コラム

2024.09.30(月) コラム

エンゲージメント調査がうまく活用できている企業6つの特徴~戦略人事のエンゲージメント調査活用法 

 組織状況の定点観測ツールとして導入が進んでいるエンゲージメント調査。「芳しくない結果が出た事業部の組織開発をしたい」という戦略人事ご担当者(HRBP)様からのご相談も増えました。エンゲージメント調査は、組織メンバーの意欲や成長感のみならず、メンバー同士の関係性、管理職のマネジメント力、経営陣への信頼など、複数の側面から組織の状況を照らし出します。中でもエンゲージメント状況に大きな影響を与える経営陣のリーダーシップのあり方は、社員の声を代弁する調査結果があってこそ、人事が切り込める領域といえるかもしれません。

 御社はエンゲージメント調査を戦略的に活用できているでしょうか。チェックポイントをまとめました。

1.非財務の経営指標として役員会で議題に上がる
2.事業部トップがオーナーシップを発揮している
3.人事が事業部トップや管理職から改善の相談を受けている
4.調査結果は速やかに社員に開示されている
5.管理職は改善に取り組むための十分なマネジメント・スキルを有している
6.社員が自発的に改善活動に参画している

順番に見ていきましょう。

1. 非財務の経営指標として役員会で議題に上がる

 企業の持続可能な成長を支える重要な要素として、人的資本経営が一気に広まりました。人的資本経営が実装されている企業では、社員のエンゲージメント状況が重要な経営マターとなっています。財務情報と同様、重要な非財務情報として経営のダッシュボードに組み込まれ、役員会のアジェンダになっているはずです。自社の経営会議では、利益や売上だけでなく、社員のエンゲージメント状況や企業風土の状況といった人的資本に関するトピックが議題になっているでしょうか。

2. 事業部トップがオーナーシップを発揮している

 人的資本経営が実装されると、執行責任は人事から事業部の手に渡ります。人的資本のKPIや目標にコミットしている事業部トップは、改善に向けたオーナーシップを発揮することでしょう。自社の事業部トップは、たとえばDE&I・女性管理職のKPIにコミットしているでしょうか?そうであれば、本社主催の女性リーダー研修に所属女性社員を送り出す際、スポンサーシップを発揮しているでしょうか?

3. 人事が事業部トップや管理職から改善の相談を受けている

 人的資本が業績と同様の重要性を持つようになると(業績は人財に支えられているので当然のことではありますが)、「HRBP」と呼ばれる事業部の戦略人事機能の如何が問われるようになります。HRBPのBPとは「ビジネス・パートナー」です。つまり、事業部人事は戦略のパートナーとして、事業部トップや管理職から信頼されているでしょうか?あるいは、エンゲージメント調査を導入したならば、その結果をどう活用すべきか、改善に向けてどんな取組をすべきか、現場から相談されているでしょうか?

4. 調査結果は速やかに社員に開示されている

 エンゲージメント調査は、たとえて言えば、組織の健康診断です。健康診断の結果を回答者たち本人が知ることなく、どこかに秘匿されているとしたら、それはとても不健全です。自らの状況を自らが知ることこそ、体質改善の第一歩です。
 また、エンゲージメント調査結果は鮮度が肝心です。せっかくの調査結果も鮮度が落ちると、「回答した時から、体制やビジネスの状況が変わった」「今の状況を表すものではない」と真剣に向き合ってもらえなくなります。
 自社では、調査結果は速やかに全社員に周知され、開示されているでしょうか?

5. 管理職は改善に取り組むための十分なマネジメント・スキルを有している

 健康診断の結果をうけて、生活習慣の改善に取り組んだ経験のある方ならば、体質改善の開始は早ければ早いほどよく、また根気よく継続することが重要であることをご存知でしょう。これは、エンゲージメント調査でも同様です。
 組織のエンゲージメント状況の要は、なんといっても部下育成やチーム統括の役割を担う職場の管理職です。速やかに、継続的に改善活動を遂行できるかどうかは、当然ながら、管理職にかかっています。とりわけ、管理職の「マネジメント・スキル」にかかっています。

 マネジメント・トレーニングを十分に提供してこなかった組織では、管理職は概して自身のマネジメント行動に自信を持つことができません。エンゲージメント調査結果を受け止めない、目を逸らす、調査項目の意義を熟考しない、結果を都合よく読み違える、といった行動が起こります。
 自社は、管理職が自信を持つのに十分なトレーニング機会を提供しているでしょうか。

6. 社員が自発的に改善活動に参画している

エンゲージメント調査を健康診断や人間の身体にたとえました。経営陣のコミットメントや要である管理職が重要だと述べました。しかし、頭脳や運動機能だけが発達していても、当然ながら健康な毎日は過ごせません。心臓をはじめとする臓器、血流や血圧、腸の活動や腸内細菌、自律神経のネットワーク、そして心の健康など、私たちの身体は各所が連携し、コミュニケーションし、補い合って活動しています。

 組織も同様です。各部署・各人が連携し、コミュニケーションし、補い合って事業活動を行っています。自律神経や自己再生能力さながらに、社員の自発的な改善行動がある組織は強くて健全です。
 エンゲージメント調査結果を活用して、職場をよりよくしたいと思う社員が、自社にはどれぐらいいるでしょうか?そのような社員が発言したり、改善に参画する機会や風土は十分にあるでしょうか?

 ちなみに、このように組織を身体のように有機的なシステムとして捉えることが、組織開発のアプローチです。PFCでは、エンゲージメント調査の効果的な活用や、改善活動や施策のご提案を行っています。

エンゲージメントにご興味のある方は、併せて「EMPOWERMENT-社員の力で最高のチームをつくる」関連記事もお読みください。

<関連記事>
『1分間エンパワーメント』出版!「エンパワーメント・スターターキット」の無料配布も開始しました | Blanchard Japan
あなたの職場はどれほどエンパワーメントされている?「はい」の数で診断! | Blanchard Japan
【事例紹介】自立人材と組織の一体感を実現させた誠晃貿易が取り組んだ「エンパワーメント」とは | Blanchard Japan


山田 奈緒子
(株)ピープルフォーカス・コンサルティング取締役

グローバルな人事戦略構築の課題に直面する日本企業へのソリューション提案における第一人者。
プロフィールはこちら