コラム

2023.01.01(日) コラム

2023年の組織開発・人材開発のテーマは?

新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、皆さま方には大変お世話になり、ありがとうございました。
本年も、昨年に引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

今年は私たちにとってどんな年になるでしょうか。
この新年号では、2023年に多くの企業が力を入れて取り組むであろうテーマ、PFCが着目しているテーマについてまとめてみました。組織開発・人材開発に取り組む皆様のご参考になれば幸いです。

コロナ禍を経て露呈した課題に対峙しつつ、組織と人材をアップデートする

 ひとつめのテーマは、コロナ禍を経ての進化です。
 パンデミックから早3年。
 この間、多くの企業が、組織のあり方の再考を余儀なくされました。組織で働く人材にも様々な困難が強いられ、変化への対応が求められました。
 しかし、3年を経て、感染症自体はなくならないものの、パンデミックからの脱却は大きく進み、企業の取り組みも大きく変化していくことと思われます、

 私事になりますが、昨年11月、サッカーワールドカップを観戦するために、3年ぶりの海外(カタール)に赴きました。そこではコロナ禍は完全に過去のものになっていました。世界中から100万人を超えるサポーターが一都市に集まっていましたが、街中では誰もマスクなどしておらず、スタジアムでは数万人が大歓声を送っていました。帰国したときには、タイムマシンで過去に迷い込んだかという錯覚すら覚えたものです。

 日本でもコロナ禍からの脱却の動きが本格化しつつありますそもそもコロナ禍によるリモートワークから生じたように見える各種の問題、働く人の孤立、DXの遅れは、元々の組織に潜在的に存在していたものがほとんどでした。コロナ禍はそれらの問題を露呈させたに過ぎないとも言えます。2023年、過去の問題に対処しつつ、3年前に戻るのではなく、新たに進化させることを志向する企業が増えるでしょう。

「セルフリーダーシップ」の促進

 組織と人材をwith/afterコロナの時代にアップデートするためには、3つの取組みが欠かせないと私達は考えています。
 ひとつめはキャリアの自律とジョブ型組織の実現を通じたセルフリーダーシップの促進です。

「そばにいる上司に尋ねる」
「先輩の仕事の進め方を目で見て学ぶ」
 今まで当たり前だったこんなことが叶わない、リモートワークの時代が続いています。
 そんな中でも成果を発揮したのが「セルフリーダーシップ」を発揮した人材でした。新入社員・若手社員を問わず、セルフリーダーシップが発揮できる人材とそうでない人材との差は、以前にも増して大きくなり、「セルフリーダーシップスキル」教育のニーズ・重要性も高まりました。

 セルフリーダーシップが求められる背景には、ジョブ型への移行とキャリア自律の促進という、多くの企業が取り組んでいる制度と組織風土の変革があります。
 ジョブ型組織の人材マネジメントを実現する組織要件は端的に言うと、
1.役割(職務記述書)に見合った職責と報酬を提供すること(年功序列からの脱却)、
2.多様な社員一人一人にキャリア自律の環境を提供すること(組織任せの異動や年次研修からの脱却)
です。

 ジョブ型組織への変革では、社員一人一人のセルフリーダーシップを高めること、キャリア自律や自己成長支援を十分に行うことが欠かせません。そして、管理側のスキル強化として、パフォーマンス・マネジメント運用力や1on1スキルも同時に強化する必要があります。

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セルフリーダーシップ研修
キャリア・プランニング研修
「管理職の1on1スキルは5段階!1on1導入と浸透のノウハウをお伝えします」

ハイパフォーマンス・チームづくり

 組織と人材をwith/afterコロナの時代にアップデートするための取り組みのふたつめはハイパフォーマンス・チームづくりです。

 コロナ禍では、社員のコミュニティ形成が喫緊の課題だという企業も少なくありませんでした。新入社員研修ひとつとっても、同期のつながりが「自然に」生まれることはなく、コミュニティが形成されるよう様々なネットワークづくりの仕掛けが求められました。コロナ禍が続く中で、チーム運営に苦慮する組織やマネジャーからの相談も増えました。現場のチーム・プロジェクトチーム・エグゼクティブ(経営陣)チーム等、コロナ禍を契機に、多くの組織がチームビルディングに取り組みました。
 with/afterコロナ時代には、チームをチームとして機能させることに腐心した経験を元に、続いてさらに「ハイパフォーマンス・チーム」づくりを目指す組織が増えると考えています。
 ハイパフォーマンス・チームたりうる要件は、以下です。

  1. ベクトル
    (単なる目標や方針だけではなく、ビジョンやバリューズなどでチームの一体感を醸成)
  2. プロセス
    (効率的な運営のための仕事の進め方の整備だけでなく、創造的な刺激をもたらす異分子との交流を促進)、
  3. ヒューマン
    (1人1人のパフォーマンスや成長に目を向けた取組みのみならず、メンバー間の関係性の質を向上させる取組みの実施)

 2023年、皆さんは、様々なチームのハイパフォーマンス・チームづくりを支援できそうでしょうか?コロナ禍中のチームビルディングのノウハウを生かしてぜひ3年前をはるかに超えた強いチーム作りに取り組む組織が増えることを期待しています。

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「戦略的チームビルディングのすすめ~放置してもチームは作れない」

エンゲージメントを高めるための取り組み

 組織と人材をwith/afterコロナの時代にアップデートするためのキーワードの3つめはエンゲージメントすなわち組織と自分との「つながり」の確信です。

 リモートワーク下では、「組織の“機能体”は機能していても、“共同体”はなかなか機能しない」ということを、これまでことあるごとに述べてきました。組織への帰属意識の醸成は、どの企業でも最重要テーマのひとつだろうと思います。ただ、コロナ禍で「物理的にその場にいて自然に組織や風土を感じる」という機会が激減する中、「組織への帰属意識」という言い方は適切ではないのではないかと考えるようになりました。「組織への帰属意識」というより、一人ひとりが自立して働く中で、自分が働いている組織・事業・業務と自分との「つながり」を強く確信できる感=エンゲージメントがより重要になりました。

 エンゲージメントの強化に欠かせないもの、それは即ち、パーパス(企業の存在意義)・ミッション(企業理念)・ビジョン(将来像)バリューズ(価値観)の浸透ということに他なりません。「浸透」ですから、押し付けるのではなく、「誘(いざな)う」ことが求められます。自分がつながっていると自身で確信できるようにすることがカギとなります。

 奇しくも2023年は人的資本情報開示への備えとして、エンゲージメント・サーベイの実施が必須となりました。人と組織の課題の見える化が進みます。管理職がサーベイ結果を活用して、職場の組織開発に自ら取り組む時代になりました。

 エンゲージメント・サーベイは適切に実施できていますか?実施後の分析、組織課題の読み解き方は明快でしょうか?サーベイ結果を受けての各人のモチベーション向上、関係強化や組織活性化に向けた打ち手は万全でしょうか?

2023年はよりサルテイナブル・ファーストに

 さて、ここまで、2023年の組織開発・人材開発のテーマとして「コロナ禍を経ての進化」、すなわち、コロナ禍で露呈した課題に対峙しつつ、組織と人材をアップデートする3つの取り組みについてご紹介しました。ここからは、ふたつめのテーマとして「サルテイナブル経営」を取り上げます。これからの時代に求められるサステイナブル経営、そしてサステイナブル経営を実現できる次世代リーダーの育成はどうあるべきなのでしょうか。

 サステイナブル経営とは、「環境・社会・経済、その3つの観点すべてにおいて持続可能な状態を実現する経営」のことです。
 コロナ禍がもたらした、数少ない、しかし非常に大きなベネフィットのひとつとして、多くの企業やビジネスパーソンが、グローバルな社会課題への関わりを痛感したことがあります。未知のウイルスはもちろん、気候変動・貧困・格差など問題は山積しており、社会のメインプレーヤーとして企業がリードして主体的に取り組まなければ、これらを解決に導けないことにも気づかされました。それどころか、社会課題に取り組まなければ自社が大きな損失を被り、存続すら危ぶまれる可能性さえ浮かび上がってきました。

 「サステイナブル・ファースト」とは、すなわち、地球環境や社会のサステイナビリティをあらゆる要素の一番に考える、一企業の短期的な成長や儲けなどより重要と普通に考える、ひいてはそれが実は自らの経済合理性に資するので自らをサステイナブルな存在にする、という考え方です。私達は、そんな価値観がビジネス社会を席巻する日も近いとかねてより考えていましたが、いよいよ2023年は多くの組織の取組みが本格化すると考えます。

パーパス:社会にとっての「存在意義」

 サステイナブルファーストたるために必要な考え方のひとつが「パーパス」です。
 SDGsの達成に向けた行動など、企業の社会的役割がますます高まる中、パーパス、即ち、社会にとっての存在意義が問われています。
 パーパスという言葉は、昨年バズワードになり、多くの企業がパーパスを定義しました。しかし、ミッション(使命)やビジョン(将来像)とどう違うのかと戸惑う声や、ビジョンやミッションに加えてまた新たなステートメントができて辟易するという声も、少なからず聞かれました。

 パーパスの本質は、社会にとっての自社の存在意義です。ミッション(使命)やビジョン(将来像)で、社会にとっての企業の存在意義が表現できているのであれば、新たにパーパスを作る必要はありません。しかし、多くの企業のこれまでのミッション(使命)やビジョン(将来像)は、社会にとっての存在意義までは描かれていなかったのです。そのため、組織に属すメンバーも自分ごと化しにくく、浸透も遅れがちでした。
 多くの企業がパーパスを持つ2023年、各人のパーパスと結びつけて浸透を図る取組みがますます増えていくことでしょう。同時に「パーパス経営を実現する次世代リーダー」の育成も加速化していくことでしょう。御社では企業のパーパスを描き、各人のパーパスと結びつけて浸透を図る取組みは進んでいますか?パーパス経営を実現する次世代リーダーは育成できているでしょうか?

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パーパス・リーダーシップ研修

CSV:「社会価値と経済価値」の両輪を実現する次世代リーダー育成

 CSVリーダーの育成も急がれます。
 CSVは、Creating Shared Valueの頭文字であり、新たな価値を創造し、様々なステークホルダーとその価値を共有することを意味しています。
 かつてのCSRの考え方では、社会貢献と事業とは切り離して考えられがちでした。社会貢献は必要とされながらも、自社で新たな価値や事業を生み出すことまでは求められていなかったのです。
 しかし、CSVの考え方では、社会課題解決型の事業を行うことで、社会にとっての価値を生み出し、経済価値や利益も生まれます。CSVリーダーは、そのような事業を開発・構築・運営できる次世代リーダーなのです。

 CSVリーダーには、社会課題をリアルに自身で触れ自分ごと化する経験や、解決策を事業として成り立つように考え抜く力が求められます。また、自社のパーパスを自身のパーパスにしっかりと結び付け、自社事業をゆるぎない志で推進する力を持っています。

 次世代リーダーの育成には、CSVの考え方を反映しているでしょうか?CSVリーダーを育成できるよう、体験の場や鍛え方は十分に提供できているでしょうか?

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DE&I:ダイバーシティからインクルージョン、そして「エクイティ」へ

 ダイバーシティ(多様性)が企業の競争力に欠かせないと言われるようになって久しいですが、2023年は「インクルージョン(包摂性)」そして「エクイティ(公正さ)」への注目がますます高まるでしょう。
 インクルージョンとは、所属している人を組織が包み込むように受け入れ、各人の能力やスキル、考え方を認め、活かされている状態です。多様な人材を確保しただけでは十分ではなく、一人ひとりが組織への帰属意識をしっかりと持ち、自分が認められているという感覚を持つことが必要です。これができなければ、潜在能力を発揮することはおろか、持てる力を出すことすら難しくなります。インクルージョンの欠如によりダイバーシティの威力を発揮できないという状況に陥るのです。

 さらにインクルージョンに加えてここ1、2 年急増しているのがエクイティ(公正さ)の考え方です。この概念は、エクオリティ(平等さ)と対比するとわかりやすいでしょう。たとえば「自分は女性を差別していない。性別に関係なく平等に扱っている」と言う管理職の方をよく見受けますが、「平等ではだめなのだ」というのがエクイティ(公正さ)の考え方です。

 御社は、女性や外国人等の少数派が活躍できるインクルーシブな職場になっているでしょうか?そのための管理職がとるべき行動は明確でしょうか?エクイティ(公平性)のための施策があり、管理職は適切な行動がとれているでしょうか?

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インクルーシブ・リーダーシップ研修


 本年も皆様と、組織開発・人材開発に関する様々な取り組みをご一緒させていただくことを、心より楽しみにしております。

 皆様にとって、素晴らしい2023年になりますように。引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

(株)ピープルフォーカス・コンサルティング 代表取締役 松村卓朗