価証券報告書に記載された内容は、後から修正したり、なかったことにしたりすることはできません。企業の公式な履歴として残り続けます。
人事部に求められる具体的な変化
2026年問題を前に、人事部にはいくつかの変化が求められます。まず、人材戦略を言語化することです。どのような人材を、なぜ、どのように育てるのかを、経営戦略と接続した形で説明できる必要があります。次に、人的資本KPIの整理です。数値を並べること自体が目的ではなく、なぜその指標を見るのかを説明できる状態にすることが重要になります。また、人材開発や組織開発については、施策を実施した事実ではなく、その結果として何がどう変わったのかを語れるようにする必要があります。さらに、人事の取り組みを投資家にも理解される企業価値の文脈で説明するため、経営やIRとの共通言語を持つことも欠かせません。
多くの企業が直面している難しさ
人的資本開示のフォーマット自体は、EDINETを通じて公開されており、どんな項目があるかは誰でも確認できます。しかし実際には、自社の人材施策をどう位置づけるのか、人材開発と組織開発をどう一体で説明するのか、経営戦略とのつながりをどう示すのかといった点で、「人的資本開示として書ける状態になっていない」企業が多いのが実情です。制度や施策は存在していても、それが一貫したストーリーとして整理されていなければ、有価証券報告書に耐える人的資本の記述にはなりません。
人材開発・組織開発の専門家が果たせる役割
人的資本開示への対応というと、「有価証券報告書にどう書くか」という出口の話に意識が向きがちです。しかし実際には、多くの企業がその手前で立ち止まります。人材戦略が経営戦略とどうつながっているのか整理できていない、人材開発と組織開発が個別施策の集合体になっている、取り組みはあるが変化として説明できる形になっていない。この状態では、フォーマットが分かっていても、人的資本開示として有価証券報告書に耐える記述にはなりません。
そこで必要になるのが、人材開発・組織開発を経営の文脈で再設計する視点です。経営戦略と人材戦略を一本のストーリーとして整理し、人材開発と組織開発を切り分けずに連動させ、施策の実施そのものではなく、何がどう変わったのかを言語化できる状態にすることが求められます。こうした整理や設計は、人的資本開示への対応を人事部だけで進めようとすると、限界に直面するケースも少なくありません。そのため近年では、人材開発・組織開発を専門とする外部パートナーとともに、人的資本開示に耐える中身を整える企業も増えています。
ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)も、そうした支援を行ってきた会社のひとつです。開示書類を代わりに作成するのではなく、人材開発や組織開発の取り組みを経営と接続し、説明可能な形に整えていく。人的資本開示が求めているのは、新しい制度や派手な施策ではなく、これまでやってきたことをどう意味づけ、どうつなぎ直すかです。そのプロセスを支える役割こそが、人材開発・組織開発の会社に期待されているものだといえるでしょう。
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