Web版 組織開発ハンドブック

善い企業の条件

多摩大学サステナビリティ経営研究所 出版記念イベント:『これからの「善い企業」の条件』レポート

ビジネスの力で社会を変える仲間づくりが本格的に始まった

『これからの「善い企業」の条件~ビジネスの力で社会を変えるB Corp経営への挑戦(プレジデント社)』 は、長年にわたり「ビジネスの力で社会を変える」ことを探求してきた私たちピープルフォーカス・コンサルティングの、現時点での集大成としての一冊です。創業者である黒田由貴子がハーバード・ビジネス・スクール在籍時に抱いた「ビジネスは社会課題の解決にもっと貢献できるのではないか」という問い。30年以上前のこの問題意識から始まり、その後の起業、組織開発の実践、そしてBCorp認証取得へと至る歩みが、本書の背景にあります 。 

先日、本書の刊行を記念し、多摩大学サステナビリティ経営研究所にて、出版記念イベントが開催されました。イベントには、クライアントの皆様、有識者の皆様、B Corpコミュニティの皆様、また多摩大学大学院の学生の皆様など多くの方がお集まりいただき、これからの善い企業の条件について、熱いトークや交流が繰り広げられました。

「善い企業とは何かを考えるための物差しを提供した」

冒頭、著者代表の黒田由貴子は、本書が、多摩大学大学院でPFCが担当してきた講座「21世紀の善い企業の条件」を土台にしていること、そしてタイトルを「これからの」とした理由などを明かしました。その中で、何よりも参加者の心をつかんだのは、その裏にある「狙い」でした。

「本書はB Corp認証の“取り方”を解説する手引きではありません。Bインパクトアセスメント(BIA)をベンチマークにしながら、企業が顧客・従業員・地域・環境など多様なステークホルダーに対して、どんな責任と可能性を持てるのかを考えるための”思考の物差し”を提供することです」

その上で黒田は、B Corpがすぐには現実解になりにくい大企業・上場企業の現場にも届くよう、まずは多くの企業が掲げ始めた“ステークホルダー経営”から議論を立ち上げたい」と語りました。

「善い企業」の定義は自分たちで探す

「善い企業」を語ろうとすると、どうしても“正解探し”になりがちです。しかし、このイベントは、「善い企業を定義する」ということよりも、それぞれが経験を持ち寄ってその定義を更新していく場となりました。自分たちの事業と、本書で提示されているB Corpの高い基準を照らし合わせながら、社会を変えていく企業になるには何が必要かを考えたり、語り合ったりする時間になったと思います。

スピーカーの皆さんが「善い企業とはこうあるべき」と結論から語るのではなく、まず自分の原体験や葛藤から話し始めたことも印象的でした。ステークホルダー経営やサステナビリティは、得てして概念の話になりがちですが、そうではなく、それぞれの人生や仕事の経験から、概念へとつながっていったのです。

“自分事化”の象徴が、田所陽一氏(プレジデント社書籍編集部)のスピーチでした。B Corpという言葉を知らないまま編集を担当し、学びながら本をつくった。その過程で書店経営者が登壇する別の会に参加し、「新刊が多すぎて置ききれない」「注文もできない」といった書店現場の悲鳴に触れて、“出版社だけでは業界は成り立たない”ことを痛感したと言います。本づくりもまた、書店、印刷会社、デザイナーなど多くのステークホルダーの上に成り立つ営み。善い企業の条件を出版業界に当てはめると、見える景色が変わる――そんなお話がありました。

参加者の中にはPFCのクライアントの皆様もおられました。その中の一人、大手IT会社の代表取締役のA氏も、15年ぐらい前のご自身の体験をお話しくださいました。一般社員として受講したPFCの次世代幹部研修の場で「あなたの会社の強みは何ですか」という問いを、講師であった黒田由貴子が投げかけたときのことです。多くの社員が同じような回答をしたところ、黒田が「それは本当に強みですか?」と問い返したのだそうです。A氏は「当時は悔しさを感じたが、その経験は今でも自分の中に残っている」とお話しくださいました。

「善い企業」なんてうさんくさいと思っていた

多摩大学大学院での講座「21世紀の善い企業の条件」には、様々なバックグラウンドを持つ社会人の皆さんが受講してくださいましたが、その中のひとり、Tさんのコメントをご紹介しましょう。

受講当初は「善い企業」という言葉にうさんくささを感じ、企業は利益を上げる存在だと考えていたというTさん。「稼いでなんぼ」の価値観を持つ企業と、地域のNPOの両方を経験する中でこの講座に出会い、8回の講座でのインプットとアウトプットを経て、少しずつ見方が変わっていったというご自身の体験談をお話しくださいました。今では、実践企業やモデルがあることを知るにつれて、自分も社会的起業をしたいと思うようになったそうです。Tさんはの言葉「”善い企業”の定義は一つではなく、人や立場、環境によって変わるものだと考えています。重要なのは、その定義を一緒に考え、対話し続けることだと思います」も胸に残る一言でした。

「善い企業」を目指す仲間が増えることが善い社会に繋がっていく

今回の出版イベントは、「ビジネスの力で社会をより善い方向に変えたい」という志を持つ方が、これほど多くいることを実感できた場でした。さらに、本書をきっかけにそうした方々をつなぐ機会を持てたことは、出版そのもの以上に価値ある出来事でした。

善い企業やB Corp企業が増えることは重要です。しかしそれ以上に、「善い企業とは何か」と問い続け、「善い企業を目指したい」「自社をより善くしたい」と考える仲間が増えていくことこそ、私たちが取り組むべきことだと考えています。

善い企業を目指す仲間づくりは、一社で完結するものではありません。業界や立場を越えて同じ問いを持つ人がつながることで、企業の当たり前は少しずつ更新されていきます。PFCはこれからもそのつながりを育み、読書会などのイベントも開催していきます。

あなたにとっての「善い企業の条件」は何でしょうか。ぜひ一緒に考えていきましょう。