コラム

2023.08.21(月) コラム

ATD23 PFCラーニング・チーム オンライン報告会レポート

組織開発・人材開発のプロフェッショナル向けの世界最大規模の国際イベントATD(The Association for Talent Development)。2023年はバーチャルで約1,000名 現地で約9,000名が世界78か国から参加しました。ちなみに、従業員数1,000名以上の大企業からの参加者が全体の57%だったそうです。

PFCでは毎年ラーニング・チームを組んでATD-ICEに参加し、現在の人材開発分野の潮流をつかむ活動を行っています。今年は4年ぶりにPFCラーニング・チームとして現地参加をしてきました。PFCからはプロフェッショナル・アソシエイトの田岡純一とブランチャード事業部の加藤あやかが参加。ここでは、公開報告会でご紹介した、ATD23の様子をお伝えします。

今年の傾向

今年の内容に目を通して最も感じた点は、パンデミック後学習環境に対する具体的な創意工夫、特にテクノロジーを活用した学習環境整備、グループ学習機能、リアルタイムチャットといったコミュニケーションの取り方に大きな変化が見られたことです。またEQ(心の知能指数)に関するセッションも例年に比べ急増しています。その点も含め今年のトレンドとテーマを考察すると、下記の内容が挙げられます。

  1. オンライン、オフラインを考慮した学習環境のデザイン
  2. EQを活用したトレーニングプログラム
  3. パンデミック後またVUCAの時代のリーダーシップ開発
  4. ヴァーチャル環境下でのファシリテーション、研修制度設計
  5. DEI(Diversity、Equity、Inclusion)への取り組み
  6. DX及びAIへの対応
  7. 変化に対応する組織風土改革
  8. レジリエンスに関する項目
  9. 脳科学を活用した学習デザイン
  10. コーチング文化、特にフィードバック、フィードフォワード

基調講演

まずは、毎年注目を集める3つの基調講演の概要をご紹介します。

基調講演1:Rethink
人々の再考を促すタレント開発が担う役割

スピーカー:Adam Grant 
ペンシルべニア大学ウォートンスクール 組織心理学教授

思い込みや、古い慣例にとらわれることなく、もう一度前提や目的を見直す必要があること。そして多くの優秀なリーダー達は考えることは得意でも、考え直すことは苦手な人が多い。そんな人たちに対して考え直すことができるようになるための3つのポイントを紹介。

再考するための3つのポイント

1.チャレンジングなネットワークを築く:自分にとって耳の痛いフィードバックをくれるタイプ(Disagreeable Giver)とのネットワークを築くこと。

2.心理的安全性を築く:自分自身が批評され、それを歓迎しながら自己変革につなげている姿を見せること(教授たちが学生からのFBを読み上げ、参考にしているビデオ)

3.マインドセット:自分信念を守ろうとする牧師の「牧師のマインドセット」、相手の間違いを正そうとする「検察官のマインドセット」、自分が正しく、他者が間違っていることを広げようとする「政治家のマインドセット」を手放し、もしかしたら自分が間違っているかもしれないと考え、常に仮説を検証しようとする「科学者のマインドセットを」持つよう心掛けること。

基調講演2:What is Your Need for Coming Together?
集まる必要性は何なのか

スピーカー:Priya Parker
ファシリテーター、戦略アドバイザー

人が集うことで生まれる力や、集まることの本来の意味、目的を再考することの大切さ、特にパンデミックを経験したことで、集まり方にも多様性が生れ、その際のルール設定の重要性についてなど。

  • 集まることの意味について、どれだけ考えているだろうか?集まることが目的化していないだろうか?
  • パンデミックの中でのオンライン結婚式に「集まる」ことの意味は何だろうか。結婚式として集まる場合、そもそも結婚する意味は何か?なぜ結婚するのか?結婚式にどのような意味を持たせるのか?目的を考えることから始まるはずである。
  • 人々の集まりがどのようなものであるべきか、具体的なアイデアを持っていない時に、記憶に残る変革的な集まりが産み出される
  • 人が集まる場、人が集まる体験をより良いものにしていくためには、先入観や思い込み、過去の経験から解放される必要がある。

基調講演3
Embracing Risk, Mentorship, and Change.
リスク、メンターシップ、変化を受け容れる

スピーカー:Leslie Odom Jr.
トニー賞、グラミー賞を受賞したアーティスト

ミュージカル“ハミルトン”のアーロン・バー役で一気にブレイクし世界中にその名を知られるようになったレスリー・オドム・ジュニア。その彼が、そこに至る経験からリスクをとり決断することの大切さ、その際に求められる自分の信念、リスクを取り本気で変わろうとすることの素晴らしさを、自らの経験を通して語り、夢に向かい挑戦する人々を勇気づける内容。

  • 人生において経験してきた挫折だが、そのたびに友人や周囲のひとからフィードバックをもらい、困難を乗り越え目標に向かって突き進むために必要な勇気や学びを得た。
    また「周囲のメンターからもらった時間と誠実さが、私の人生におけるすべての違いを生んだ」
  • 自己変革には、積極的にフィードバックを相手に求め、自己変革につなげていく姿勢が大事。


基調講演のほかにも400を超えるセッションがありました。以下は、公開報告会で紹介されたトピックの一例です。ここではトピックの詳細は紹介しきれませんが、どのようなトピックが取り上げられているかの参考にしていただければと思います。

AIが私たちの学習と働き方をどのように変えているかケビン・アルスターエリー・ヘンリクセン氏)

AI 対応の未来に向けて、組織をどのように変えていくのか?新しい調査によると、米国の労働力の最大80%の作業タスクが、生成型AIの導入によって影響を受けることが示されています。コミュニケーション・スキルの学習と職場での学習の開発の両方において、このシフトでAIビデオが果たす役割について学ぶことができました。

デジタル導入プラットフォームを使用した従業員のパフォーマンスの向上(ギリッシュ・ヴァゲ氏)

デジタル・トランスフォーメーションのペースに遅れずについていくことは、トレーニングの重要な課題。拡大するスキルギャップに対処するには、企業はスキルアップ革命に着手する必要があります。従業員のスキルアップを成功させるためのデータ駆動型の学習エクスペリエンスを作成する方法等を学ぶことができました。

バーチャル・ファシリテーション2.0:能力をレベルアップ(モエ・ポワリエ氏)

バーチャル・ファシリテーションのためのコンピテンシー・フレームワークを体験しました。このセッション中に特定された上位 5 つの開発ニーズに優先順位を付け、バーチャル・ファシリテーターの実際の録画を見て、レベルアップに役立つコーチングプランを作成。

革新!イノベーションスキルを推進し、トレーニングを活性化するための実証済みの方法(ジェイソン・ダーキー&イアン・タウンリー氏)

多くの人が、イノベーションがL&Dと学習者にとって重要であることを認識していますが、残念ながらイノベーションスキルを開発する方法は明確にはなっていません。このセッションでは、実際のデータと10,000人近くの学習者との経験を組み合わせて、創造的に考え、学習者のイノベーションスキルを開発するための実証済みのテクニックが紹介されました。

ケア:心理的安全性の4つの要点(ポール・スタビレ氏)

優れたリーダーは、帰属意識を育み、心理的に安全な職場を作ります。またイノベーション、つながり、コラボレーションを効果的に行う権限を与えられたチームを開発しています。「CARE」は、リーダーが人を第一に考える盲点を引き起こす自然な偏見を取り除く方法を体験的に学べるセッションでした。

サーバント・リーダーシップの遺産(ケン・ブランチャード&スコット・ブランチャード氏)

ケン・ブランチャード博士(ケン・ブランチャードカンパニー チーフスピリチュアルオフィサー)と息子であり同社社長のスコット・ブランチャード氏による大人気のコラボセッション。効果的なリーダーシップに必要な6つの基礎についてのお話でした。彼らが何年にもわたって学んだことと、これらのレッスンをどのようにうまく実践したかについて聞くことができました。

ウェルビーイングの文化を取り入れて、組織の成果を向上させる(アンディー・キャンベル氏)

「従業員のウェルビーイングに対する画一的なアプローチは、今日の労働力に到達するには劇的に不十分」というウェルスパークヘルス社長であるアンディーが、ウェルビーイングの文化を受け入れ、従業員固有のニーズに合わせたソリューションを効果的に提供した方法について共有してくれました。より良い健康転帰、組織文化の改善、およびより幸せな従業員を達成する方法についても紹介されました。

ATDのセッションは、様々なインサイトや気づきを私たちに与えてくれました。ATDで学んだことを自分自身はもちろん、これからのクライアントの皆様へのご提案に生かせるように、より深く学んでいきたいと思います。

加藤あやか
Sales & Client Solutions Leader
ピープルフォーカス・コンサルティングBlanchard事業部


来年のATD24はニューオーリンズで5月19日から22日に開催されます。PFCラーニング・チームのメンバーとして一緒に参加されたい方は、お気軽にpfc@peoplefocus.co.jpまでお問い合わせ下さい。