コラム

2023.07.21(金) コラム

ストレスを減らしてより多くを達成する: 過剰な達成意欲をコントロールしながら 

 うらやましいほどの対外的な成功を収め、一見世界の頂点を極めたように見える人々がいる。そのような人々は、最高の願望を達成するために困難を乗り越えることに長けた、非常に才能のある人たちであることが多い。彼らが潜在能力を最大限に発揮しようとする意欲と、その絶え間ない集中力は、畏敬の念を呼びおこし、賞賛に値するものだ。しかし、その裏側には違った姿があるかもしれない。

 彼らの多くは、素晴らしい成功を収めたにもかかわらず、内心では虚無感やストレスを感じていることを認めている。私たちは、自分が成功し、他人からよく思われることが自身の価値であると勘違いしがちだ(SNSがそれを後押しする)。そのためにも、「実は自分は周りの人が思い描いているほど完璧な人間ではない」ことがバレないよう、他者と親しくなったり、弱さを見せたりすることを割けようとしてしまう。

 結果を出さなければならないという意識が行動の原動力になっている場合、私たちの平穏と幸福は束の間のものであることに気づかされる。 喜びは一瞬で、次にどんな結果を追い求めるべきかというプレッシャーにすぐに変わってしまうのだ。

 実際のところ、私たちの中に何が起こっているのだろう? 人生において真に望む結果を追い求めるのは健全な行為だが、目標に向かっていったり、自分や他者を無理に成長させようとしたりすると、内なる「過剰達成欲」に翻弄されてしまっている自分に気付くかもしれない。「過剰達成意欲」は、「人生とは結果が全て」だと自分に思い込ませようとするが、常に達成や完璧を追求することは、持続可能なワーカホリックな生活に陥り、自分の真意を見失い、他者との深い関わりが損なわれるということこそが真理なのだ。

 私がコーチングしたことのあるエグゼクティブは、そうした思い込みに陥っていた。。「でも、私にはこの意欲が必要なのです。この意欲が、私のキャリアの源泉なんです。」そこで私は「ではその意欲はあなたにどれほどの幸福をもたらしたのですか?」と尋ねた。「人生で最も大切な人たちとの関係において、どれだけの幸福を生み出してきたのですか?」すると、彼女の顔に衝撃の表情が浮かんだ。その表情の背後にあるものは何かと尋ねると、彼女は感情で声を震わせながら、自分が最も大切にしている人たちとの間に根強い葛藤があるのは、その人たちが自分と同じ基準で成功を収めていないことを否定的に判断しているからだと、その瞬間に気づいたのだと説明した。このことは、彼女の個人的、そして仕事上の成長に前向きな変化をもたらす、極めて重要な気づきとなった。

 では、精神的・感情的な健康を維持するために、こうした傾向をどのように管理すればいいのだろうか?

 まず、自分の思考パターンに気づいたら、それを特定し、ラベリングすることが重要だ。「私は努力が足りない」「今期の売上目標を達成する方法を見つけなければならない」と自分に言い聞かせるのではなく、「私は努力が足りないという考えを持っている」「内なる”過剰達成意欲“が、私に指図しようとしている」と言い換えるのだ。このシフトによって、どう考え、どう感じ、どう行動するかについて、意識的かつ意図的な選択をする余裕が生まれる。

 第二に、自分自身を縛る基準を正直に評価する。その基準は、自分にとって本当に重要なことに基づいているのか、それとも世間から押しつけられた基準なのか。自分の幸福感や自分の価値が他人を基準にしている時、あるいは他人の注目や受容、承認に過度に依存している時、私たちは主体性を手放してしまう。このことを認識することは、私たちのフラストレーションの根本原因を明らかにし、主体性の感覚を取り戻すのに役立つ。自分自身の基準を作り、内なる物語を再構築することで、自分を取り戻すことができる。

 そして最後に、私たちの内なる”過剰達成意欲“は、常にさらなる達成に飢えており、自分の価値は成功に結びついているとささやき続けていることを認識しよう。時間が経つにつれて、これがストレスとなり、皮肉にも達成度が低くなることがある。プロスポーツの選手が、勝負を決める重要なショットのプレッシャーに圧倒され、平凡なミスショットをしてしまうのと似ている。(もっと頑張らなければ)というプレッシャーが、パフォーマンスを低下させてしまうのだ。

 成功の糧は、ストレスを誘発するこのようなプレッシャーではない。絶え間ない100%の努力が達成への唯一の道だという信念に立ち向かうことが肝要だ。可能な限り最高のパフォーマンスを発揮したければ、逆説的だが、リラックスして旅の一歩一歩を味わうことを学ぶ必要がある。避けられないミスや失敗が起こったら、自分自身への共感と理解をもって対応することだ。

(余談:このトピックを深く掘り下げるには、殿堂入りした野球選手、オールスター選手、オリンピック選手、CEOが、プレッシャーがかかり、いざというときに最高のパフォーマンスを発揮するために使っているテクニックについて、このHumans At Workポッドキャストのエピソードをお聞きください)

 ゴールに向かう道を、一か八かの勝負ではなく、楽しいゲーム、ワクワクする旅に変えよう。そうすれば、ストレスが減るだけでなく、達成の可能性も高まる。ゴールは目的地に到達することだけでなく、旅を楽しむことでもあることを忘れてはいけない。

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【この記事を書いた人】
マイケル・グレイザー
PFCシニア・コンサルタント
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